和CAFE茶楽の魅力を紐解く—静岡最古の日本茶カフェで心安らぐ時間を【静岡県・静岡市】

静岡県清水区興津、餡子(あんこ)作り発祥の地として知られる場所に、承久寺町の八幡神社があります。この神社には「製餡発祥の碑」が立てられており、機械で餡を作る技術を確立した北川勇作氏と内藤幾太郎氏が祀られています。今回取材させていただいたのは、そんな伝統的な餡子を使った甘味と、美味しいお茶を楽しめるお茶カフェ「茶楽(ちゃらく)」です。「茶楽」は、静岡で最も歴史のあるお茶屋が営むカフェで、茶の伝統的な楽しみ方はもちろん、ワークショップの開催やフルーツ静岡茶、お茶サングリア作りなど、日本茶の新しい価値創造にも積極的に取り組んでいます。
この記事では、「茶楽」のカフェメニューの魅力やお茶の楽しみ方について、専務取締役の山梨裕介さんへのインタビューを交えてお伝えします。
目次
茶楽とは
茶楽は、1925年創業の老舗茶問屋「㈲山梨商店」が運営する日本茶カフェです。山梨商店3代目当主の山梨晴正さんが、「ペットボトルのお茶が主流になりつつある中、急須で淹れるお茶の美味しさを若い世代にも知ってほしい」という想いから、2005年に開業しました。
茶楽は、2025年3月に20周年を迎え、静岡県で最も古いお茶屋が切り盛りする日本茶カフェとして、多くの支持を集めています。
店内は、漆喰壁や天竜杉などの木のぬくもりに包まれた、町屋風・古民家風の雰囲気です。著名人も数多く訪れ、そのサインが飾られています。製茶問屋ならではの豊富な種類のお茶が取り揃えられており、お茶カフェとして利用するのはもちろん、お茶や茶器を購入することもできます。
県内外から訪れる多くの利用客に対して、四季折々のお茶の魅力を伝えるお茶体験教室を開催するなど、お茶の普及活動にも積極的に取り組んでいます。
▲お茶のセミナーを担当する専務取締役、山梨裕介さん
茶楽のカフェメニュー
茶楽では、茶問屋ならではの自慢の静岡茶をはじめ、和の食材をふんだんに使用したランチや、こだわりのパフェ、抹茶スイーツを提供しています。今回は、茶楽の人気カフェメニューをご紹介します。
メニューを注文する前には、各茶葉のサンプルを提示していただき、茶葉の香りや形状を確認しながら、丁寧にお茶の説明を受けることができるので、納得のいく形で自分好みのお茶を選ぶことができます。
▲茶楽では、季節ごとに深蒸し茶から浅蒸し茶まで、県内産のおすすめのお茶を4~5種類用意しています。
茶楽では、お茶を淹れるお湯を鉄窯で沸かしています。鉄窯で沸かすことで、雑味が取り除かれ、口当たりの柔らかいお湯が、お茶の味をより引き立ててくれます。
▲年季の入った鉄窯は、なんと23年以上使用し続けているそうです。
煎茶(手摘みさえみどり)とフルーツあんみつのセット
茶楽のあんみつは、開店当初から人気のメニューです。王道の和スイーツであるあんみつを、抹茶アイスや、抹茶とほうじ茶の寒天で仕上げています。あんこ、寒天、白玉、求肥(ぎゅうひ)もすべて手作りです。
手間暇かけて一つ一つ丁寧に人の手で摘まれる手摘み茶は、さまざまな部位が混入しないため、雑味のない味わいのお茶に仕上がります。そんな手摘み製法の「さえみどり」は、力強く澄んだ旨味が口の中に広がり、感動的な一杯です。なかなか巡り合えない貴重なお茶です。
ほうじ茶サングリアと抹茶おしるこのセット
春夏限定の静岡茶サングリア(ほうじ茶サングリア)は、格式高いお茶も美味しいですが、コーヒーや紅茶のようにもっとカジュアルにお茶を楽しんで欲しいという思いから生まれました。
サングリアをイメージしたフルーツたっぷりの静岡茶サングリアは、混ぜると色が変わる仕掛けになっており、味も見た目も楽しめます。
▲かき混ぜると黄色からピンクに色が変わります。
抹茶おしるこは、静岡県産の高品質な抹茶をたっぷりと使用しており、濃厚でありながらもエグみがなく、スッキリとした味わいです。手作りの餡子は、北海道産の新鮮な小豆を半日かけてじっくりと炊き上げて作り、甘すぎない塩梅に仕上げています。
「餡子の町興津」にある日本茶カフェ茶楽ならではの逸品です。
カフェメニューには、各お茶の特徴が書かれたカードが添えられています。お茶を楽しんでほしいという茶楽の心遣いが嬉しいですね。
抹茶ケーキ~茶楽とラ・ローザンヌとのコラボスイーツ~
興津の洋菓子の銘店「ラ・ローザンヌ」と茶楽がコラボして作り上げた抹茶ケーキ。材料と作り手の双方が高いレベルで出会ったからこそ生み出される高品質な抹茶スイーツは、人気が高くすぐに売り切れになってしまいます。
茶楽では、季節が変わるたびにベースとなるお茶やフルーツなどの組み合わせを変更し、さまざまなメニューを用意しています。年末年始には限定の新春パフェセットも提供しています。
茶楽のフルーツ静岡茶とは
フルーツ静岡茶とは、和カフェ茶楽開業15周年を記念し静岡市と共に作り上げた静岡特製のお茶のお土産てす。
老舗製茶問屋が腕を振るって仕上げたお茶に、無添加無糖の静岡県産ドライフルーツの天然の甘さがゆっくりと馴染んでいく様は、まるでティーペアリングを体験しているかのようです。
フルーツ静岡茶は雑誌やテレビで多く紹介されており、贈り物としてもオススメです。
季節ごとに限定のフルーツ静岡茶も取り揃えており、夏季には静岡市駿河区の「長田の桃」を使用した静岡ピーチ×緑茶が発売されています。ホットでも水出しでも、フルーツ静岡茶は美味しく楽しめます。
HOTでも水出しでもフルーツ静岡茶は美味しく楽しめます。
インタビュー:屋号「茶楽」に込められた想いと静岡で最古のお茶カフェになるまで
山梨商店の専務取締役山梨裕介さんにお話を伺いました。
茶楽が静岡で最も古いお茶カフェになるまで
–和カフェ茶楽について教えてください。
2005年に日本茶カフェ「茶楽」は開店しました。店内にはジャズやボサノバが流れる、昔懐かしい喫茶店スタイルの空間があります。コーヒーや紅茶ではなく、お茶を楽しむ。そうした時間や空間を体験していただき、お茶の楽しさを再発見してもらえるような場所でありたいと思っています。
おかげさまで「茶楽」は20周年を迎え、気づけば静岡で最も古いお茶カフェの1軒となりました。
–20周年というのは凄いですね。これまでにどのような苦労がありましたか?
開店当初は、お茶カフェというものへの認知度が低く、「どうしてコーヒーを置かないんだ」「お茶でお金を取るのか」といった声をいただくこともありました。中には、お怒りになって帰ってしまうお客様もいらっしゃったようです。
それでも、地道に営業と改善を繰り返しているうちに、徐々にメディアに取り上げていただき、県内外からのお客様が少しずつ増えていきました。
お茶の面白さを体験してほしいとの想いから始めたお茶体験教室
当初、私はコーヒーを取り扱う仕事に就いていました。その後、紅茶や烏龍茶、緑茶、ハーブティーなど、世界中のお茶を取り扱う専門店に勤務し、実家の茶業を継いで現在に至ります。
茶業に携わり始めて最初に感じたのは、「お茶は種類が豊富だけれど、専門的すぎてその魅力がうまく伝わっていないな」ということでした。同じようなパッケージのお茶が並んでいて、お客様は価格を基準にお茶を選んでいることが多い。その点がずっと気になっていました。
静岡には多くの茶産地があり、産地ごとにお茶の味も全く異なります。いろいろなお茶を飲み比べ、好みの茶産地を見つけるだけでも面白い体験になると思いますが、実際にはそのような機会はあまりありませんでした。
一方、東京都内の紅茶店では、ダージリン紅茶の87茶園の飲み比べなどのイベントが開催されており、私はそのようなお茶の面白さをお客様にも体験していただきたいと感じていました。そこで、県内の各茶産地のお茶を飲み比べるイベントを始めたのです。それが現在の体験教室の原点となります。
お茶の体験教室は常時、人数に応じて受付をしています。また、定期的に関東や名古屋方面にいるお得意様向けにも体験教室を開催しています。内容は、お茶の飲み比べから、フルーツティーを作る教室、ハーブブレンド教室など、季節によって異なるテーマで開催しています。(現在は休業中。開催の案内や申し込みはSNSにてご案内しています。)
茶楽の名の由来と静岡の製茶問屋として肝に銘じていること
父が名付けた「茶楽」という屋号には、単に「お茶を売る、買っていただく場所」ではなく、お客様に「お茶の楽しさを体験していただく場所でありたい」という想いが込められています。私はこの名前がとても気に入っています。
私自身、ただ美味しいお茶を作り、売るだけではなく、「お茶の楽しさ、お茶を楽しむ時間や空間、その楽しみ方」を発信していくことが、茶業に携わる人間としての使命だと考えています
茶楽では、急須とお茶を一緒に提供し、2煎目はご自身で淹れていただいたり、このお茶がなぜ美味しいのかをご紹介したりしています。時には、静岡茶サングリアやフルーツ静岡茶のように、飲み方の視点を少し変えたメニュー開発も行っています。
これからも現代の静岡の製茶問屋として、日本茶カフェ「茶楽」やお茶の体験教室を通じて、お客様とともに日本茶の新しい価値を創造していきたいと願っています。
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茶楽の情報・購入方法・イベント情報
住所 | 〒424-0205 静岡市清水区興津本町158-1 |
ホームページ
購入方法 イベント情報 |
http://chaluck.jp/
お茶イベント開催期間中は 外国人のお客様へのご対応イベントに関しましては |
SNS | https://www.instagram.com/chaluckwacafe/?hl=ja |
電話番号 | 054-369-2301 |
電子マネー・カード決済 | 対応済み |
営業時間 | ランチタイムは11:30~14:00 カフェメニューは10:00~17:00(ラストオーダー16:30) 茶販売は9:00~18:00 |
定休日 | ホームページのカレンダーで確認 |
駐車場 | あり(8台以上) |
アクセス | JR東海道本線「興津駅」下車 徒歩約10分 東名清水インターを降り静清バイパスを沼津方面へ 新幹線のガードを越し、清見寺ランプウエイで降り直進。 マックスバリュ興津店の交差点を右折し次の信号の左側。 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |