静香農園の川根茶の魅力と希少な高級茶の行方【静岡県・川根茶】

静岡県中部の川根本町元藤川という地域には多くの茶園があります。この地域は平均降雨量の多さや日照時間の短さ、昼夜の温度差など良質なお茶を栽培する自然環境に恵まれています。この地域で栽培されるお茶は川根茶と呼ばれており希少性のある高級茶として名高く、お茶の品質を審査する品評会で数々の栄誉に輝いてきました。今回取材させていただいた静香農園は有機栽培で自園自製自販の川根茶茶農家を営んでいます。
この記事では、静香農園のお茶の魅力と、希少な高級茶はこれからの時代どのように在るのかなど、静香農園園主の小西宣幸さんのインタビューも交えてお伝えしていきます。
目次
静香農園とは
静香農園とは川根本町元藤川で自園自製自販をしている有機栽培の川根茶農家です。現在4代目の園主を務めているのは小西宣幸さん。
静香農園のお茶は品質が高く品評会で数々の賞を受賞してきました。現在では品評会用のお茶を作る労力をお客様に届けるお茶を作る方に回していきたい、との理由から品評会への参加は最小限にとどめているそうです。
静香農園はネット販売が主であり、店舗や看板を出していないので、直接赴く際は事前に電話やメールで連絡をしておいた方が良いでしょう。
静香農園のお茶の紹介
静香農園は有機栽培で自園自製自販の川根茶農家です。煎茶や和紅茶など様々なお茶を作っています。ここではそのお茶を少しだけご紹介します。
永寿
一番茶を若い芽(みる芽)で摘み取り、その特徴を包み込むように丹念に仕上げた高級煎茶はお茶通の方も納得すること間違いなし。お土産としてもオススメです。
さくらみどり
甘い香りと旨味を併せ持った煎茶。桜葉のような印象的な香気をイメージして、静香農園では「さくらみどり」と命名しました。静岡県清水地方では「まちこ」とも呼ばれており、他にも「静7132」や「さくらかおり」など地域によって異なる呼び名が付けられています。フランス人好みしそうなお茶です。
その他にも、豊かな香りと旨味の「はるみどり」。海外からも問い合わせがある本格紅茶「深山紅茶」。上級煎茶とオーガニック玄米、柚子をブレンドした和のフレーバーティー「柚子玄米茶」など様々なお茶があります。
インタビュー:これからの時代の希少な高級茶の行方
静香農園園主の小西宣幸さんにお話を聞かせていただきました。
静香農園の川根茶作り
–静香農園の有機栽培の川根茶作りについて教えてください。
静香農園のお茶は有機栽培です。しかし、どうか皆さんには有機と無機どちらが良い悪いというわけではない、ということを理解しておいていただきたい。皆、お茶の樹を害虫や病気から守りながら美味しいお茶を作ろうと頑張っているのです。
静香農園の場合は有機でやっていけそうかな、と判断しているだけです。周囲の生態のおかげかもしれません。
–静香農園のお茶はどのような方が購入されていくのですか?
静香農園のお茶はネット通販が主ですので、購入される方は近隣の方から遠方の方まで様々ですよ。海外からの問い合わせもあります。小売りでは川根の千頭駅前にある千頭館という食堂で販売しています。
▲千頭館のレジ前に静香農園のお茶が販売されています。
車業界と似ているお茶業界の移り変わり
今や急須を使用して淹れる高級茶は、車で言うならばフェラーリやポルシェのような高級車に位置づけされるのかもしれないですね。高級車の品質は誰もが最高峰だと認めていますが、だからといって毎日運転することはないでしょう。
今でこそ自家用車を所有することは珍しくなくなっていますが、かつて車は一般には手が届かないほどの高価格だったのです。そんな中で、アメリカの有名な車メーカーであるフォードが車の大量生産に取り掛かりました。
大量生産によりコスト削減が可能となり、販売価格が下がりました。アメリカには雇用も生まれ、高給取りの従業員も現れるようになりました。国もそうした事業に資金を出すようになり、様々な市場にお金が回っていき経済が活発になります。
時にはオイルショックも起こるなどして紆余曲折を経ながら経済が発展していった末に、人々が求めたのは「価格が安くて品質の良いもの」だったのです。全体的に生活水準が豊かになったとはいえ、皆がお金の使い道に困るほどお金持ちになったわけではないですからね。
そこにフォードよりも性能が良いとされるドイツ車メーカーのフォルクスワーゲンが入ってきました。更に日本からも日本車が入ってきました。日本製の車は外国製に比べて故障も少なく安価ですし、燃費も良いので多くの人が欲しがりました。
結果、アメリカ製の高級車は車市場から駆逐される形となり、アメリカの自動車産業は一時衰退しました。現在では、トヨタやホンダは日本からアメリカに生産拠点を移して、日本車の製造ラインを立ち上げています。
そうしてアメリカに雇用を作り経済をまわすのに一役買っています。私はお茶も同じようなことが起こりつつあるのかもしれないと思っているのです。
–なるほど、車の発展の歴史と、お茶の発展の歴史には通じる部分があるのかもしれませんね。車は最初、馬車だったのが、外国の高級車やスポーツカーとなり、安価な一般車となった。お茶は番茶から始まり、高級茶になり、ペットボトルへと形を変えつつある。
今の一般車は昔とは比較にならない程に高性能になりました。ペットボトルのお茶も同様にそうです。技術面や材料面でも改善されていますから、美味しいものが出来上がっていますし、大量生産すれば価格も下げられます。
–そして消費者が求めているのは「安価で良いもの」。だからペットボトル茶が選ばれているというわけですね。
働きながら消費もするという人々にとって、今は凄く便利な時代だろうなと思います。そもそもそういった人々には急須でお茶を淹れるような時間はないでしょうからね。
ある程度の質の良いものを大量に作り安価で販売すれば皆手を出します。お茶の業界もその流れで回るようになってしまいました。私は別にこれが悪いことだとは思っていません。経済をまわすという一面では成功していることです。
しかし、現在この流れでの競争が世界規模で起こってきています。圧倒的な人口と国土を持つ中国が台頭するようになるのは時間の問題でしょう。
希少なお茶が手に入りやすい時代になった
急須で淹れるような高級茶の作り手から見れば、現在のお茶業界は衰退と見るかもしれません。しかし、お茶のファン目線で見れば、こんなに素敵な時代になったのか、と感じることもあるかもしれませんよ。高級茶が売れなくなったことで、逆に皆が手に入りやすくなりましたからね。
一昔前であれば、お殿様に献上していたような希少性の高いお茶がすぐそこで売っていたりします。川根茶であれば高速道路のサービスエリアにもあると思いますよ。
私はお茶を楽しくやりたいのです(笑)もともとお茶って気分を良くしてくれる嗜好品でしょう。きっと皆、普段は意識しないで、サラサラッとお茶を飲んでしまうかもしれないけれど、お茶に意識を集中させて飲んでみると、また複雑でしょう。幾重にも味わいが重なってくる。
これを経済に繋げるとなれば、また大変ですけれどね。今は人々の生活水準が豊かになり健康志向が広まってきているので、お茶や抹茶をスーパーフードとして購入する人も出てきています。私はお茶好きにとって今は本当に良い時代なのだと思いますよ(笑)
静香農園の情報・購入方法
住所 | 〒428-0311 静岡県榛原郡川根本町元藤川141-1 |
ホームページ | http://kawanechashizuka.sakura.ne.jp/ |
SNS | 静香農園のfacebook |
電話番号 | 0547-57-2537 |
電子マネー・カード決済 | なし |
営業時間 | 問い合わせ |
定休日 | 問い合わせ |
駐車場 | あり(1台) |
アクセス | 所要時間: 国一バイパス向谷ICより車で約60分 最寄り駅: 大井川鐵道・駿河徳山駅より車で約5分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介。静岡県副県知事と面会。2021,2022静岡県山間100銘茶審査員を務める。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |