相藤園のお茶作りと川根茶農家を取り巻く昔と今【静岡県・川根茶】

OCHA TIMES
相藤園のお茶作りと川根茶農家を取り巻く昔と今【静岡県・川根茶】

南アルプスを源として流れる大井川上流域の自然豊かな土地「静岡県川根本町元藤川」。この地で自園・自製・自販で茶農家を営んでいる相藤園は品質の良し悪しを競う全国茶品評会で二年連続産地賞を受賞、これまでにも沢山の受賞歴が有ります。今回取材させていただいた茶園喫茶「炬籐里(ことり)」では相藤園の園主・相藤令治さん自らが呈茶してくださる茶農家直営の川根茶園喫茶です。

この記事では相藤園の作る川根茶の魅力や、川根茶農家が置かれている現状など相藤園4代目園主の相藤令治さんのインタビューも交えてお伝えします。

相藤園とは

相藤園とは川根本町元藤川にある自園・自製・自販の茶農家です。南アルプスを源として流れる大井川上流域の自然豊かな土地にて川根茶を作っており、現在園主を務めているのは4代目となる相藤令治さん。

相藤園は、お茶の品質の良し悪しを競う全国茶品評会で二年連続産地賞を受賞するなど、高品質な川根茶を作っており、これまでにも各種品評会でも過去に数十回もの受賞歴があります。

唯一人、手揉みの永世名人となった相藤良雄

現在より数十年前、まだ製茶機械の存在しない手揉みでお茶を仕上げている時代、相藤令治さんの叔父にあたる相藤良雄さんは手揉みの技術を競う大会で7年連続優勝しています。

そして、ついには手揉みの永世名人に認定されました。後にも先にも永世名人は相藤良雄さんただ一人です(※手揉みに関しては山平園の記事を参照してください

茶農家としては異例の東京日本橋との取引

当時まだ東京都への交通網さえなかった時から、相藤園は東京日本橋と取引をしていました。

▲相藤令二さんより4代前の曾祖父が、東京のお茶屋さんと取引をしたお茶の仕切り書。明治の終わりから大正の初期のお茶の値段が読み取れます。

相藤園は手摘み・手揉みで仕上げたお茶を、高瀬舟に積んで大井川を渡り島田まで運んだ後、東海道線の汽車にて東京日本橋まで送っていたそうです。茶農家が東京日本橋と取引をすることは極めて珍しく、そのことからも相藤園のお茶の類まれな品質の高さが伺えます。

日本で初めて茶箱業界と連携をした相藤園

相藤園は茶箱業界と連携し、呈茶イベントなどの催しや展示を行った初めての茶農家であり、その画期的な試みは注目を集めました。当時のインテリア茶箱コーディネーターの代表を務めていたのは薗田喜恵子さん。

現在は代表の立場を退き、後進の育成や製造技術の継承といった形で、今なお茶箱の製造に携わっています。


現在、茶箱の生産工場は日本には5件あり、そのうちの2件の所在地は川根にあるインテリア茶箱クラブの工場です。

工場ではインテリア茶箱コーディネーターといわれる方々がカルトナージュという茶箱の外側に布を張る作業を行っており、その質の高さからインテリア茶箱クラブの品は日本橋三越でも売られています。

インタビュー:相藤園の作る川根茶の魅力と川根茶農家を取り巻く昔と今

相藤園園主の相藤令治さんにお話を伺いました。


相藤園茶園喫茶「炬籐里(ことり)」

–川根茶園喫茶炬籐里(ことり)について教えてください。

この茶園喫茶炬籐里(ことり)は体験型の喫茶になります。茶器と茶葉はこちらで用意しますが、後はお客様ご自身でお茶を淹れて頂きます。

今回提供するのは「やぶきた」といわれる品種のお茶です。お菓子は栗きんとんになります。この栗きんとんは私の妻の手作りになります。


美味しい川根茶を味わいながら、川根の良いところも知って頂きたい。そこから川根のファンを増やしていこうというのが、川根茶園喫茶のコンセプトになります。

百聞は一見にしかず、まずは相藤園の川根茶を飲んでみていただきたい。私達は味に自信を持ってオススメしてはいますが、人は皆感覚が違いますから、どうぞ、ご自身で確かめてみて下さい。今はまだ川根茶の美味しさを知らない人が多いと思います。初めて相藤園の川根茶を飲んだ方は「今まで飲んできたお茶の味ではない。」と驚かれます。

–美味しいです。まるで舌の上で微かに泡立つような甘味と旨味。これが川根茶特有の滋味(じみ)と言われる香味なのですね。

一般的にお茶は一煎目に美味しさが最も出ます。川根茶の一煎目の味となると、おそらく今の若い方には想像も出来ない味でしょうね。川根茶を二煎目、三煎目と淹れていくにつれて、ようやく普段飲んだことのあるお茶の味に近づいてくると思います。

–この栗きんとんも凄く美味しいです。

用意するお菓子は時期によって様々ですが、今回はとても良い栗が手に入りましたので、栗きんとんをお出ししています。

次はすすり茶をどうぞ。品評会入賞茶2.5グラムを水に浸してじっくりとお茶が抽出されるのを待ちます。これは他ではまず出ない、本当に贅沢なお茶ですよ(笑)

–この香りと味は本当に凄い。まるで高級食材を思わせるかのような鮮烈で澄んだ美味しさです。

相藤園

相藤園の川根茶作り

–相藤園のお茶作りについて教えてください。

(栽培期)

お茶の栽培において大切なのは、茶葉の中にどれだけ養分を取り込むことが出来るかです。その為に重要なのが「化粧ならし」といわれる作業になります。

化粧ならしとは、養分が効率よく茶の芽にいきわたるように、伸び過ぎた余計な部分を切り取ることをいいます。この化粧ならしの時期が大切です。早過ぎても遅過ぎてもいけません。

化粧ならしの時期を見極める判断は、私達茶農家が長年積み重ねたノウハウにかかっています。しかし、近年は大井川水域や気候などの環境が大きく変わりました。40年以上茶農家をやってきた私のノウハウをもってしても判断が難しい。

去年の「化粧ならし」の時期は異常なくらい早く、今年は遅かったですね。

肥料もこれまでに様々なものを試してきましたが、現在はボカシ肥料(米ぬかや油かすといった有機肥料に土や籾殻を加えて発酵させた有機肥料)を中心に使用しています。

昔は魚屋を周って集めた45リッターもの魚のアラを発酵させたアミノ酸肥料を使用していたこともあるのですよ。あの作業は本当に大変でした。当時は今と違って冷蔵設備や運送もなかったですし、何より体に染みついた匂いを洗い落とすまでは家に入れてもらえなかった(笑)

他にも、どうしたらもっと良いお茶を作れるのか知りたくて、農林省の金子武さんの下にも何度も通いましたよ。そうして10年以上試行錯誤を続け今のお茶作りに至ります。

(収穫期)

茶の本収穫(茶期)が近づいてきたら、まず少量の茶葉を茶園から摘んできて試し揉みします。試し揉みをすることで去年と今年のお茶の葉の違いを感じ取ります。

▲ステンレスを電熱で曲げて作った相藤令治さん手作りの試し揉み用の台。

本格的に手揉みをする場合となると、まず午前中に茶園から茶葉を刈ってきて、午後から大体4時間くらいは一人で揉みます。次の日に持ち越してしまうと茶葉の鮮度が下がってしまうので刈ってくる量は、自分が揉める分だけにします。

茶期が始まる前に、この作業をしているのは現在川根では相藤園くらいだと思いますよ。ちなみに試し揉みした茶葉はフォーレ中川根茶茗館に持っていきイベントなどで使用しています。

–川根茶農家はお茶の品評会での受賞に必ずと言っていいほど名を連ねていますが、それは何故ですか?

土質が良いからですよ。貴方は相藤園の近くにある松島園にも行ったのですよね。あの場所は小井平と言うのです。松島園の園主・川崎さんが作る川根茶も本当に凄い。あの質の川根茶を作るというのは本当に頭が下がります。

また相藤園の近くには親戚の相籐農園もあります。園主の方の父親が私のいとこになります。相籐農園も素晴らしい川根茶農家です。

急速に衰退化する「川根茶」ブランド

近年になって川根茶の知名度が急速に下がっているのです。昔は川根茶といえば日本茶のブランドとして有名だったのですが、今となっては川根茶を知っている人が最盛期の25%ほどにまで減りました。

川根茶ブランド低迷のきっかけとなったのは、おそらく産地表示改訂の問題かと思います。昔は、川根茶というシールを貼られたお茶が全国に向けて多数出荷されており、川根茶ブランドは広く知れ渡っていました。

ある時を境に「表示されている産地の茶葉が51%以上入っていなければ、その産地名を表示してはならない」というルール変更がなされたのです。

–何故産地表示の改訂がなされたのですか?

産地表示の改訂そのものは各茶産地をブランディングして守る為に行われました。かつてはお茶のパッケージに川根茶の名が表示されているだけで売り上げが伸びたほど、川根茶が有名な時代がありました。

しかし、ごく僅かばかりの川根茶を合組(茶問屋が各産地のブレンドして奥行きのある味わいのお茶を生み出す伝統的な技術)しただけで川根茶のシールを貼って売るという手法が非難を浴びたのです。そうした各茶産地の知名度を利用した売り方を許してはいけないと産地表示のルール改訂が提案されました。

–なるほど、いつしか世間ではブレンドという言葉に対してネガティブなイメージを抱くようになってきたように感じます。そうした風当りの強さも関係があったのかもしれませんね。

ルール改訂後、ほとんどのお茶が川根茶の名前を表示できなくなってしまいました。何故なら川根茶は品質が良いものの生産量が少ない希少なお茶だからです。お茶の国内生産量の内訳で川根茶が占める比率は数%もありません。

川根茶をブランディングして守ろうという行為が逆効果になり、結果として川根茶の名は市場から消え、知名度の低いコアなブランドになってしまいました。もとより600ヘクタールしか無かった川根茶の栽培面積が現在ではもう半分以下です。

自分の身を守るためには小売りをしなければならなくなった

私は茶農家です。本来なら栽培や製造に専念したい。小売りや喫茶などに手を伸ばせば、どうしても手間と労力がかかってしまいますからね。

–何故、茶農家が栽培製造に専念できないのですか?

茶価が安いからです。現状では茶市場に出すと全体として値段が安ければ良いという流れになってしまっています。どんなに良い茶を作ろうとも、それに見合った値段を付けてくれなければ我々生産者の仕事は成り立ちません。

昔、農家は良いお茶を作っていれば、良い収入が得ることが出来て次の年に繋げられたのですよ。しかし現在ではそれが出来なくなってきた。では我々茶農家は一体どうやって稼げばよいのか。

そう考えた時、自分達で値を付けて売るしかないという答えに辿り着いただけなのです。もう自分の身を守るためには小売りをするしかないというところまで来てしまいました。

川根本町元藤川より最高の川根茶を届けたい

茶農家がお茶の小売りをしたのは、この川根本町藤川の地が初めてなのです。ちなみに高田農園が一番最初にお茶の小売りを始めました。それがきっかけで小売りのお客さんが増えました。

相藤園も昭和51年からは小売りに加えて通信販売を始めました。1997年にはインターネット販売も始ました。今ではネット販売が主ですよ。

–メディアでは、世界では日本茶がブームというニュースが流れることがありますが、外国の方は川根茶を知っているのですか?

外国の方も来られますよ。この間も中国人がここに来ましたが(※コロナ前)相藤園のお茶を全部欲しいって言ってました(笑)中国にも様々なお茶がありますが、売り方が非常に上手だと思います。高所得者層に向けてとても良い値段で売ってるから大きな利益を得ていたりしてます。

–相藤さんはお茶をどのように楽しんで欲しいと思っていますか

お茶は飲みたいときに飲んでくれれば良い。朝に飲む茶でも昼に飲む茶でも夜に飲む茶でも良いのです。産地によって味だって違いますから、そういった違いを楽しみながら味わってほしい。それが私たちの望みです(笑)

相藤園の情報・購入方法・ツアー情報

住所 〒428-0311 静岡県榛原郡川根本町元藤川160
ホームページ

購入方法

ツアー情報

http://www.fuji.ne.jp/~aitouen/

(↑相藤園のお茶はHPからも購入できます)

http://kawane-chaen.com/

(↑川根茶園喫茶のHP)

https://lns-nihon.jp/

(↑二本柳さんの経営するツアー会社の情報)

電話番号 0547-57-2693
電子マネー・カード決済 現金のみ
営業時間 問い合わせ
定休日 サイトより確認、もしくは問い合わせ
駐車場 あり(1,2台)
アクセス 所要時間: 国一バイパス向谷ICより車で約60分
最寄り駅: 大井川鐵道・駿河徳山駅より車で約5分

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