1万円超えのノンアルコール飲料!高級ボトルティーと日本酒の新ペアリング論【TOKYO SAKE DEPARTMENT・東京都】【長島酒屋店・静岡県】

日本茶は、急須やティーバッグ、ペットボトルなど、さまざまな形で楽しむことができます。近年、新たなスタイルとして注目されているのが「ボトルティー」です。なかでも、1本1万円以上する高級ボトルティーは、ノンアルコールでありながら、その鮮やかな旨味と香りで多くの人を魅了しています。
実は、この「旨味」と「香り」という要素は日本酒との相性が非常に良く、ペアリングとしても楽しむことができるのです。では、高級ボトルティーと日本酒のペアリングは成立するのでしょうか。ノンアルコールとアルコールという異なるジャンルの組み合わせを、実際に検証してみました。今回は、東京・銀座の日本酒BAR「Tokyo Sake Department」と、静岡の「長島酒屋店」にご協力いただき、高級ボトルティーと日本酒のペアリングを試しました。
この記事では、その検証結果をお届けします。
目次
茶が驚きに変わる瞬間──1本1万円超の高級ボトルティー体験
高級ボトルティーとは、生産家から厳選して仕入れた茶葉を、時間をかけて丁寧に抽出し、瓶詰めしたノンアルコール飲料です。価格は1本あたり5,000円から10万円以上と幅広く、現在、市場には40種類以上のボトルティーが発売されています。
主な製造メーカーには、静岡のBenefitea株式会社や、「ななや」を運営する丸七製茶のボトルティーブランドCRAFT BREW TEA、神奈川のロイヤルブルーティー株式会社があります。
▲Benefitea株式会社
▲丸七製茶のボトリングティーCRAFT BREW TEA
一本1万円を超える高級ボトルティーは、製造に約1週間を要するため、そのほとんどが受注生産のみとなっています。
▲高級ボトリングティーの一例として、茶通亭の「白葉ほん山」、高柳製茶の「牧之原雫茶」、薮崎園の「玉露」、山平園の「極芽」などがあります。
私が初めて高級ボトリングティーに出会ったのは、茶農家・松島園で試飲させていただいた「Kawasaki」という商品でした。その味わいは鮮烈な旨味と凝縮された香りが特徴で、これまでに経験したどの飲み物とも異なる、新しいジャンルのノンアルコール飲料だと感じました。


お茶が日本酒の隣に並ぶ日──日本酒愛好家の味覚を刺激する、新提案
高級ボトルティーの鮮烈な旨味は、一度体験する価値があります。ただし、価格が高いため、気軽に楽しむのは難しいかもしれません。
そこで、もっと手軽に楽しめる方法を模索する中で、日本酒とのペアリングというアイデアにたどり着きました。(ペアリングとは、異なる食べ物や飲み物を組み合わせ、新たな魅力を引き出すことです)
私自身も日本酒を愛飲しており、これまでさまざまなペアリングを楽しんできました。その経験から、高級ボトルティーの旨味が日本酒と絶妙にマッチするのではないかと感じています。
▲ナッツ、チョコレート、オリーブ、レバーパテなど、日本酒に合うとされる食べ物は多種多様です。
また、これまで数多くの日本酒愛好家と出会ってきた中で、「美味しい日本酒が飲めるなら、いくらでもお金を払う」と語る方は少なくありません。しかし、「美味しい日本茶が飲めるなら、いくらでもお金を払う」という人には、まだ出会ったことがありません。
このように考えると、日本酒のお供に高級ボトルティーを取り入れることで、日本酒愛好家の方々に新たな楽しみを提供できるかもしれません。
少し変わった試みかもしれませんが、アルコール飲料である日本酒と、ノンアルコール飲料である高級ボトルティーをペアリングすることで、どんな味わいのハーモニーが生まれるのか——ぜひ試してみる価値があると思います。

静岡の高級ボトルティーと銀座の日本酒BARが出会う夜 ― 「お茶×日本酒」未知なるペアリング検証
しかし、ペアリングの検証は、実際に多様な味わいの日本酒を合わせてみることでしか確かめられません。個人では、そうした多くの種類の日本酒を取りそろえること自体が難しいのが現実です。
そこで今回は、東京・銀座にある日本酒BAR「Tokyo Sake Department」にご協力いただきました。このお店では、数十種類に及ぶ美味しい日本酒をはじめ、生酒や活性発泡酒、古酒など、さまざまな日本酒が取り揃えられています。

日本酒BARを経営するのはティーヤさん。「利き酒師」や「日本酒学講師」の資格に加え、日本酒資格の中でも特に難易度が高い「酒匠」の資格も取得されています。(「酒匠」の資格保有者は日本に約250人しかいません。)

またティーヤさんは、日本酒BARの経営だけでなく、日本酒好きが集まるコミュニティ「東京日本酒部」も運営しており、その部員数は800名を超えています。さらに酒蔵や酒屋と協力し、「蔵人体験」「杜氏体験」「お酒の学校」などのイベントを企画するなど、精力的に活動しています。
その取り組みは、NHKの「首都圏情報ネタドリ!」をはじめ、多くのメディアにも取り上げられています。
▲東京日本酒部の主催するBBQ大会~日本酒は澤乃井縛り~
今回は、日本酒BAR「Tokyo Sake Department」をティーヤさんと私の2人で貸し切り、店内にある日本酒を使って高級ボトルティーとのペアリング検証を行います。ペアリングの成否は、「酒匠」としてプロの味覚を持つティーヤさんが判断します。

検証のために用意した高級ボトルティーは4本。いずれも静岡で実際に入手可能なものです。
茶通亭「白葉ほん山」~21600円~
高柳製茶「牧之原雫茶」~20000円~
カネス製茶「香駿」~10800~
他「息吹」の無料サンプル品。
合計52400円。
いずれの商品も受注生産のため在庫が少なく、入手には時間がかかります。「息吹」については在庫がなかったため、販売店である和茶倶楽部様に今回の企画を説明したところ、ご厚意によりサンプル品をご提供いただけることになりました。
この4本の高級ボトルティーと、日本酒BAR「Tokyo Sake Department」で取り扱う日本酒のペアリングが成立するのか。実際に試していきたいと思います。

酒匠とお茶が出会う実験室 ― 高級ボトルティー、その真価を解き明かす
(ここからはペアリングの検証の様子をお届けします。)
それでは、ペアリングの検証を始めましょう。まず初めにお伝えしておきたいことがあります。実は、これまで高級ボトルティーを飲んだ経験がありません。そして、今回ご用意いただいた高級ボトルティーの価格は、私の想定を大きく超えるほど非常に高価です。
このように高価なお茶に合わせるには、日本酒も同じく高価格帯のものを選ばなければ、ペアリングがうまくいかない可能性があります。そのため、期待に応えられないかもしれません。
–構いません、やってください。
責任の重さを感じます。場合によっては再度スケジュールを調整する必要があるかもしれません。
–どのような結果になっても構いません。検証を続けてください。
承知しました。それではまず、高級ボトルティーの味と香りを分析していきましょう。
▲高級ボトルティーをワイングラスに注ぎ、その香味を細かくチェックします。まず、グラスの中のボトルティーの温度をレーザー温度計で測定し、温度による味の変化も観察します。
カネス製茶様の香駿:干し草のような独特の香りとともに、旨味の中にしっかりとしたタンニンを感じます。
高柳製茶様の牧之原雫茶:甘栗を思わせる甘みが口いっぱいに広がり、苦味や渋みはほとんど感じません。集中して味わうと、茶豆のような甘みもほのかに感じられます。
この2つのボトルティーは、おそらく旨味の強い系統の日本酒とよく合うでしょう。
カネス製茶様の息吹と、茶通亭様の白葉ほん山。色鮮やかなこの2本は、トウモロコシを思わせる香りがします。味わいは――美味しい!これは驚きですね。生酛系の日本酒や古酒との相性が良さそうです。
これが高級ボトルティーですか。実に興味深いですね。水割りやロックで楽しむのも一案ですし、サンプルサイズでさまざまなブレンドを試すのも面白いでしょう。さらに、瓶の包装を美しく整え、色でグラデーションをつけることで、見た目の楽しさも演出できます。
カクテルとして楽しむのも良いかもしれません。

▲木戸泉の古酒。熟成期間に応じて飴色が濃くなっていく様がグラデーション模様に並べられており、見た目でも楽しめる。
高級ボトルティーと日本酒――良いペアリングが生まれそうな予感がします。まずは、木戸泉の日本酒と合わせてみましょう。
(そして、さまざまな高級ボトルティーと日本酒を試し、ペアリングの可能性を探っていきました。)

▲片っ端から高級ボトルティーと日本酒を飲み合わせてペアリングを検証しました。
結果発表!酒匠が導いた答え。高級ボトルティーと日本酒、魅惑のペアリング誕生
そして、今回の検証で、高級ボトルティーと日本酒のペアリングが2通り成立しました。
1つ目のペアリングは、「茶通亭~白葉ほん山~」と「木戸泉酒造の日本酒~古今~」の組み合わせ。

2つ目のペアリングは、「茶通亭~白葉ほん山~」と「泉橋酒造の日本酒~いずみばし生酛仕込み~」の組み合わせです。

こうしたペアリングを成功させるためには、入手しやすい日本酒を選ぶことが大切です。入手困難な日本酒とのペアリングが成立しても、手に入らなければ意味がありませんからね。
現在、弊社の日本酒の在庫には旨味の強いものが少ないのですが、高級ボトリングティーは旨味の強い日本酒との相性が良いと考えられるものが多いのではないかと思います。
–なるほど。実は今回の検証中に気になったことがあります。それは、多くの茶農家が「お茶は採れた茶畑の土地の水で淹れるのが一番おいしい」と話していた点です。もしかすると、静岡の日本酒と静岡のお茶を組み合わせることで、より良い結果が得られるかもしれませんね。
▲膨大なパターンのペアリング検証を行った後の様子。
確かに、日本酒も蔵元がこだわりの井戸水を使用するなど、水には特別な配慮がありますからね。
–この結果を持ち帰り、静岡のお茶と日本酒で再度検証する必要がありそうです。非常に興味深い結果が得られました。ティーヤさん、ご協力ありがとうございました!
日本茶×日本酒×チーズ。静岡・長島酒屋店で見つけたトリプルペアリング!
後日、静岡で再び、高級ボトルティーと日本酒のペアリング検証を行いました。協力してくださったのは、静岡市葵区に店を構える「長島酒屋店」。二代目店主の長島隆博さんは、大学卒業後にフランスへ渡り、2年半の留学生活を送りました。その間、ボルドー大学醸造研究所でワインテイスティングのコースを受講し、資格(通称DUAD: デュアッド)を取得しています。
店内には日本酒や地酒、ワイン、さらにはチーズなどの肴まで幅広く取り揃えられていますが、長島さんは自らの舌で確かめ、「良い」と判断したものだけを厳選して提供しています。このこだわりこそが、長島酒屋店の魅力のひとつです。


今回の検証で用意した高級ボトルティーは、前回の検証でペアリングが成立しなかった「高柳製茶〜牧之原雫茶ゴールド」と「カネス製茶〜香駿」の2本。ペアリングの相手は静岡の日本酒に限定しました。
長島さんも「お茶とお酒のペアリング!?」と驚かれていましたが、そこはさすがのプロ。見事に結果を出してくださいました。今回、新たに2種類のトリプリング(3つのアイテムを組み合わせたペアリング)が発見されました。
1つ目のトリプリング
「三和酒造〜臥龍梅 純米大吟醸 無濾過生貯原酒 愛山開壜十里香」
「高柳製茶〜牧之原雫茶ゴールド」
「チーズ〜さくらのアフィネ〜」
以前、森内茶農園を取材した際に、森内さんが「日本茶とチーズは相性が良い」と話していました。一方で「日本酒とチーズ」も定番の組み合わせとして知られています。そこで「日本酒×日本茶×チーズ」のトリプルペアリングを検証したところ、見事に成立しました。

2つ目のトリプリング:
「カネス製茶〜香駿〜」
「青島酒造〜喜久酔〜」
「杉山農園〜わさび漬け〜」
こちらのトリプリングも素晴らしい結果となりました。日本酒とわさび漬けは定番の組み合わせですが、「カネス製茶〜香駿〜」を加えることで、それぞれの味わいが互いを引き立て合い、より深く長く楽しめる組み合わせに仕上がっています。
長島さん、ご協力ありがとうございました!

1万円超えのノンアルコール飲料!高級ボトルティーと日本酒の新ペアリング論―感想―
今回試した高級ボトルティーと日本酒のペアリングには、とても興味深い可能性が感じられました。高級ボトルティーは非常に高価で、手に入れるにはハードルが高い商品です。
しかし、その味わいは、急須や氷出しなどの方法で茶葉から時間をかけて丁寧に抽出すれば、ほぼ再現することができます。こうしてリーフ茶から高級ボトルティーに匹敵する旨味と香りを引き出した一杯には、日本茶の新たな需要を生み出す可能性が秘められているのかもしれません。


また、日本茶を日本酒のチェイサーとして提供するのも興味深いアイデアです。冷酒には冷茶を、熱燗には温かいお茶を合わせることで、多彩な楽しみ方が生まれるでしょう。
さらに、茶殻を柚子味噌や七味で味付けし、日本酒のおつまみとして活用するのも、きっと素晴らしいペアリングを生み出すはずです。

ただし、お茶は農作物であり、毎年まったく同じものが収穫されるわけではありません。ペアリングを楽しむには、収穫ごとに変化する味わいを見極める精度の高い味覚と、広範な知識を持つ専門家の選定が必要だと感じました。
以上、「1万円超えのノンアルコール飲料!高級ボトルティーと日本酒の新ペアリング論」でした。
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Tokyo Sake Departmentの情報
| 住所 |
東京都中央区銀座4-14-2XCD銀座ビル5F |
| ホームページ | https://www.tokyosake.net/tokyosakedept/ |
| 電話番号 | 050-5328-5136 |
| 電子マネー・カード決済 | 現金不可。カード、電子マネーのみ可。 |
| 営業時間 | 18:00〜23:00(LastOrder22:30);禁煙 |
| 定休日 | 日曜日(ホームページにて確認) |
| 駐車場 | なし |
| アクセス | [ 地下鉄 ] 東銀座駅 徒歩2分、銀座駅徒歩8分(銀座線、日比谷線、丸ノ内線) [ J R ] 有楽町駅 徒歩10分 |
長嶋酒屋店の情報
| 住所 |
〒420-0804 静岡県静岡市葵区竜南1丁目12-7 |
| ホームページ | http://nagashimasaketen.com/ |
| 電話番号 | 054-245-9260 |
| 電子マネー・カード決済 | 対応済み |
| 営業時間 | 10:00~20:00 |
| 定休日 | 火曜日 |
| 駐車場 | 6台 |
| アクセス | バスの場合 [しずてつジャストライン]バス亭:竜南1丁目より徒歩1分車の場合 静岡駅より15分 |
| この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
| 経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~25年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
| 英訳担当 | Calfo Joshua |
| 経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |
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