静岡茶屋巡り~茶町KINZABRO~

OCHA TIMES編集長
静岡茶屋巡り~茶町KINZABRO~

しずおか・茶の町コンシェル会長、ティー・マエストロ前田富佐男の手掛ける日本茶カフェ。

この店を経営する前田金三郎商店三代目当主、前田富佐男さんの経歴は以下に
・農林水産大臣賞受賞製茶問屋代表
・茶審査 きき茶八段 全国・優勝
・日本インストラクションコンクール・優勝
・TVチャンピオンお茶通王・優勝
・著書『日本茶インストラクターって何ナニなに?』

茶業に携わるプロであると同時に、エンターテイメント面でも数々の実績があります。




店内にはメディアにも取り上げられた沢山のお茶スイーツとお茶があります。どれも人気が高く、開店前に沢山準備されたスイーツは午後3時にはほとんどが売れてしまっています。
↓開店前

↓午後3時過ぎ
↓静岡市の葵プレミアムという中の市民投票の結果、静岡葵プレミアムアワード7つの中のひとつに選ばれた「茶っふる~懐かしのワッフルと静岡茶のおいしいマリアージュ~」。


茶っふるはイートインは勿論、テイクアウトにしても良いです。購入時に店員の方が移動時間を聞いてくれて、その時間も鮮度を保つように、しっかりと保冷剤を付けてくれます。川根茶味、本山茶味、岡部の玉露味、レアチーズ味の4つを買いました。食べてみると地域ごとのお茶の風味をしっかりと感じることが出来ます。

二階では和洋室22席のテーブルや座敷のイートインがあり、様々な風味の無料試飲茶11種類が楽しめる。



↓ほうじ茶ブリュレとあんみつ。

↓KINZABUROプレート(茶っふるはお好みの味を選ぶことが出来ます。今回はほうじ茶味を選びました。)

↓お濃茶アフォガード(イートイン限定スイーツ。濃茶とスイーツが合います。)

社長の前田富佐男さんにお話を聞かせていただきました。


前田富佐男「前田金三郎商店は創業から105年目、私は3代目になります。これから自分が3代目として何が必要かと考えたとき私は「お茶を極めることが大切」と思った。その為にまず目指したのが利き茶の全国大会で優秀な成績を収める事。あらかじめ全国の予選を勝ち抜いた120人で全国大会が行われ、そこで優勝しました。」

前田富佐男「しかし、単にお茶を知るだけではなく、お茶のことについて喋れないといけない。その為には日本茶インストラクターにならないといけないと思った。更に日本茶インストラクターのインストラクションコンクールにも出場することにした。これはいかにお茶のことを分かりやすく楽しく伝えられるかの選手権です。日本茶インストラクターの合格率が約2割。その2割を突破して合格した日本茶インストラクターが参加するインストラクションコンクール選手権。その全国大会で優勝することが出来ました。第一回目だったので皆すごい気合が入っていた。その後にテレビチャンピオンのお茶通王に優勝した。」


前田富佐男「これでお茶の3冠王としてお茶のエンターテイメントを極めたという前提を得られた。そういったお店なので、ここまで持ってこれたと思っている。」

↓『日本茶インストラクターって何ナニなに?』本も出版された前田富佐男さん。
(この本は「お茶の日本一って誰かいないか」と人を探していた出版社の方が、前田さんの事を探し当ててその業績の数々に感銘を受け、お茶のこの本を書くことを依頼された)

―もとは製茶問屋であるこの前田金三郎商店がなぜカフェを開こうと思ったのですか?

前田富佐男「15年ほど前に静岡大学の岩崎先生が講演会を開いてくれました。その中のプレゼンで見せてもらったパワーポイントの内容が衝撃だったのです。それは東京と神奈川の若い主婦にアンケートを取ったもので
「急須で淹れるお茶といえば○○」○○に入る言葉は何ですか?という質問でした。
そこに入る言葉として出てきた答えが「安らぎ」「くつろぎ」「リラックス」だった。
私達お茶屋の場合であれば、その答えは「リーフ茶」と答える。
ところが主婦で「リーフ茶」と答えたのは800人中たった2人だった。」

前田富佐男「私達が売っているお茶はリーフ茶であり、それを売りたいと思っているのですが主婦が求めているのは「やすらぎ」「くつろぎ」「リラックス」なのです。そうなると私達が提供したいものと消費者が要望しているものにズレ生じてしまう。」

前田富佐男「だから私達は「リーフ茶を売るのではなく、「やすらぎ、くつろぎの体験」を売る」という環境を作っていかないと今の生活者は納得してくれない、という結論に達した。」


前田富佐男「もっと言うと単にモノの提供ではなく、「お茶というモノを買うと、それによって何が体験出来るか」という提案をセットにしていかないとモノを買ってくれない。これはお茶に限らないことだと思う。例えばサンダルであれば、ただサンダル売るだけではなく「サンダルをビーチに持って行ってくと、こうやってビーチライフを楽しめる」という提案をセットしなければお客さんは納得しません。お茶であれば「本、和室、無料のお茶、お花の教室などの体験」までセットで提供しなければならないと考えたのです。そうしてこの店を開くことにしました。」

茶商の町の伝統を辿ることが観光となる「しずおか・茶の町コンシェル」というコンセプトを提案。

前田富佐男「しかし、こういったコンセプトの店が一店舗しかないのでは心もとない。なので私は「しずおか・茶の町コンシェル」という構想を提案し、やる気のある有志を募って仲間を集めた。茶業界の人だけだと見る方向が固まってしまうので、お茶屋だけなくお肉屋、床屋、味噌屋とコラボすることにした。更に静岡文化芸術大学の先生もメンバーに入れることで多角的に考察出来るようにしました。」

前田富佐男「まずはロールモデルの視察として、最初に山梨のワインツーリズムを見に行きました。それはワイナリーを周るという目的のもとで、お客さんが他の施設や店も周ってくれるという、とても大きな構成で作られていた。静岡茶のツーリズムであれば、駅から近場の茶の町コンシェルならばいけるだろうと考えた。次に長野の小布施にも行きました。ここは栗で有名で栗の町とも言われている。実際に町に行くと栗の匂いがあちらこちらから匂ってきて、とても魅力的でした。私達は静岡では何ができるだろうと考え、静岡産業大学の先生にお願いして学生の方に客観的に茶の町コンシェルをモニタリングしてもらいました。すると皆が「お茶の匂いがする」という。それは私たちが当然ある匂いだったのでそれに気づかなかった。しかし初めてここに来る方はそれに感激する。それは小布施の栗の匂いに感動したことに通じるものです。」

―新たに何かを作り出すのではなく、茶の町コンシェルは既にある長所や特徴を活かすことで成し得る事が出来たのですね。

前田富佐男「この町は自転車屋が多い。それはお茶屋さんを周る「歳取(サイトリ)」という職業の人々が自転車で町内を移動するのが発祥なんです。「歳取(サイトリ)」は、もとは「利ざや」を取るという意味で、茶農家と茶屋との間に立って口利きをしてくれる方々です。直接農家と茶商が交渉すると喧嘩になるからね。ここには朝からやっている食堂も何軒かある。いまでこそコンビニなどあるが、昔はそういった食堂は珍しいものだった。お茶の交渉は朝早い。交渉後の食事としてそういった食堂があるのです。お茶屋の隣には新茶の木が植えてある。その育ち具合を観てお茶の時期を見極める。これら全てがお茶の町独特の文化ですね。そういうのを巡ったり工場見学をしたりしながら、お茶のスイーツが食べられる。それらが観光につながるというのが茶の町コンシェルなのです。」

前田富佐男「そういった取り組みの結果、行政との繋がりや商工会議所、大学、地域との繋がりが出来やすくなった。一軒の利益にしかならないのであれば公の機関との繋がりは出来にくい。しかし茶の町コンシェルのようなグループの利益であれば行政とも繋がりやすい。そうして行政の広報機能を使えるようになり、それを利用して茶の町コンシェル、そして茶町KINZABUROの注目度を高めた。
それが今からおよそ10年前。ただのお茶の町だったが、この10年でお茶を楽しめるお茶の観光の町という世間の認識が生まれるようになった。そのことによって、お店にお客さんが沢山来るようになった。さらにその方向性で発信しようと思い、2017年には静岡県が行った第1回「地域のお店」デザイン表彰で、デザイン大賞(県知事賞)を受賞した。静岡県の茶業会議所からは「2020年のオリンピックまでにインバウンドを狙い静岡茶屋の100店補をめざす」というプロジェクトの第一店舗として認定された。静岡茶屋は東京も含めて100店舗になるプロジェクトです。お茶屋だけではなく、その繋がりの店も含まれる予定。茶町KINZABUROは静岡茶屋一号店としてアドバイザーもすることになる。」

「味と香りと安らぎをブレンドする空間」を提供する茶町KINZABUROの願い

前田富佐男「私は「尊して徳をとれ」という考えを大切に思っています。お客様にこういうスペースを提供する。お客様に手紙も書いています。今までに1万通は書いている。年間のフェアには上客としてDMを送らせてもらっている。筆ペンで数行ですが、ポイントカードから繋がるお客さんとの大切なコミュニケーションです。そういったアナログ的なことも必要だと思います。そうやってお客さんを尊敬してお客さんから口コミやリピートも頂いている。今は手紙を書いた後はすべて情報をシュレッダーにかける。そうやって個人情報は厳重に管理しています。最初はポイントカードも溜めていたけれど、あっという間に一杯になってしまったので3000枚で止めました。」


前田富佐男「お茶の世界だけでなく他もそうだろうが、どうしても内向き、閉鎖的な部分がある。お茶のブレンド一つとっても社外秘。私はそういったところは打破していきたい。お茶業界も変わらなければいけないと思う。
まずCHANGE(変化)を目指す
しかし、ただ変わるだけでは、そこにはチャンスは巡ってこない
どうすればよいか。
CHANGE(変化)をCHANCE(チャンス)に変えるにはGの部分のTを取ればよい。
Tとは「TABOO(禁止)」を指します。
私はTABOOを解くことにした。
お茶の町に変える(CHANGE)為に
無料のお茶の試飲を用意した。そして工場見学も受け付けて、お茶のブレンドというブラックボックス(TABOO)を皆さんに公開する。そういった今までのTABOOを表に出すということで、お客さんに安心感と親近感を与える。それによってファンになってもらう。それがCHANCEになる。
そういったことをメインの方針として、しずおか・茶町コンシェルとして、茶町KINZABUROとして進んでいるのです。」


柔軟な姿勢を持ち、様々な角度からどうしたらお茶を広められるかを思案する前田富佐男さん。格式や時代を大事にしながらも、それに過剰に捉われることなく現代に合ったお茶の在り方を追求する姿勢は「お茶という文化を守りたい、広めていきたい」という熱意を感じました。
茶町KINZABUROには、確かな腕の茶匠の生み出すお茶スイーツと様々な風味のお茶との試飲によって、自分の手で幾通りものマリアージュを見つけ出す楽しみもあります。腕利きのティーマエストロ前田富佐男さんの作り出すいろんな形のお茶を楽しみに来店してみてはいかがでしょうか。
以上、編集長による「茶町KINZABURO」のレポートでした。
お店の情報

住所 〒420-0018 静岡県静岡市葵区土太夫町27
ホームページ http://kinzaburo.com/
電話番号 054-252-2476
電子マネー・カード決済 対応済み
営業時間 平日9:30~18:00

日・祝10:00~17:00

定休日 水曜日
駐車場 あり
アクセス 静岡駅8A(ロータリー郵便局側)120番井の宮線または、6番西部循環 中町まわり(※7番は停まりません)

安西二丁目厚生病院前で下車

広い通りを渡って次の信号から30m先の左側

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