静岡茶屋巡り~松島園~

OCHA TIMES編集長
静岡茶屋巡り~松島園~

備長炭・炭火仕上げの特上川根煎茶を手掛ける茶農家「松島園」

豊好園の園主、片平次郎さんから「ここは良い」と紹介していただいたのが川根茶の松島園。凄い表彰の数々、新聞などのメディアにも多く取り上げられています。
園主・川崎好和さんの手掛けた備長炭・炭火仕上げの川根茶を頂きながらお話させていただきました。


川崎さん「ようこそ。結構直接来られる方が居るんですよ。昨日も遠方からわざわざいらっしゃったお客様がいました。もうこの時期はほとんどお茶が売り切れてしまって、あまり良いお茶は残っていないと思うんですよ。安い値段のお茶であれば、少しは残っていると思いますが。お茶をどうぞ。」

—「いただきます。うん、一杯目の茶はやはり旨味が違いますね。」

川崎さん「二煎めもどうぞ召し上がってみてください。」

—「このお茶は二煎目でも旨味が凄いですね!」

川崎さん「そう、通常であれば一煎目であの旨味は終わるものだけれど、ウチは二煎目でもこの味が出る。だから煎茶の店から重宝がられるんだ。二煎目でもこの味が出る茶はなかなかないから、もっとお茶を置いて欲しいと言われるんだ。ウチの良いお茶なんかはすぐに売り切れてしまうんだよ。」

川崎さん「せっかくいらっしゃったわけですし、変わったお茶を飲んでみますか。松島園のお茶を高級ボトルティーとして瓶に詰めたものです。一本2万ほどします。」

—「凄い!これはまるでお酒ともカクテルとも言えない。純粋で爽やかな旨味です!」

現代のお茶の在り方について警鐘を鳴らす川崎さん

川崎さん「お茶の定義というものが無いんです。ペットボトルのお茶は清涼飲料水。ペットボトルのお茶も良いとは思うが、あれをお茶と定義するというのは違うと思う。お茶はそもそも高級な嗜好品なんです。あんなに安価で買えるものではない。」

—「確かに。ペットボトルのお茶はビタミンも入っています。」

川崎さん「あれが入ってないと変色してしまうからね。そして抹茶の定義もない。酷い所になると茶葉を砕いて粉末状にしたものを抹茶と呼ぶようなところもある。お茶はお茶としてしっかり定義付けをして行かなければならないと思う。」

—「お茶とは何かをしっかり決めるべきなんですね。」

川崎さん「そう思う。「ご馳走」という言葉がある。私はお茶も嗜好品だしご馳走だと思っている。 ただ「ご馳走」というのは「客の為に、方々を亭主が走り回って用意する」というのが言葉の成り立ち だったと思うんだ。だから出前をとったりペットボトルのお茶をだしたりというのは馳走ではないと思っている。テレビを見てれば分かると思うけれど中国では議員の会議では蓋付きのお茶が出る。でも日本の議員の議会ではペットボトルのお茶が出る。本当にあれで良いのだろうか。」

—「確かに、ペットボトルのお茶が出ているのがテレビで見れますね。」

川崎さん「国の農水政策では農家は規模拡大でコストを削減し、効率を上げることで農家の収入も増えると見込んだんでしょう。しかし川根のお茶は規模拡大でやると絶対に質が下がるんです。ペットボトルのお茶とかであれば良いかもしれませんが、リーフで大型化は駄目です。絶対質が下がる。美味しい川根茶は規模を小さくしないと駄目なんです。 米や麦、とうもろこしは大型化でもよいと思います。しかしリーフの川根茶葉で規模拡大は無理なんです。仮に大型化を断行してコストが下がって利益が上がるとします。しかし結局は値段競争になるでしょう。農家の利益は出ないと思う。それに茶農家にとっての良いお茶と製茶会社の良いお茶というのも違う。製茶会社にとって良いお茶というのは儲かるお茶なんだ。お茶というのはブレンドによって味を高めるが、ただ量を増すだけの儲ける事を目的としたブレンドもある。お茶の味を高めるブレンドなら良いが、儲ける為のブレンドでは駄目なんだ。」

—「なるほど。金儲けに走る問屋も出てくるかもしれません」

川崎さん「仮に大型化で勝負したとしても、今や鹿児島では24時間稼働する茶栽培がある。鹿児島はお茶の新興地だから、皆がまとまって盛り立てている。このままだと静岡のお茶は終わる。」

—「鹿児島のお茶製造は24時間稼働なんですか!?初めて知りました」

かつては日本で唯一のお茶の市場だった静岡が今は衰退するばかり。川崎さんの考えるこの先の静岡茶の進むべき方向性とは

川崎さん「昔はお茶の市場というと全国に静岡一つしかなかったんだ。でも鹿児島や通信販売が出来てから一気に衰退してしまった。急傾斜の山間で出来る静岡の川根茶葉は確かに効率が悪いかもしれないが、かといってどこでも栽培できるような茶葉では鹿児島に負けます。私は川根茶は山で質を高めて高級品としてやっていくのが良いと思っています。しかしこのままでは手摘みのお茶も減っていき、品評会に出すようなお茶屋もなくなっていくだろう。」

—「急傾斜の地形で栽培する茶は確かに効率化や機械化には向いていないそうですね。」

川崎さん「機械化が無理というわけではないと思う。キーエンスに手摘みのロボットを作ってくれって言ったんだけれどね、二億くらい予算がかかるらしい。国は六千万までならの補助金を出すらしい。とてもじゃないがお金がかかり過ぎて作れないと断念したようだ。」

—「キーエンス!機械加工業界ではトップの会社ですね。2億もかかるんですか?」

川崎さん「今や茶の単価は下がり続け茶農家はどんどん減っている。儲けが出ないからと続けたくても続けられないというのが現状なんだ。 でも今や急須を見たことのある人すら減っているんだ。時々お茶を広める活動をしに小学校に普及活動をしにいくこともあるんだけど、東京の学校で聴いてみたら急須を見たことのある子供は全体の二割くらいしかいなかった。」

—「静岡のお茶は美味しいと思います。モノは間違いなく良いんです。ただその本当の味を知る人があまりにも少ないんです。問題はPRの方法だと思います。」

川崎さん「恒常的なPRが必要なのだと思う。ウチは前にアド街ック天国という番組に出た事がある。確かに番組の反響は凄かったけれど、長くは続かなかった。」

—「今はSNSの影響はテレビよりも大きいところもあるらしいです。問題はお茶をどう広めていくかなのだと思います。日本酒も同じような所があると思います。美味しい純米酒も大量生産は出来ません。しかし本物を好む消費者の草の根活動で今本物の純米酒は復興しつつあります。私は日本茶もそれが出来るのではないかと思うんです。」

川崎さん「静岡のお茶も、ひとくくりではなく産地ごとに味や風味が違うということに着目してほしい。お茶インストラクターもソムリエのようにシングルオリジンで産地によるお茶の違いを比べるような取り組みもしていくべきだと思う。お茶は癒しの効果もある。それを科学的に実証してもらうように言ってもいるんだ。世の中いろんなサプリメントがあるが、癒しのサプリメントはない。私は癒しの面からもお茶の有用性を感じている。」

—「なるほど。あと最後に教えていただきたいんですが、松島園さんが思う美味しいお茶を飲める所って言うと何処があるでしょう。」

川崎さん「本当に美味しいお茶は産地で景色と空気と農家の話を聞きながら飲むのが一番贅沢なんだ(笑)」

—「分かる気がします。東京の寿司屋で御飯を食べた事があるんですけれど、静岡の漁港の定食屋の方がずっと美味しいように感じました。」

川崎さん「あはは(笑)なるほど、そんなものかもしれないね。つちや農園、と相籐農園。ここに行ってみると良いよ。」


豊好園の片平次郎さんから「川根茶の巨匠」といわせるほどのお茶を作る農家でありながら、高級ボトルティーに挑戦もする川崎好和さん。従来の手法のみに捉われることなく美味しいお茶つくりを追求し続ける松島園でしか味わえないお茶を体験しに来てみてはいかがでしょう。

以上、編集長による松島園のレポートでした。

お店の情報

住所 〒428-0311 静岡県榛原郡川根本町元藤川867番地
ホームページ http://www.kawanecha.net/index.html
電話番号 0547-57-2825
電子マネー・カード決済 現金のみ
営業時間 問い合わせ確認
定休日 不定休
駐車場 あり(2台程度)
アクセス 車で、新東名「島田金谷IC」より約1時間、「静岡SA・ETC専用出口」より約1時間20分

関連記事