山平園の目指す手揉み茶の真髄と心を潤すお茶のすすめ【静岡県・富士茶】

OCHA TIMES
山平園の目指す手揉み茶の真髄と心を潤すお茶のすすめ【静岡県・富士茶】

静岡県富士山南東の須津川渓谷沿の地にてお茶の有機栽培を営む茶農家山平園。4代目園主を務める平柳利博さんは30年以上に渡ってお茶作りに取り組む傍ら、手技のみで製茶する「手揉み技術」の保存活動にも精力的です。現在、平柳さんは静岡県茶手揉み保存会会長と全国手揉み茶協会副会長を務めています。

この記事では、手揉み茶の真髄や楽しみ方、心を潤すお茶作りなど山平園4代目園主平柳利博さんと奥様の平柳啓子さんへのインタビューも交えてお伝えしていきます。

山平園とは

山平園は富士山南東、 愛鷹山系の清流・ 須津川渓谷沿いの地にて有機栽培で自園・自製・自販の茶農家を営んでいます。

機械での製茶が一般的になった現在、4代目園主の平柳利博さんは茶師の手による製茶技術「手揉み」を保存、継承していく活動にも精力的です。平柳さんは静岡県手揉み製茶技術師範であり、また静岡県茶手揉み保存会会長と全国手揉み茶協会副会長を務めています。

山平園のお茶の紹介

山平園では2003年より無農薬・無化学肥料の有機栽培でお茶作りをしています。中には、自然仕立てのお茶(自然仕立てについての説明は森内茶農園の記事にて参照)手摘み茶、手揉み茶など希少なお茶もあります。ここではそんな山平園のお茶を少しだけご紹介します。

品種茶~きらり31・はるみどり・さえみどり

山平園では様々な品種茶(ブレンドをしない単一産地、単一農家によるお茶で通称シングルオリジン茶と呼ばれる)を作っています。一般的に最もポピュラーな品種茶といえば「やぶきた」ですが、平柳さん曰く「山平園の土地には「はるみどり」の栽培が最も適している」と、30年以上に渡るお茶作りを通じて、ようやく品種茶「はるみどり」の栽培に手応えを得られたそうです。

この先、山平園では品種茶「はるみどり」の栽培に力を入れていく予定です。また時期にもよりますが、山平園では各品種茶の機械摘みのお茶だけでなく手摘みのお茶も購入することが出来ます。


里山紅茶・玄米茶、ほうじ茶

里山紅茶はクセのない優しい甘味でストレートで飲むのがおすすめです。

ほうじ茶は上質な茶葉を贅沢に焙煎した香ばしさとほのかな甘みに癒されます。ノンカフェインなので小さな子供でも楽しめます。

玄米茶は香り高く炒られた玄米が山平園の茶葉と調和しています。緑の水色が鮮やかです。各種ティーバッグでの販売もしています。


他、山平園のお茶を使用した茶飴なども販売しています。

山平園のお茶はネットショップや工場での直接購入が出来ますが、他に新東名駿河湾沼津上りSAネオパーサ内、三島の伊豆村の駅内のテナント「お茶の幸寿庵」、富士川楽座、東京三鷹「うちのコメうまいよ」でも購入することが出来ます。

インタビュー:手揉み茶の真髄と心を潤すお茶のすすめ

山平園の園主平柳利博さん、奥様の平柳啓子さんにお話を伺いました。


手揉み茶とは

–手揉み茶について教えてください。

手揉み茶とは手で揉んで仕上げたお茶のことです。一般的に、お茶を揉んで仕上げる工程では製茶機械を使用するのですが、機械での製茶は効率的に量をこなせるものの、茶葉の繊維に傷が生じてしまいます。煎茶を淹れた時に水色が緑になるのは、その傷口から茶の粉が流出するからです。

一方で手揉みの場合は手で優しく揉んで仕上げるので茶葉の繊維に傷がつきにくく、色素の素である茶の粉が出ません。故に手揉みで仕上げたお茶は淹れると無色に近いお茶になるのです。


今でこそ製茶機械でお茶を揉むということは一般的になりましたが、昔は茶師がお茶を手で揉んで仕上げていました。茶師の手揉みの技術を機械で再現したのが製茶機械なのです。

現在市場に出回っているお茶は、ほぼ全て機械で揉んでいますので、特別な機会でもない限りは、まず手揉み茶を飲む機会はないでしょう。

–手揉み茶はどのようにして作るのですか?

手揉みには様々な手法があります。基本的に手で揉むということに変わりはないのですが、現在、静岡県内には8つの手揉みの流派があるのです。

青透流~せいとうりゅう~
小笠流~おがさりゅう~
幾田流~いくたりゅう~
倉開流~そうかいりゅう~
川上流~かわかみりゅう~
鳳明流~ほうめいりゅう~
興津流~おきつりゅう~
川根揉み切り流~かわねもみきりりゅう~

それぞれの流派を後世に伝えていこうと手揉み保存会という組織があり、現在静岡県に18支部あります。私は静岡県茶手揉み保存会会長と全国手揉み茶協会副会長を務めております。

–なんだか凄い難しそうですね。

どなたでも出来る簡単な方法もありますよ。茶園から茶葉を幾つか摘んできてホットプレート上で手揉みするのです。揉んでは乾かしてを30分くらい繰り返せば手揉み茶の出来上がりです。馴れてきたら、もっと美味しく手揉み茶を作るにはどうすれば良いかを各々で追求していけばよいと思います(笑)

ワークショップを体験してみても良いかもしれませんね。牧之原にある茶の都ミュージアムでは手揉み茶のワークショップを一年中開催していますよ。

開催日は第2と第4日曜日。講師は4人。体験者は一回につき平均20人。値段は20分300円です。

▲茶の都ミュージアムの手揉み茶ワークショップの様子

こうしたお茶作り教室を積極的に設けていくというのは、生産者と消費者の触れ合いの場としても、非常に面白いと思います。冷凍庫に手揉みに必要な材料を保管しておけば、季節関係なく一年中開催が可能です。要望があれば上級編を開催しても良いですしね(笑)

–手揉み茶は煎茶に限られるのですか?

手揉み紅茶もありますよ。一般的に手揉み茶というと煎茶のイメージなのかもしれませんが、紅茶でも出来ます。

▲手揉み紅茶

煎茶から紅茶まで作る技術を持ってさえいれば、その中間のお茶であるウーロン茶、不発酵から発酵茶まで何でも作れます。その中から、自分がこれだ!と感じたお茶を突き詰めていけばよい。お茶は毎年同じものが出来る事はないから、いつまでも飽きることはないでしょう。

(平柳啓子)自分の手の中で作った自分だけのお茶っていうのは、絶対美味しいですよ。お土産としても良いでしょう(笑)私もいずれ、そういったワークショップをやりたいですね。

(平柳利博)私はこの先も手揉みの技術を磨いて日本一の手揉み茶を作れるようになりたい。勿論それだけの努力は必要ですけれどね(笑)ちなみに玉露も手揉みで作れますよ。玉露の手揉み茶葉10gで5000円で販売しています。

–10gで5000円!どういった方が購入されるのですか?

中国人の富裕層の方々が買っていかれます(笑)

▲山平園の手揉み茶は茶の都ミュージアムのショップでも販売されています。

急激に落ち続けている静岡茶の生産量

(平柳利博)メディアでは静岡茶の生産量と鹿児島茶の生産量を対比して報じますが、よくよくそのデータに注目してみて欲しい。鹿児島茶の生産量が急激に増えているというわけではない。静岡が急激に落ち続けている

(平柳啓子)静岡茶は生産量だけではなく知名度も下がっているのを実感しています。2年ほど前に東京のお茶のイベントやフェスに勉強に行ったのですが、お茶好きの皆さんからは「八女のお茶とか鹿児島のこの品種のお茶が好きです」っていう話題が出るのです。私は「えっ静岡じゃないの?」って内心驚いていました。

–何故生産量が落ちているのですか?

(平柳利博)茶価が安いので作っても生産者側が儲かりません。ですから生産量が減少するのです。

–何故茶価が安くなるのですか?

色んな原因があると思いますが、私は茶価下落の原因の一つには乗用型機械(人が搭乗する車輛型の茶摘み機。茶畑の中を車を運転するように移動しながら効率的に摘採することが出来る)が登場したことにもあると思います。

従来の人の手による手摘み作業では一日に収穫出来る茶葉の量はせいぜい数十キロ程度。しかし、乗用型機械であれば一日に何万キロもの茶葉が収穫出来ます。

昔、荒茶(製品としてのお茶に仕上げる一歩手前の状態。一般的に茶農家から茶問屋に荒茶の状態で卸売りされており、お茶の仕上げを生業とする茶問屋にとっては原料になる)の値段はキロあたり500円でした。

仮に乗用型で一日に一万キロ摘んでしまえば毎日500万以上儲かる計算になります。そんなこと続くわけがない、茶価が安くなるのは当然です。

–大量生産が可能になり、供給量が増したことも茶価が下がった原因の一つなのですね。しかしデータを見ると静岡茶の生産量の落ち込み方は異常に見えるのですが、何故なのでしょうか?

平地で栽培されるお茶と傾斜地で栽培されるお茶とが同等に扱われてしまうのです。これは本当におかしなことだと思います。例えば鹿児島など九州地方にある茶畑は、平地が多く傾斜はほとんどありません。面積も静岡より広大で乗用機械が入りやすく短期間で大量に収穫出来るのでコストが抑えられます。

今では作業者一人がリモコンで複数の機械を操作して茶葉を刈り取っているところもあります。この先、更に規模を広げて自動化を進めれば、より一層のコスト削減も可能でしょう。ですからある程度は茶価が安くても商いとして成立します。

一方で静岡に多いのは山間の茶畑です。傾斜が多く機械が入りにくいので一人一人が手で摘み採っていかなければならない。

手で摘むとなると機械に比べ収穫量は圧倒的に少ないのですが、その分、部位を選別して収穫することが出来ます。機械では一度に大量に刈り取るので収穫量は多いものの、いろんな部位が混入することは避けられません。当然その違いはお茶の味に出ます。

私はどちらのお茶が良い悪いと決めたいわけではありません。ただ、その2つのお茶が同じであるはずがない。しかし現実として茶価はそれほど変わりません。ですから、山間の茶農家は次々に辞めていってしまうのです。

私としては手摘みにこだわりたい。しかし、手摘みを依頼するにも人件費の負担が重い。何よりも手摘みを出来る人達の高齢化が進み、もう手摘みが出来る人がいなくなりつつあります。

静岡の茶産業でも自動化を推し進めていけば良いという声もありますが、仮に自動化が実現できると分かれば必ず大企業が参入してくるでしょう。大企業と我々とでは資本が違うのだから、同じ分野で勝負したところで勝てるわけがありません。

私達は大企業が参入出来ない手のかかる農業を行う以外に生き延びる道はないのです。

–自動化の出来ない技術に勝負をかけるというわけですか。

(平柳利博)アメリカのように資源もない日本が世界で通用するとすれば、それは技術でしょう。日本人は体格が小さいけれど知恵がある。私は「日本人は技術で生きていく人種」だと思っています。

メジャーリーガーのイチローがしたように技術をもってすれば、体格の大きな人達に勝つ事が出来る。お茶屋も自分にしかできない技術を活用すれば道は開けると思います。

良いものを作ることに専念したいのにそれが出来ない

山平園は平成15年からオーガニックでやっています。除草剤を使用しないので、夏の草取りが本当に過酷です。有機の認証も取得するのですが、その認証を取得する際には何十万もの費用が必要なのです。

申請の為に揃えなければならない書類も膨大で、一農家がこうした作業を農作業の合間にやるのは負担が重過ぎる。

(平柳啓子)相藤園さんの記事で相藤さんが「良いものを作ることに集中したいのにそれが出来ない」と言われていますが本当にその通りだと思います。私達農家は良いものを作ることに集中したい。

現状では、もう自分達で売らなければ生活できないところにまで来てしまいました。3.11の事故直後の時期は静岡茶を売ってすらもらえませんでした。あの時以来もう静岡のお茶の値段はほとんど上がらないままです。

目指すのは心を潤すお茶作り

(平柳利博)ペットボトル茶のような喉が渇いたら飲むお茶を作っていたら単価的にもやっていけません。私達が目指すべきは喉を潤すお茶ではなく、より質を重視した心を潤すお茶を作ることだと思います。

山平園

–「心を潤す」というのはとても美しい表現ですね。

たまに外国の方から取材を受けることがあるのですが、外国では心を潤すという概念がないので通訳が出来ないんですよ(笑)。仕事中も傍らに良いお茶を置いて心を潤していけば、議論もスムーズに進む手助けにはなるのではないかな。

昔からお茶を飲んでいるときは喧嘩しないと言われていますしね。

(平柳啓子)是非、心を潤すような素敵なお茶活を日常に取り入れて頂ければと思います。知り合いのお茶好きな社労士の方が居るのですが、自分の事を「茶労士」だといって、昼休みになると職場仲間にお茶を振舞っているんですよ。楽しみながらお茶ファンを増やすために動いてくださっています(笑)

山平園の情報・購入方法

住所 〒417-0826 静岡県富士市中里1021
ホームページ http://yamahiraen.net/

(↑山平園のホームページ)

商品の購入はホームページからでも出来ます。

山平園のお茶の取り扱い店 新東名駿河湾沼津上りSAネオパーサ内

三島の伊豆村の駅内のテナント「お茶の幸寿庵」

富士川楽座

東京三鷹「うちのコメうまいよ」

電話番号 Tel 0545-34-1349

Fax 0545-34-1979

電子マネー・カード決済 電子マネー・カード決済は自宅店舗とオンラインが対応
営業時間 10時~17時
定休日 問い合わせ
駐車場 あり(少数台)
アクセス 最寄り駅、新富士駅より車15分

吉原駅より車15分

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