茶の庭で体感する茶園の四季と掛川深蒸し茶の恵み【静岡県・掛川市】

静岡掛川ICから車で5分の距離に位置する上内田は、茶処として名高い静岡県掛川市の中でも、特に高品質なお茶の産地として知られています。そんな上内田に、2021年にオープンした日本茶カフェ「茶の庭」は、運営元である【KANEJOグループ】の佐々木製茶の隣に位置し、茶園、茶工場、ショップを通してお茶を体験できる施設として人気を集めています。
この記事では、「茶の庭」で楽しめるお茶やカフェメニューの魅力に加え、同カフェが開店に至るまでのエピソードを、茶の庭の店長へのインタビューを交えてご紹介します。
茶の庭とは
「茶の庭」は、2021年2月に静岡県掛川市・上内田にオープンした日本茶カフェ。運営元は、創業100年を超える老舗製茶会社【KANEJOグループ】佐々木製茶です。
道路側から見る外観は、シックで洗練されたデザイン。ところが、ひとたび店内に足を踏み入れると、その先には思わず息をのむ絶景が広がっています。
店を囲むように整備された茶園は、遠くの山腹にまで連なり、まるで風景の中に溶け込むよう。茶畑の中に点在するウッドデッキのテラス席は、自然の中に浮かび上がっているような幻想的な空間を演出します。
さらに、隣接する焙煎工場が稼働を始めると、芳ばしい焙煎茶の香りがふんわりと漂い始めます。その香りに包まれた瞬間、まるで「お茶の庭」に迷い込んだかのような感覚に——。
店内は木の温もりあふれるインテリアでまとめられ、大開口の窓からは美しい自然が一望できます。室内と外の景色がゆるやかにつながり、心が解き放たれるような心地よさを感じさせてくれます。
▲カフェの目の前にある茶園を通して四季を感じられます▼
特に人気なのが、茶畑を間近に楽しめるウッドテラス席。天気の良い日には多くの人でにぎわい、雨上がりには木の香りがふわりと漂います。冬の季節には小型の移動式暖炉が設置され、季節を問わず快適に過ごせるのも魅力です。
茶の庭のお茶の紹介
「茶の庭」を運営する【KANEJOグループ】佐々木製茶は、これまでに農林水産大臣賞を33回以上受賞しており、天皇杯の受賞歴もある老舗の製茶企業です。さらに、国際味覚審査機構(iTQi)では、日本茶として初めて三ツ星を獲得するなど、国内外で高く評価されています。
今回は、そんな佐々木製茶が手がけるお茶の中から、「茶の庭」で購入できるおすすめ商品を、ほんの少しだけご紹介します。
スタンダードシリーズ
毎年4月、新茶の季節を迎える静岡県西部・掛川市。新茶として摘み取られる茶の芽は、小さくて柔らかいのが特徴です。やがて茶葉は成長し、ビタミンC、カテキン、テアニンといった成分のバランスが少しずつ変化。それにともなって、味わいにも変化が生まれます。
「スタンダードシリーズ」は、そんな茶葉の成長過程に合わせて摘採時期を何通りも設け、味の変化を楽しめるお茶のシリーズです。
使用されている品種は、静岡県で最も多く栽培されている「やぶきた」。このスタンダードシリーズは、【KANEJOグループ】佐々木製茶が手がけるロングセラー商品でもあります。
茶の庭シリーズ
お茶は品種や栽培方法、焙煎温度によって、実にさまざまな香味に変化します。「茶の庭」シリーズは、そんな奥深いお茶の香味の世界を、豊富なラインナップを通じて体感できるシリーズです。
たとえば、長野県のワイン工房で熟成されたことで、まろやかな味わいに仕上がったワインセラー熟成茶「碧音(あおね)」。爽やかな旨味が特徴の「かがやき」など、魅力あふれるお茶が揃っています。
お茶好きの方はもちろん、「お茶はあまり飲んだことがない」という方にも、おすすめのラインナップです。
▲茶葉の形状はもちろん、味や香りの特徴をチャートで視覚的に表現。自分好みの一杯を見つけやすくなっています。
Tea Amore~ティーアモーレシリーズ~
「ティーアモーレ」シリーズは、“ハーブティーで日々の暮らしに彩りを”という想いから生まれました。
女性のライフスタイルや感性に寄り添いたいという願いを込めて、丁寧にブレンドされた香り豊かなハーブティー。忙しい毎日のちょっとした気分転換や、友人とのくつろぎタイムなど、さまざまなシーンにやさしく彩りを添えてくれます。
▲香りを実際に確かめられるサンプル用の小瓶も用意されており、選ぶ楽しさも魅力のひとつです。
ティーバッグシリーズ
手軽に美味しいお茶を楽しめるティーバッグシリーズも充実しています。ゆとりのある空間をもたせたピラミッド型のティーバッグを採用し、茶葉がしっかりとお湯の中で広がることで、豊かな香りと味わいが引き出されます。HOTでもICEでも美味しく、季節を問わず1年中楽しめる、いつもそばに置いておきたい1杯です。
掛川抹茶
掛川抹茶は、掛川深蒸し茶製法の技術を活かして旨味を引き出した抹茶です。茶道のお点前用としてはもちろん、料理やスイーツ作り、さらには抹茶を使ったアルコール飲料にもおすすめです。
掛川紅茶しあわせかほり
「掛川紅茶 しあわせかほり」は、スリランカの名門ティーファクトリー「ニュービタナカンデ茶園」の元工場長、アナンダ・フェルド氏の指導のもとで製造・開発された紅茶です。
▲「掛川紅茶 しあわせかほり」は、カフェメニューとしても提供されています。
スリランカ紅茶界の第一人者から、紅茶づくりの本質を学びながら生まれたこの一杯には、日本の茶品種「べにふうき」を使用。芳醇な甘みと深い旨味が広がり、ひと口ごとに心がほぐれる味わいです。
和スイーツ
「茶の庭」では、お茶との相性を大切にした和スイーツもご用意されています。たとえば、掛川抹茶をふんだんに使った濃厚なお抹茶ケーキや、ホワイトチョコと茶葉の香りが絶妙に調和したラングドシャクッキーなど。日常のお茶時間を、少し特別なひとときに変えてくれるスイーツが揃っています。
茶の庭のカフェメニューの紹介
茶の庭では、【KANEJOグループ】佐々木製茶のお茶や、地元・掛川の食材をふんだんに使ったカフェメニューをご提供しています。
今回は、その中からおすすめのメニューを少しだけご紹介します。
葛どら(抹茶クリーム)
掛川抹茶の豊かな風味をたっぷり堪能できる、ミニサイズのどら焼きです。香ばしくてしっとりふわふわの生地は、北海道産のさっぱりとした甘さのあんこと調和します。さらに、吉野本葛を贅沢に使った葛餅の持っちり食感と、特製の抹茶クリームとの相性も抜群。一口ごとに贅沢なひとときを楽しめる一品です。
抹茶クリームには抹茶パウダーが振りかけられ、掛川抹茶のほろ苦さと甘さが余韻となって残ります。また、抹茶クリームだけでなく、ほうじ茶クリームや黒蜜きな粉クリームの3種類の味が楽しめるのも魅力のひとつ。気分や好みに合わせて選べる楽しさがあります。
高級感あふれる見た目に加え、手軽に食べられるミニサイズも嬉しいポイント。食べやすさを考慮したデザインで、表情やメイクを崩さずに楽しめるため、大切な方への贈り物にも最適です。
掛川抹茶ぜんざい
「冬にぴったりの温かいスイーツが欲しい」というお客様の声から誕生したという、茶の庭特製の抹茶ぜんざい。何度も試作を重ねて完成されたこのメニューは、掛川抹茶の豊かな香りとほろ苦さ、小豆餡の上品な甘さが絶妙に調和しています。香ばしく焼き上げたお餅と和栗が彩りを添え、贅沢な味わいを引き立てます。
温かいぜんざいと心地よいお茶が、冷えた体を優しく包み込むひととき。寒い冬にピッタリの和スイーツです。
なめらかお茶ぷりん~ティラミスぷりん~
掛川抹茶を贅沢に使った抹茶プリンに、濃厚なチョコレートソースとチョコスポンジ、さらに抹茶との相性が抜群のマスカルポーネを重ねた、贅沢なティラミス風ぷりんです。
この「お茶ぷりん」は、【KANEJOグループ】佐々木製茶のお茶の魅力を最大限に活かし、老若男女問わず楽しめる味わいを目指して開発されました。構想段階から茶の庭スタッフが携わり、納得のいくぷりんを作るため、パティシエのもとに何度も足を運んだそうです。
店内にはぷりん工房があり、出窓からはスタッフが一つひとつ丁寧に手作りしている様子を眺めることができます。ぷりんのラインナップは季節によって変わり、和紅茶ぷりんやほうじ茶ぷりんなど通年販売のものに加え、季節限定フレーバーも登場します。
手摘み入り天皇杯受賞記念茶
【KANEJOグループ】佐々木製茶が天皇杯を受賞したことを記念してつくられた、特別な「手摘み入り天皇杯受賞記念茶」。丹精込めて育てた茶園のなかでも、特に上質な新芽を丁寧に手摘みし、深蒸し製法で仕上げられました。
旨味・甘味・余韻が幾重にも重なりあう、極上の一杯。数量限定での提供となります。
▲天皇杯受賞記念茶はリーフタイプでも購入できます。
和紅茶フルーツティーソーダ(季節限定)
芳醇な和紅茶に、自家製レモンシロップと旬のフルーツを合わせた、爽やかな味わいのティーソーダ。清々しい季節を感じられる1杯です。
農園で搾ったみかんジュース
岡県産のみかんを農園でそのまま搾った、濃厚なみかんジュース。採れたての美味しさがぎゅっと閉じ込められています。
茶の庭ランチ (Lunch Time 11:00-14:00に提供)
茶の庭では、地元産の新鮮な野菜や果物をふんだんに使用したお食事を提供しています。四季折々の食材を活かした特別なランチは、季節ごとにメニューをリニューアル。茶園に囲まれた特別な空間で、ゆったりと味わってみてはいかがでしょうか。
▲上側は茶の庭彩りプレート。下側は季節のキッシュとパンのセット。
インタビュー:茶の庭は茶園を通して掛川深蒸し茶の恵みを伝える
茶の庭の松本店長にお話を伺いました。
茶園に浮かぶ庭園~茶の庭~が作られるまで
–日本茶カフェ「茶の庭」について教えてください。
「茶の庭」は、創業100年を迎える【KANEJOグループ】佐々木製茶が運営する日本茶カフェです。「目の前に広がる茶園を通して四季を体感しながら、“お茶っていいよね”と思えるひとときを提供する」——そんなコンセプトのもとに、「茶園に浮かぶ庭園〜茶の庭〜」は誕生しました。
— 美しい茶園と色鮮やかな花々のガーデニングは、眺めているだけで癒されますね。
訪れた方々に、より情景豊かに四季を感じていただけるよう、茶園を取り囲むように季節の花々を植えています。春にはソメイヨシノやアオダモ、初夏にはシマトネリコが咲き誇ります。ヤマボウシの花が満開を迎えたあとは、モミジが徐々に色づき、秋の訪れを感じさせてくれるでしょう。
四季折々の表情に包まれた茶園で、お茶摘みやお茶揉み、抹茶づくりなどの体験を通して、お茶の魅力を多くの方にお届けしていきたいと考えています。
掛川の茶工場の隣に茶の庭を建設
–茶の庭を建設する場所に会社の隣を選んだのは理由があるのですか?
私たちは、伝統と革新の両方を大切にしながら、新しい形でお茶を表現できる施設を作りたいと考えていました。そうした想いのなかで、お茶を提供するだけでなく、体験という付加価値を含めた形で届けることが、これからの時代にはより重要になってくると感じたんです。
その観点から考えたとき、ここ掛川にある自社の隣に「茶の庭」をつくるのが、もっとも適しているという結論に至りました。
茶の庭を囲む茶園は、すべて【KANEJOグループ】佐々木製茶の契約茶農家による畑です。そこで収穫された茶葉は隣接する焙煎工場で加工され、「茶の庭」へ直送。カフェメニューや小売商品として提供しています。だからこそ、お茶の鮮度と品質には自信があります。
–会社の隣に建てることで、「茶園」「工場」「カフェ」が一体となった理想的なロケーションが実現したわけですね。
そうなんです。「生産」「加工」「販売」までを自社で一貫して担っていることは、【KANEJOグループ】佐々木製茶の大きな強みでもあります。
生産部門では、「お客様の要望に近いお茶をどう作るか」「どんなお茶を作っていくべきか」といった課題と向き合い、日々研究と改善を重ねています。
加工部門では、生産部門に対して「こんなお茶に仕上げたい」という要望を伝え、連携しながら品質を高めています。
そして販売部門は、お客様にもっとも近い立場として、消費者の声を生産・加工の両部門へフィードバックする役割を担っています。
簡単に言えば、「お茶を届ける」と同時に、「お客様の反応をいち早くキャッチして、すぐに対応できる体制」を整えている、ということですね。一貫体制を持つことで中間マージンが発生せず、スピーディーに、より良いお茶を、よりお値打ちにお届けできるのも、大きなメリットです。
掛川から深蒸し茶の魅力を発信していく
私たちは、ここ静岡・掛川から深蒸し茶の魅力を発信していく必要性を強く感じています。というのも、「掛川ってどこ?」「深蒸し茶って何?」といった声を、実際によく耳にするからです。
お茶に対して「無料で飲めるもの」というイメージが根強く残っているのも現状です。高速道路のサービスエリアなどでは、無料でお茶を提供している場所もあり、それが当たり前のように受け取られている面もあるのではないでしょうか。
さらに、掛川周辺に住む若い世代の中には、「お茶を摘んだことがない」という人も少なくありません。実際にお茶を日常的に飲んでいるかというと、そうでもないのが実情です。しかし、これからの茶業の発展を考えるうえで、特に若い世代にお茶の魅力を届けていくことは非常に重要だと感じています。
一方で、「静岡といえばお茶」というイメージは、今なお多くの人の中に残っています。静岡を訪れれば、茶畑やお茶に関する風景に頻繁に出会うことでしょう。
私たちは、そうした環境を活かして、茶園に囲まれたテラス席での食事会やイベントなどを企画しています。五感を通してお茶に触れていただくことで、その魅力をより深く感じてもらえるはず。だからこそ、私たちはこの状況をむしろ「チャンス」だと捉えているのです。
現時点ではまだ構想段階ですが、いずれは隣接する茶工場の見学イベントなども開催してみたいと考えています。そうすることで、お茶の生産や仕上げの工程を、よりリアルに体感していただけるでしょう。
そして時期が合えば、目の前の茶園で摘み取ったばかりの新芽を、その場で天ぷらにして味わっていただく…なんて体験も。きっと、お茶の美味しさに驚いていただけるはずです!
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~茶の庭の情報・購入方法~
住所 | 〒436-0012 静岡県掛川市上内田389-1 |
ホームページ | https://chanoniwa.com/ |
SNS | |
電話番号 | 0537-28-7077 |
電子マネー・カード決済 | 対応済 |
営業時間 | Shop 10:00−18:00
ラストオーダー 17:00 |
電子マネー・カード決済 | 対応済 |
定休日 | 水曜日 |
駐車場 | あり(40台) |
アクセス | 東名高速 名古屋方面からは掛川ICより5分
東京方面からは菊川ICより5分 JR掛川駅南口(新幹線口)よりタクシーで8分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |