江戸時代から続く多品種栽培の本山茶農家「森内茶農園」【静岡県・本山茶】

静岡県葵区内牧に江戸時代から続く茶農家「森内茶農園」があります。手揉み技術を活かした上質なお茶作りをしており、県外のみならず海外からも人が訪れる茶農家です。内牧地区は小さな山が沢山あり、土地によっては日当たりだけでなく、温度、湿度までもが大きく違ってきます。森内茶農園はそういった地域の特性を活かして様々な品種の本山茶を作っています。
この記事では、森内茶農園の数々の品評会で受賞を重ね、皇室献上茶茶園の指定を受けた経歴を持つお茶作りについて、森内真澄さんのインタビューを交えてお伝えしていきます。
目次
夫婦で管理した茶畑と自宅の工場で多品種のお茶を作る江戸時代から続く茶農家
森内茶農園の森内真澄さんにお話を聞かせていただきました。
森内真澄 「森内茶農園は栽培しているお茶の品種が多いのですよ。幾つか紹介しますね。
~ゆめするが~甘味が強いお茶。
~蒼風~香りが強いお茶。
~香駿~、~SORA~特徴的な香りが欲しいのであればこのお茶が良いと思います。
~さえみどり~上品な旨味があるお茶です。良質なお茶に馴れている方はこちらが好きかと思います。
~つゆひかり~万人受けする旨味のあるお茶です。夏に冷茶で出すと皆イチコロです。
~むさしかおり~これは香りが面白いお茶です。
~おくみどり~外国の方がいらっしゃってコレを飲んだ時、「まるでシルクのようなお茶だ」って驚いてました。」
—「シルクのようなお茶ですか。外国の方は表現が面白いですね」
森内真澄 「こちらには旅行会社を通じて外国の方もよく来られるんです。この間はカナダ人youtuberが来訪されました。外国の方はお茶を飲んだ感想がとても興味深いんですよ。「エナジーを感じる」とか「命の水を飲んでいるようだ」とか、日本人にはないような言い回しで感想をおっしゃってくれるんです。」
↓旅行会社を通したサイクリングツアーもあり、静岡市内の名所を巡りをしつつ森内茶農園の茶畑に到着。森内さんに茶畑を案内してもらえる。
↓森内茶農園でお茶を楽しむ外国人観光客。
土地の特性を見極め適地に植えることにより品種の特性をいかす栽培を可能にした
森内真澄「茶業界は「やぶきた」という品種が主軸なんです。「やぶきた」は渋み、旨味、香りの3つがとても良い、バランスのとれたお茶ですから品評会にも出されます。静岡では、栽培面積の9割以上が「やぶきた」ですが、森内茶農園はやぶきた以外にもいろいろな品種のお茶を作っています。」
—「多品種の栽培というのは大変ではないのですか?」
森内真澄「ここ美和地区、内牧には小さな山が沢山あるので、土地によっては日当たりだけでなく、温度、湿度までもが大きく違ってきます。私達はそれを利用して、様々な品種の栽培に適した土地を見極め、土地毎に品種を分けて植えていくことで、品種の特性をいかしたお茶作りを可能にしています。もちろん大変ですけれどね。」
↓香駿
↓やぶきた
—「なるほど、簡単に言うと、土地によって日光の当たり具合が違うということを利用して、それぞれの日照条件に適した品種を植えているので、品種の特徴が出るのですね。」
森内真澄「はい、例えば旨味が強く色がきれいな「つゆひかり」などは、日照量の少ない斜面で育てることにより、よりその特徴を出すことができ、まるで被覆をしたかのような味や香りに近づきます。」
―「森内茶農園では紅茶も売っていますね。紅茶というのは茶葉を発酵させることによって作られていくのでしたよね。茶葉の発酵もやっているのですね。」
森内真澄「1999年から発酵茶の製造もしていますよ。紅茶つくりは、戦後紅茶を輸出していた時に紅茶つくりの技術指導をしていた先生に来ていただき指導を受けました。」
—「烏龍茶作りもその時からですか?」
森内真澄「いいえ。その数年後に「本山釜炒り茶研究会」で本場の台湾から講師の先生に来ていただき、その技術を教えていただきました。殺青(さっせい)に使う釜も台湾製の釜を輸入して使っています。香りだけを追求するのではなく、味と香りのバランスの良いお茶作りを目指しています。夫は、文献もしっかり読んで勉強していました。」
—「文献も読むのですね。」
森内真澄「文献は大事ですよ。ただ著者によって内容に偏りがあるので、様々な文献を読んで勉強する必要があります。もしお茶についてもっと詳しく知りたいというのであれば、茶業試験場などに相談するのもいいかもしれません。また研究発表会などでは、無料でお茶の試飲ができたりサンプルがもらえたりします。」
数々の品評会で受賞を重ね、皇室献上茶茶園の指定を受けた経歴を持つ
—「森内茶農園は品評会の受賞歴が多いですよね。2002年には皇室献上茶茶園の指定も受けている。一体どのようなお茶作りをしているのでしょうか?」
森内真澄「森内茶農園では手揉み技術を活かして、しっかりと揉み込んだ艶のある香味豊かなお茶作りをします。」
―「茶葉の形状がとても綺麗に整っているように見えます。あまり市場には出回ってない茶葉ですね。」
森内真澄「こちらは森内茶農園が作りました「全国茶品評会 普通煎茶 4キロの部 入賞茶」になります。」
森内真澄「こうしたお茶に仕上げる為には5時間くらい揉み続ける必要があります。」
—「5時間!?」
森内真澄「そうですよ。ステーキをイメージしてみてください。ステーキを調理する時は外はカリッと中は柔らかくジュ―シイになるように旨味を残しながら水分を消していきますよね。茶葉を揉むというのは、外は柔らかいまま水分を出していくという作業になります。茶葉の形状と内質のバランスの良い交差点があるので、そこを目指しながら作っていくのが大切なんです。Youtubeに動画も沢山載っていますよ。よろしければご覧になってみてください。」
↓森内茶農園の手揉み技術をもって、お茶の仕上げをどこまでも突き詰めていくと、茶葉がこのように美しく伸びた形状になる。
築150年の農家の自宅でお茶を楽しむことが出来る(予約制)
森内真澄「お茶の飲み比べは私が自宅に居る時であれば出来ますよ。普段は畑仕事をしていますので予め予約をしていただく必要があります。」
↓煎茶飲み比べ
↓発酵茶飲み比べ
↓夏は贅沢に品評会入賞茶を氷出ししたお茶も飲める。
↓茶ノ実油と岩塩で茶殻を食べられる。
—「聞いた話ですが、お茶というのは茶の樹を植えてから最低でも3年経たないと収穫出来ないらしいですね。」
森内真澄「3年だとかなり短い方ですね。通常はもっとかかります。」
—「それを知って驚きました。お茶は収穫までにかかる時間が本当に長い。」
森内真澄「そうですね。茶の樹を植えるところから、となると5年くらいはかかると思います。」
—「茶畑も手で摘む茶畑と機械で採る茶畑とで違いがあるのですね。」
森内真澄「多く見られるのが機械で効率よく採れるように丸くかまぼこみたいな形に仕立てられた茶畑です。丸い形なので日当たりが良い。一般に畝(うね)仕立て園、もしくは弧状(こじょう)仕立て園といわれる茶畑です。機械で収穫するので時間当たりたくさん量が採れます。
これに対して自然仕立て園と言われる茶畑は、茶樹を真上に向かってのびのびと育てていきます。そうして育てることで茶樹自身による自然遮光効果もあります。手作業で一芽一芽摘んでいくため高品質な新芽を摘むことができますが、お茶摘みさんたちの技術も必要です。一日に摘みとれる量は、機械摘みとは比べ物にならないほど少量です。」
—「手で摘むお茶と機械で採るお茶とでは味が全然違いますよね。茶農家に行った時に初めて私は手摘みのお茶を飲ませてもらったのですが、とても美味しくて本当に驚きました。」
森内真澄「畝仕立ての茶畑から採れる茶の芽の数が200とすると、自然仕立ての茶畑から採れる茶の芽の数は80程度です。その分、栄養がその80の芽に集中します。だから力強い旨味があります。」
—「自然仕立てのお茶の味は本当に凄かった。日本茶カフェではなかなか出会えないと思います。」
森内真澄「手摘みのお茶は美味しいのですが、単価が高いので日本茶カフェではあまり出されないかもしないですね。」
—「会社でもこういうお茶を出せば、間違いなく仕事の能率はあがると思いますよ。」
森内真澄「こういうリーフのお茶を出されれば、きっと変わるでしょうね(笑)」
—「「チーズとお茶のマリアージュ」というイベントのことを森内茶農園のブログで見ました。私は日本酒が好きなので、日本酒とチーズが合うというのは知っていたのですが、日本茶とチーズというのは初めて聞きました。」
森内真澄「「お茶と食を掬(むす)ぶ会」というお茶仲間の会で主催したイベントです。日本茶とチーズも合うんですよ。チーズは静岡では、まず手に入らないフランスのチーズを使用しました。レストランのシェフの方が「このチーズは滅多に手に入らないのに!」って驚いていましたよ。当初は開催人数が20人の予定でしたけれど、すぐに予定人数に達してしまったので増席しました。最終的には30人ほど集まりました。またこういうイベントを開きたいと思ってはいますが茶農家は4月から6月までは収穫期に入って忙しくなりますから茶の収穫期以外にやりたいですね。」
江戸時代から続く茶農家森内茶農園では夫婦で管理をした茶畑の新芽を摘み取り、自宅の工場でお茶を作っている。自園地の新芽であることから充分に知り尽くした特徴を鑑みることで、豊かな香りと嫌味のない味わいのあるお茶を生み出し提供しています。
森内茶農園の情報・購入方法・ツアー情報
住所 | 〒421-2118 静岡県静岡市葵区内牧705 |
ホームページ
購入方法 ツアー情報 |
https://moriuchitea.wixsite.com/moriuchi-tea-farm (↑森内茶農園のホームページ) https://cha2962383.ocnk.net/
https://www.shizuoka-tour.com/tours-activities/bike-tour-to-a-green-tea-farm/ |
電話番号 | 054-296-0120 |
電子マネー・カード決済 | 農家で直接購入の場合は現金のみ |
営業時間 | 問い合わせ |
定休日 | 不定休 |
駐車場 | あり |
アクセス | 新東名新静岡ICから車で約15分 |