高いけど売れるお茶を目指して。Benefitea(ベネフィッティー)のボトルティー開発ストーリー【静岡県・静岡市】【静岡県・静岡市】

お茶の提供方法には、急須で淹れるリーフ茶やティーバッグ、ペットボトルなど、多彩な形態があり、日常生活のさまざまな場面に溶け込んでいます。近年では、高級茶葉を丁寧に抽出したお茶を瓶詰めした「ボトルティー」という新しいスタイルも登場し、注目を集めています。ボトルティーは、手軽に本格的な味わいを楽しめる嗜好品として、高級ギフトや贈答品にも選ばれています。
今回取材したのは、ボトルティー製造で注目を集めるBenefitea(ベネフィッティー)。同社は、コールドエクストラクション製法という特殊な抽出方法で高級茶葉の魅力を最大限に引き出し、爽やかな味わいと豊かな旨味を兼ね備えた商品を提供しています。
この記事では、Benefitea(ベネフィッティー)株式会社の西沢宏保社長に、お茶業界への参入経緯やボトルティー開発の裏側についてお話を伺います。
目次
Benefitea(ベネフィッティー)とは
2015年4月、Benefitea(ベネフィッティー)は、ボトルティーの研究開発を目的として静岡県静岡市に設立された清涼飲料水製造メーカーです。代表取締役は西沢宏保さんです。
ボトルティーの分野では、神奈川県のロイヤルブルーティージャパン株式会社や、丸七製茶が手がけるCRAFT BREW TEAなど、他にも著名な製造メーカーが存在します。
Benefitea(ベネフィッティー)の商品紹介
静岡県に拠点を構えるBenefitea(ベネフィッティー)は、茶業者からの依頼を受けてボトルティーを製造し、さらに共同で販路開拓を行うビジネスモデルを展開しています。こうした取り組みにより、茶業界全体の活性化を目指しています。
Benefitea(ベネフィッティー)は「高級ボトルティー」「スパークリングティー」「高級茶葉入り加工食品」など、多彩な分野で事業を展開しています。ここでは、その中から商品を一部ご紹介します。
Benefitea(ベネフィッティー)製高級ボトルティー
Benefitea(ベネフィッティー)の高級ボトルティーは、同社が独自に研究開発した「コールドエクストラクション製法®」で製造されています。一般的にお茶はお湯で抽出すると苦みや渋味が前面に出やすいですが、この製法では苦みや渋味を抑えつつ、旨味・香り・甘みを引き出すことが可能です。
そのため、お酒が飲めない方へのパーティー用スペシャルドリンクとしても最適です。
現在はOEMで20種類以上のラインナップを展開。価格は1万5,000円〜2万円前後で、添加物は一切使用していません。未開封での保存期間は1〜3カ月程度。製造は受注から2週間以上かかります。
Benefitea(ベネフィッティー)製スパークリングティー
Benefitea(ベネフィッティー)製スパークリングティーは、後味がすっきりとしており、脂分のある料理とも相性の良い飲み物です。チェイサーとしても利用できるため、パーティーなどでお酒を飲めない方にも喜ばれる飲み物です。
ボトルのラベルに記載された3桁の数字は郵便番号を表し、例えば「421」は牧之原の郵便番号を示しています。
右から順にご紹介します。
サンルージュ:グラスに注ぐと美しい色合いが一層映え、炭酸が軽やかに弾けて華やかさと清涼感を楽しめます。
燻製紅茶:炭酸と燻製香が絡み合い、強いインパクトを与える新感覚のお茶です。
深蒸し:深蒸し茶ならではの深みとコクがありながら、すっきりとした後味です。
ほうじ茶:さっぱりとした飲み口とほうじ茶の香ばしい香りが炭酸と調和します。
べにふうき紅茶:使用されているのは花粉症対策で知られる茶品種べにふうき。爽快なのど越しを楽しめます。
静岡の名茶産地・両河内にあるGREEN ∞ CAFE(グリーンエイトカフェ)の和紅茶もスパークリングティーとして登場しました。
左から
エスプレッソ和紅茶スパークリングティー(スイート)。
エスプレッソ和紅茶スパークリングティー(マイルド)。
エスプレッソ和紅茶スパークリングティー(ビター)。
さらに、ルイボス白桃アールグレイスパークリングティーは、茶師が特別な配合で調合した原料を使用。
Benefitea(ベネフィッティー)の特殊抽出技術と組み合わせることで、爽やかな香りと風味が鼻から心地よく抜けていきます。
Benefitea(ベネフィッティー)高級茶葉入加工食品
高級茶葉入り加工食品は、村松精肉店との共同開発による逸品です。肉のイノシン酸と茶のグルタミン酸が絶妙に融合し、旨味が一層際立ちます。現在は、高級煎茶をブレンドした粗挽きウインナーや高級煎茶入りシュウマイなど、バリエーション豊かな加工食品を展開しています。
まずは、高級煎茶をブレンドした粗挽きウインナー。静岡県産の水出し茶を与えて育てた豚肉「TEA豚(ティートン)」を使用し、北川牧場で大切に育てられた肉は臭みがほとんどありません。溢れる肉汁の旨味と粗挽き肉の食感が、ほどよい調和を感じさせます。
さらに、高級煎茶入りシュウマイもおすすめです。牧之原の高柳製茶が提供する高級茶葉を使用し、茶葉の旨味と具材の旨味が相乗効果を発揮。風味豊かな焼売に仕上がっています。
また、この「高級茶葉入り加工食品」は、スパークリングティーと一緒に楽しむことで、さらに美味しさが引き立ちます。
インタビュー:お茶を知らなかった私が挑む──静岡茶の価値を世界に届けるボトルティー開発記
Benefitea(ベネフィッティー)株式会社の代表取締役、西沢広保社長にお話を伺いました。
お茶を知らなかった私が、静岡茶の危機を知って動き出した理由
–Benefitea(ベネフィッティー)はボトルティーの製造をしていますが、主要事業は清涼飲料水製造なのですね。なぜ、お茶業界に興味を持たれたのですか?
以前、私は仕事の関係で頻繁に中国と日本を行き来していました。ある時、中国の方に出身地を尋ねられ、静岡だと答えると、「静岡はお茶処だから、ぜひ静岡のお茶を中国に持ってきてほしい」と頼まれました。
そこで知り合いの静岡のお茶屋さんにお願いし、大量のお茶を中国に送ることになりました。さらに、日中交流センターで急須を使ってお茶を淹れ、職員の方々に振る舞ったところ、「とても美味しい」と大変喜ばれました。
この経験を通じて、それまでお茶についてほとんど知識がなかった私も興味を抱くようになり、少し調べてみることにしました。その結果、茶業が危機的な状況にあることを初めて知ったのです。
高品質なのに安すぎる──静岡茶が抱えるジレンマ、その解決策を探して
茶業の現状を調査する中で、静岡県庁から静岡県立大学の中村順行先生をご紹介いただき、静岡茶について詳しくお話を伺いました。現在、静岡の茶業界では後継者不足が深刻化しており、廃業を余儀なくされる生産者が増えています。
その背景には、お茶の販売不振による利益の低迷があり、経営継続が困難な生産者の切実な事情があります。
中村先生は私に、「茶価を上げる方法を考えてほしい」とおっしゃいました。日本茶は本来、多くの手間と時間をかけて作られる高い価値を持つものですが、その価値が市場に十分伝わらず、価格の低迷が続いています。この状況は後継者不足の要因にも直結しています。
一刻も早くマーケティング戦略を整備し、お茶が売れる仕組みを構築する必要があります。こうして私は、「高価でも売れるお茶の仕組みを作る」という課題を託されました。
リーフ茶の可能性を信じて。消費拡大を目指すボトルティーの挑戦
–なるほど、そうした中で、ボトルティーの開発に取り組まれたのは、なぜだったのでしょうか。
静岡県の上層部から、私にボトルティー製造の依頼があったことがきっかけです。以前、私は医療用具製造会社に勤務しており、健康ドリンク製造のノウハウを持っていました。その技術を活かし、ボトルティーの製造に挑戦することにしたのです。
–もともとドリンク製造のノウハウをお持ちだったのですね。
はい。しかし、初期の製品は満足のいく味には仕上がりませんでした。品質改善のため、私は全国の茶園を訪ね、現地で美味しいお茶を試飲し、生産者と意見を交わしました。
その過程で、お茶の美味しさを機械で再現するために、さまざまな抽出方法や濾過方法を試みました。また、市場に出回っているボトルティー関連商品も徹底的に分析しました。
–品質改善のために生産者を訪ねられたのですね。印象的な出来事はありましたか。
両河内には「豊好園」という茶農家があります。通常、お茶は紫外線に当たると変色してしまうのですが、豊好園のお茶はなぜか変色しませんでした。園主の片平次郎さんによると「お茶がいいから」だそうで、まったく不思議なことだと思いました。
こうして試行錯誤を重ねて完成させた「Benefitea(ベネフィッティー)」のボトルティーは、工業試験場、かずさDNA研究所、エコプロリサーチ、理化学研究所で成分分析を行った結果、非常に良いデータと数値を示しました。
その後も何度も試飲会を開き、改良を重ねて商品化に至りました。
高品質なボトルティーがリーフ茶の消費拡大につながれば、生産者の収入向上にも貢献できると考えています。
お茶には、まだまだ計り知れない可能性があります。Benefitea(ベネフィッティー)は、これからもその可能性を追求していきますよ。
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Benefitea(ベネフィッティー)の情報・購入方法
住所 | 本社 〒420-0071 静岡県静岡市葵区一番町8-6
営業本部 〒420-0823 静岡県静岡市葵区春日2-11-9 春日工場 〒420-0823 静岡県静岡市葵区春日2-11-9 |
電話番号 | 050-3478-5121 |
電子マネー・カード決済 | 商品の取り扱い店舗による。 |
営業時間 | 問い合わせ |
定休日 | 問い合わせ |
駐車場 | あり |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |