静岡茶屋巡り~山梨商店~

OCHA TIMES編集長
静岡茶屋巡り~山梨商店~

数々のコンテストや品評会で評価を獲得。お茶の高温度製造を得意とする製茶問屋山梨商店

山梨商店

取締役の山梨宏之さんにお話を聞かせていただきました。


山梨宏之「ほうじ茶には「ピラジン」という成分が含まれていて、血行を良くする作用があります。これは麦茶やコーヒーにも含まれる。冷え性に効くので、特に寒い気候の北海道の方にほうじ茶は好まれ要望がありました。最初は茶葉の焙煎を外注していましたが、昭和30年くらいから自社でやり始めました。静岡市内にお茶屋は約120店舗あります。その内ほうじ茶店舗は5件のみ。ほうじ茶の製造方法は何百度で焙煎するという極めて特殊な技能なので、ほうじ茶の店は少ないのです。しかし5件もあれば、ほうじ茶を委託して作るという分には足りますので、集約的にそこがやればよい。玉露屋さんも少ないもので5件程度しかありません。静岡県内だとお茶屋は約500社ありますが、その内ほうじ茶店舗は約15件。全国になると、ほうじ茶店舗は50件くらいだと思います。」

山梨宏之「昭和30年頃、主に北海道にほうじ茶を売りに出していたときは、まだほうじ茶の需要が少なかった。今から40年前にペットボトルのお茶が生まれました。当時はまだ煎茶とほうじ茶の混合でペットボトルになっていたのです。ほうじ茶の焙煎は難しい技術です。ペットボトルメーカーが自社で出来ないから、私達のような、ほうじ茶を焙煎する会社と提携して製造します。そうしてペットボトルのお茶の需要が、ほうじ茶の仕事を増加させた。今ではペットボトルのお茶を専門に作る会社もある。安い原料の番茶を使用し強い火入れで焙煎してペットボトルにする。そして、これによって国民のほとんどが強い焙煎すなわち、ほうじ茶の味に慣れた。これが大きい。知らないうちにほうじ茶の味に慣れている。」

山梨宏之「生産農家から問屋に卸すというのは、要はリレー方式で仕事をしているという事です。農家は生葉を荒茶にすることで水分を5%程度にして保存可能な状態にする。この先の作業までやろうとしても、刈り取らなければならない生葉が同時期に後から来るのでやりきれなくなってしまう。だから茶農家の作業はここまでとして、ここから先は問屋にやってもらいたい、と卸売りして金に換えるのです。そこから先は問屋が仕上げ、火入れ、製造する。」

山梨宏之「これが原料となる茶葉です。これを炒るとポップコーンのような感じに3倍から4倍に膨れ上がり、細胞膜が割れて甘みが出る。山梨商店では一日に1000キロ。一人2グラムとして50万人分作る。」

山梨宏之「機械で焙煎するには、茶葉にセラミックを混ぜて内部から熱を加えて一気に加工する。水分が0%になり一気に細胞壁を剥がして爆発させ糖質を高い温度で解放させる。原理としてはポップコーンと同じです。混ざったセラミックは後工程で分離します。」

山梨宏之「煙突から出ている煙をタンクに集めて水のシャワーをかけて網で濾すと、濡れた煙のカスから湯気が出ているのですが、これは発酵している現象によって出る湯気です。なので、ここから出る煙までも肥料として使うことが出来ます。ほうじ茶の製造で最終的に出るゴミは茶袋くらいです。お茶とは本当に不思議な生き物です。PH3の土壌でも生きられる生命力がある。」

 

山梨宏之「では実際に手作業で焙煎をやってみましょう。」

山梨宏之「左上が1番茶。ならしという作業をした時に手に入るもので、みるい芽と硬い葉が混じっています。みるい芽はこれから伸びようとしていた芯だから、炒られると一気に伸びる。右下が秋番茶。これはほとんどが硬い茶葉です。炒っても硬いままで、あまり膨れません。」

分量は3グラムずつ。

火にかけます。

これが一番茶を焙煎したものになります。一般的に茶の茎の部分が膨れ上がります。こうしてみるとよくわかりますね。

これが秋番茶を焙煎したものです。それではテイスティングをしてみましょう。

左側上が一番茶煎茶、左側下が一番茶ほうじ茶。

右側上が秋番茶煎茶、右側下が秋番茶ほうじ茶。

―「1番茶のほうじ茶は、うまそうな香ばしい感じがします。秋番茶ほうじ茶は甘味と香ばしさが強いように感じます。」

山梨宏之「一番茶に多く混ざっている柔らかくみるい芽がタンパク質、おこぼれがアミノ酸の旨味成分です。秋番茶に多い硬い葉は強く炒れば糖が出ます。だから甘い。ちなみに深蒸し茶が甘いというのは深く蒸すことで糖が出やすくなるからです。では今度は3つをテイスティングし比べてみましょう。

左が100グラム200円。

真ん中が100グラム500円。

右が100グラム1000円。」

―「左は甘味が強い。真ん中は甘味と旨味が感じられます。右は旨味が強いですが、甘みはあまり感じないです。真ん中が一番バランスの良い味のように感じます。」

山梨宏之「左の100グラム200円の茶葉は硬いのが多い。硬い葉は炒ると甘味が出るから甘味が強く出る。真ん中の100グラム500円は硬い葉とみるい芽が混在しているから甘味と旨味が両方出る。右の100グラム1000円の茶葉は柔らかいみるい芽が多く硬い葉が少ない。だから糖度がなく、みる過ぎて旨味ばかりが強調されます。ほうじ茶の製造で、材料に硬い葉、みるい芽など、いろんな部位が混在している番茶を利用するのは、炒ることでそのポテンシャルが活かせるからです。私達は日々その素材のポテンシャルに合わせて炒る分を変えています。」

山梨商店取締役、山梨宏之さんが見る静岡茶業界の現状

山梨宏之「世界のお茶の生産量は約700万トン。そのうちの6、7割が紅茶です。外国の紅茶は抽出する水の硬度が高いと渋味が出にくく甘味を感じやすい。日本の水は軟水なので、渋味が出やすく軟水で淹れる場合は湯冷ましをするなど工夫をして味を出していますね。日本のお茶は針形状ですが、外国茶は勾玉形状。これには日本人の技術の高さが針形状に表れています。日本の茶の総生産量は8万トン。その内の半分が急須で淹れるリーフ、もう半分がペットボトルとティーバックと粉末です。ほうじ茶の全体的な需要はペットボトル、リーフのほうじ茶、ほうじ茶ティーバック、ほうじ茶パウダーと分かれています。

茶パウダーの需要の内訳として、あるメーカーによると

一番需要が高いのがほうじ茶パウダー

二番目が玄米茶パウダー

三番目が回転ずしなどに置かれている緑茶パウダーです。

パウダーは茶殻と同じです。そもそもそんなに摂取することが出来ない。鶏ガラスープだってスープがうまいからと言って鶏ガラまで食べないでしょう。粉末は摂取できても0.5グラムまでです。茶殻だから2グラムも飲めない。つまりリーフの4分の一の量で済む。茶パウダーの使用用途は幅広く、現在ではエアコンの匂い消しにほうじ茶パウダーが使われたりもする。ちなみに回転寿司の粉末茶ですが、あれの美味しい飲み方はかき混ぜて上澄み液を飲むことです。その部分が美味しいと思いますよ。」

―「匂い消しにもお茶のパウダーが使われるわけですか。ペットボトルは勿論のこと粉末までお茶の使用用途は幅広いのですね」

山梨宏之「急須でお茶を淹れる場合はせいぜい2~3煎になりますが、ペットボトル用のお茶を抽出する場合は5~6煎以上に渡って根こそぎ抽出させる技術が出来ているのです。その方法はマニュアル化され、どこであろうとも均一な品質で根こそぎ抽出が出来る。一般的には硬度0の水にすると最も抽出しやすいと言われています。技術革新によるペットボトルのお茶の根こそぎ抽出製法やパウダー製法など、少量の茶葉でも十分活用することが出来るようになりました。つまり、全体として量をちょっと作れば足りてしまうということです。現状は6万トンもあれば足りてしまう。結果として供給過多になり茶価が下がってしまう。」

山梨宏之「お茶の歴史は日本では約800年です。初めてお茶の痕跡が発見されたのは鎌倉時代。このことから見るに聖一国師たちが日本にお茶を持ち込んだのは確かなようです。1837年に永谷宗円が蒸して作る製法を編み出した。それまでは番茶が多かったようです。つまり800年前からほうじ茶は飲まれていたのです。私も昔山村で働いていたが、ヤカンの中に火で炙った茶葉を入れてお茶にして飲んでいた。最近はもう急須で淹れた良いお茶の味ではなく、ペットボトルやティーバック、粉末茶が好まれる傾向がある。悲しいことですが、品質的レベルが高いお茶がなくなってきているのです。全体として番茶に戻っている。現在よりも昭和の初めの方が皆ハイレベルなお茶を飲んでいただろうね。皮肉にも人類が培った技術によって文化的には逆行しているように思います。」

―「本当に良質なお茶を見抜けない茶商も出てきていて、現在は「良質」を数値化してしまう傾向もあると聞いています。それほど人々の感覚自体が変わってきているのですね。」

山梨宏之「高級なお茶を作っても売れないから安いお茶を作る、というように生産家のシフトが起こっている。今後の生産者は「高級」か「格安」の二つしか残らないかもしれない。一般的なお茶を作る茶農家が生き残るのは難しいかもしれない。今後も根こそぎ抽出の技術は発展し、良いとされる煎茶はどんどん減っていくでしょう。それが貴方の廻ってきたような素晴らしい茶農家を苦しめている背景なのです。」

人工香料を一切使用せずにフルーティな香りを生み出した日本発の酵素発酵茶La香寿は世界緑茶コンテンストで金賞を受賞。世界で名品として認定された

山梨宏之「葉をマイナス80度に凍らせると酵素が休む。それを常温に戻すと動き出す。そして100度で酵素は活動を停止する。常温の水に凍らせた生葉を投入してミキサーで砕いてペースト状にします。それを出来上がったお茶にかけると細胞膜の中に浸透していき、細胞膜の中に入って酵素が香りや糖を切っていくことで香りや甘みが出る。通常ほうじ茶は熱でパンッて弾けさせて一気に糖や香りを一瞬で開放する。La香寿ではその工程が酵素によって、ゆっくりとなされていくというわけです。なぜLa香寿と名付けたか、これは若い女性が楽しんでくれるように願いを込めてフランスの女性名詞の定冠詞「La」をつけました。これは後で知ったことなのですが、中国の西南部のお茶の原産地ではお茶のことを「La」と呼ぶそうです。」

山梨宏之「誰かに特許を取られてやれなくなると困りますので、La香寿の製造方法の特許は取ってあります。ただこれは他人がやらないように特許をとったものではなく、自分が自由にやれるように取った特許なので公開していますよ。」


世界でも認められたLa香寿は山梨商店の茶葉販売店BABYLEAF、または楽天SHOPから買う事も出来ます。静岡茶業界では知らない人はいないほどの老舗製茶問屋山梨商店の名産品は味わう価値があります。

以上、編集長による山梨商店のレポートでした。

お店の情報~山梨商店~

住所 〒420-0071静岡県静岡市葵区一番町80
ホームページ http://yamacha.jp/
電話番号 054-252-0503
電子マネー・カード決済
営業時間 8:00~17:00
定休日 土日
駐車場 あり
アクセス バスの場合

藁科線[往路日向] 谷津ターミナル行
安西四丁目(バス)

車の場合

東名静岡インターより車で15分

 

お店の情報~Baby Leaf~

住所 〒420-0803 静岡県静岡市葵区千代田6-17-24
ホームページ https://www.rakuten.co.jp/babyleaf/
電話番号 054-263-1710
電子マネー・カード決済
営業時間 10:00~17:00
定休日 土日
駐車場
アクセス バスの場合

JR静岡駅よりしずてつバス 「こども病院線」乗車
「千代田七丁目東部体育館入り口」下車後、徒歩約10分

車の場合

千代田I.Cより流通センター通り経由約5分
新静岡I.Cより約10分

関連記事