玉露とは?特徴や産地、おいしい淹れ方まで現地取材をもとに解説

玉露とは、日本茶の中でも最高峰とされる高級茶の一つです。名前は知っていても、特徴や味わい、煎茶との違い、淹れ方まではよく分からないという方も多いのではないでしょうか。日本茶専門WebメディアOCHATIMESでは、日本三大玉露産地の一つとして知られる静岡県藤枝市・朝比奈地区を訪れ、玉露づくりで知られる薮崎園を取材しました。
この記事では、玉露の特徴や栽培方法、味と香り、代表的な産地、美味しい淹れ方まで、現地取材で得た経験を交えながら紹介します。
目次
玉露とは
玉露は、日本茶のなかでも緑茶に分類されるお茶の一つです。玉露も煎茶も、同じ茶の樹の葉から作られます。

大きな違いは、栽培方法にあります。玉露では収穫前の一定期間、菰(こも)や寒冷紗(かんれいしゃ)などの被覆資材で茶園を覆い、茶葉に当たる日光を遮ります。この栽培方法を「被覆栽培(ひふくさいばい)」といいます。
日光を遮って育てることで、旨味成分であるアミノ酸が多く保たれ、渋味や苦味に関わる成分の生成が抑えられます。

農林水産省では、玉露について、一番茶の新芽が伸び始める頃から20日間ほど茶園を覆い、日光を遮って育てた茶葉を原料とするお茶として紹介しています。
こうして育てた茶葉を蒸し、揉みながら乾燥させて仕上げることで、濃厚な旨味や甘味、独特の香りを持つ玉露になります。

被覆栽培で生まれる玉露の濃厚な旨味と「覆い香」
玉露の大きな特徴は、口の中に広がる濃厚な旨味と、「覆い香(おおいか)」と呼ばれる独特の香りです。一般的なお茶から想像する味わいとは異なり、出汁やスープを思わせるほど、深い旨味を感じることがあります。

また、被覆栽培によって育てられた茶葉には、海苔を思わせるような「覆い香」が生まれます。これは玉露を特徴づける重要な要素の一つです。朝比奈玉露も、濃厚な旨味や甘味とともに、海苔に似た覆い香が特徴として挙げられます。
ただし、同じ「玉露」という名称で販売されていても、香味は一様ではありません。産地、品種、栽培方法、摘採方法、仕上げ、保存期間、淹れ方によって、その味わいは変わります。
玉露は、単に「旨味が強いお茶」ではありません。通常のお茶と同じように、産地や生産者による違いまで味わえる、奥深い日本茶です。
実際に宇治玉露、八女玉露、朝比奈玉露を飲み比べてみると、それぞれに異なる個性があります。個人的な感想としては、朝比奈玉露が最も覆い香が際立っているように感じました。

玉露はなぜ高級茶なのか
玉露が高級茶とされる理由の一つは、栽培から収穫までに多くの手間と時間がかかることです。収穫前には茶園に棚を設けたり、菰や寒冷紗などの被覆資材を掛けたりして、茶葉に当たる日光を調整します。
覆いを掛ければ終わりではなく、被覆期間中も茶葉の生育状態を見ながら管理を続ける必要があります。

被覆された茶園内は、気温や湿度が変化しやすくなります。そのため、病害虫への対応を含め、露地栽培とは異なる技術と経験が求められます。
一方で、すべての玉露が手摘みで作られているわけではありません。機械で摘採される玉露もあり、栽培方法や収穫方法、品質、価格帯もさまざまです。

ただし、玉露を栽培する地域には、山間地ならではの地形を持つ茶園も少なくありません。なかには大規模な機械化が難しい茶園もあり、こうした事情が生産量の限られやすさにもつながっています。
玉露という名称だけで一律に捉えるのではなく、どこで、誰が、どのような方法で作ったものなのかに目を向けることで、その価値はより分かりやすくなります。とりわけ高品質な玉露では、収穫や選別にも多くの手間をかけます。

なかでも藤枝市が定義する「朝比奈手摘み本玉露」は、朝比奈地区の茶園で、棚の下に自然仕立てで育てた一番茶の新芽を手摘みすることを条件としています。手摘みによって収穫された柔らかな茶葉は、製茶によって針のような形に揉み上げられます。
現在では、手摘みができる人も少なくなっており、希少な取り組みとなっています。このような積み重ねが、高品質な玉露を支え、その価値を高めています。
その価値は海外でも認められており、静岡県朝比奈の東平玉露はフランスの専門店で取り扱われるなど、欧州を中心に海外からも高い評価を受けています。

一方で、アメリカなどでは、玉露がまだあまり馴染みのないお茶だという話も聞きました。玉露が持つ出汁を思わせるような旨みは、日本茶の大きな魅力である一方、地域によっては味覚になじむまで時間がかかるのかもしれません。
玉露の代表的な産地
日本を代表する玉露産地として、一般に次の3地域が挙げられます。
・京都府の宇治地域
・福岡県の八女地域
・静岡県藤枝市の朝比奈地域
それぞれ異なる土地の環境や栽培・製茶の文化を背景に、玉露づくりが受け継がれています。OCHATIMESでは、このうち静岡県藤枝市の朝比奈地区を訪れ、玉露の生産現場を取材しました。
【編集部メモ】玉露をはじめ、日本茶の味わいや品質の背景には、産地ごとの環境だけでなく、生産者の栽培や製茶への考え方があります。OCHATIMESでは、静岡県各地の茶農家を訪ね、そのお茶づくりを現地取材しています。詳しくは、茶農家の取材記事一覧をご覧ください。

日本三大玉露産地の一つ、朝比奈玉露
朝比奈地区では、室町時代にはすでに茶が栽培されていたと伝えられ、明治30年ごろには玉露づくりが行われていました。OCHATIMESでは、この朝比奈地区で玉露や抹茶を生産する薮崎園を取材しました。
朝比奈地区は、朝比奈川流域に広がる山間地域です。川沿いの肥沃な土壌に加え、霧や靄が発生しやすく、茶園に適度な湿度をもたらします。春から初夏にかけても比較的涼しく、被覆栽培に適した環境が整っています。


ただし、自然条件だけで高品質な玉露が作られるわけではありません。薮崎園への取材では、被覆の時期や方法、摘採する茶葉の見極め、製茶、仕上げなど、長年受け継がれてきた技術と生産者の経験が品質を支えていることを伺いました。
特に印象的だったのが、収穫した茶葉をすぐに仕上げず、一定期間寝かせる「熟成」の考え方です。
一般に新茶は、春に収穫された若々しい香りや瑞々しさが注目されます。一方、薮崎園では、玉露については新茶特有の青々しさをそのまま生かすのではなく、荒茶の状態で寝かせることで、玉露に求められる深い香りや味わいを引き出しています。

時間の経過とともに茶葉の状態を見極め、適切な頃合いで仕上げる。その考え方は、収穫された年や熟成期間によって表情が変わるワインにも通じるものがあります。
また、薮崎園で伺った範囲では、朝比奈地区では現在も、被覆に使う菰(こも)を作る技術が受け継がれているとのことでした。


朝比奈玉露の産地としての特徴や、薮崎園の玉露づくりについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
日本三大玉露の地・朝比奈から世界へ。静岡・薮崎園の挑戦【朝比奈玉露・抹茶】
玉露のおいしい淹れ方
玉露は、高温のお湯で一気に抽出するのではなく、低めの温度のお湯で時間をかけて旨みを引き出すお茶です。
基本的な淹れ方は、次のとおりです。
・茶葉:約5g
・湯温:約50〜60℃
・抽出時間:約1分30秒〜2分
まず、急須と茶碗にお湯を注ぎ、茶器を温めながら湯温を下げます。適温になったお湯を茶葉に注いだら、茶葉を揺らさず、静かに待ちます。


最後の一滴まで注ぎ切ることで、玉露の旨みをしっかり味わえます。複数の茶碗に注ぐ場合は、濃さが均等になるように少量ずつ注ぎ分けます。

藤枝市が紹介する玉露の淹れ方では、より低い温度のお湯を使い、少量のお湯でじっくり抽出する方法も示されています。茶葉の量や湯温、抽出時間は、茶葉の種類や好みによって調整するとよいでしょう。
一煎目では、玉露ならではの濃厚な旨みや甘みをじっくり味わいます。二煎目、三煎目では、湯温や湯量、抽出時間を少しずつ変えることで、一煎目とは異なる香味を楽しめます。
また、手摘みで収穫された柔らかな玉露では、飲み終えた茶葉にポン酢や鰹節、塩などを添えて食べる楽しみ方もあります。


玉露には基本的な淹れ方がありますが、茶葉の量や湯温に一つだけの正解があるわけではありません。まずは生産者や販売店が勧める方法で淹れ、その後、自分の好みに合わせて調整していくのも、玉露の楽しみ方のひとつです。
玉露の淹れ方を競うコンテスト「朝比奈手摘み本玉露 淹れ方グランプリ」に実際に参加
藤枝市では、朝比奈玉露のおいしい淹れ方を競うコンテスト「朝比奈手摘み本玉露 淹れ方グランプリ」も開催されています。参加者は小学生から大人まで幅広く、私自身も参加したことがあります。

コンテストでは、茶葉とお湯は会場で用意されます。茶器は会場で借りることも、自分で持ち込むこともできます。同じ茶葉とお湯を使っても、淹れる人によって仕上がる味は異なります。
私も参加前には生産者のもとを訪れ、玉露の淹れ方を教わり、自宅でも何度も練習しました。十分に準備して臨みましたが、本番では思うように味を整えられず、結果は予選敗退。決勝に残った参加者の中には、中学生の姿もありました。

この経験から、朝比奈玉露は茶葉そのものだけでなく、淹れ方によっても味わいが大きく変わるお茶だと実感しました。少しの湯温差、抽出時間、注ぎ方の違いが、味にはっきりと表れます。
朝比奈玉露を現地で味わえる場所
玉露の特徴をより深く理解するには、産地を訪れ、実際に茶器を使って淹れてみることもおすすめです。
玉露の里
藤枝市岡部町にある「玉露の里」では、朝比奈の山々と茶畑に囲まれた環境の中で、玉露を楽しむことができます。

施設内の「茶の華亭」では、地元の食材を使った料理のほか、玉露や抹茶を使ったスイーツも提供されています。日本庭園内にある茶室「瓢月亭」では、落ち着いた空間で朝比奈玉露を味わえます。
玉露の里で楽しむ、抹茶スイーツと和食と日本庭園。朝比奈の味と風景に癒される旅【静岡県・朝比奈玉露・抹茶】
薮崎園の玉露専門店COMO
薮崎園が運営する「COMO」は、朝比奈玉露を取り扱う専門販売店です。

生産者が手がけた玉露を実際に手に取り、産地や商品の違いを知ったうえで購入できます。朝比奈玉露を自宅で楽しみたい方にとっても、産地をより身近に感じられる場所です。
玉露を知るには、説明を読むだけでなく、実際に味わってみることが一番です。
最初は低い温度のお湯でゆっくりと淹れ、一煎目から三煎目までの変化を味わってみてください。これまで抱いていた「日本茶」の印象とは異なる、玉露ならではの奥深い世界を感じられるはずです。
| この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
| 経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~25年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |









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