紅葉山庭園立礼席で味わう静岡茶―四季の美景と歴史に包まれて【静岡県・静岡市】

静岡駅北口から約15分、静岡県庁方面に向かって歩くと、近代的な街並みの中に突如として現れるのが、荘厳なお堀に囲まれた駿府城跡公園です。初めて訪れる人には、まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような印象を与えるでしょう。約18ヘクタールもの広大な敷地には、かつて徳川家康が大御所として暮らした駿府城跡があり、現在は市民に親しまれる憩いの場となっています。今回紹介するのは、その駿府城跡公園内に位置する紅葉山庭園立礼席です。庭園には城郭を連想させる造形が広がり、歴史と自然が調和した景観の中で、本格的な静岡茶を味わうことができます。
この記事では、四季折々に移ろう紅葉山庭園の美しい風景とともに、立礼席で提供される呈茶メニューの魅力をご紹介していきます。
目次
紅葉山庭園 ―お茶と歴史、そして四季を彩る庭園散策
紅葉山庭園は、静岡市葵区の駿府城跡公園内にある見どころの一つです。お堀に囲まれた公園の東側に広がり、東御門から入場して徒歩約5分ほどの場所に入口があります。右手にある受付で入場料を支払えば、庭園エリアへと進むことができます。
かつて徳川家康が大御所として暮らした駿府城。その歴史的背景を活かして整備された紅葉山庭園は、里庭、海庭、山里の庭、山の庭という四つのエリアで構成され、四季折々の自然の美しさを堪能できます。
さらに庭園内には、静岡茶を甘味と共に味わえる茶室「立礼席」が設けられており、歴史と自然、そしてお茶文化を同時に楽しむことができます。
(以下の写真は四季ごとの様子が混在している点をご承知ください)
里の庭
玄関の門をくぐり、砂利道に敷かれた石畳を進んでいきます。
▲秋には美しい紅葉が広がります。
二手に分かれた道を「順路」の看板に従って左へ進むと、最初に迎えてくれるのは「里の庭」。美しい庭園に溶け込むように佇む風情ある四阿(あずまや)が印象的です。
四阿から眺める景観は見事で、心が自然と癒やされます。疲れた体を休めるのに絶好の場所であり、一息ついてから次の散策に進むのも良いでしょう。茶室立礼席の呈茶メニューもご覧いただけます。
また、四阿の隣に立ち振り返ると、奥には静岡県庁の別館が姿を見せます。近代的なビルと歴史ある建造物が並ぶ光景には、不思議な風情を感じずにはいられません。
▲静岡県庁別館の上層階から見下ろす駿河城跡公園の様子
海の庭
四阿を抜けて進むと、目の前に広がるのは「海の庭」です。ここでは三保の松原を模した州浜の景観が広がり、都会にいることを忘れてしまいそうな静けさに包まれます。
池では、優雅に泳ぐ鯉やゆったりと漂う鴨の姿を見ることができ、その穏やかな光景は心を和ませてくれます。泳ぎも比較的ゆっくりなので、動物の写真撮影を初めて挑戦する方にとって最適な場所かもしれません。カメラ初心者でも、躍動感のある写真が撮れそうです。
山里の庭
次のエリア「山里の庭」へ足を踏み入れると、右手には茶畑と富士山のを望む景観を再現した築山が広がります。季節の移ろいに応じてまったく異なる表情を見せるこの築山は、紅葉山庭園の中でもひときわ印象的な場所といえるでしょう。
▲春の築山の様子と冬の築山の様子▼
小高い丘の中腹に立てば、広がる風景を一望できます。安倍川の流れを模した川や池、州浜、松の木々が美しく調和し、その奥には近代的なビルがそびえ立ちます。この自然と都市が交錯する不思議な光景は、見る人の心を強く惹きつける魅力に満ちています。
茶室立礼室の呈茶体験–煎茶・抹茶・玉露と和菓子の贅沢なひととき–
茶室「立礼席(りゅうれいせき)」は、「海の庭」から「山里の庭」へと向かう途中に設けられており、気軽に茶の湯を楽しむことができます。下足のまま入室できるのが特徴ですが、呈茶には入園料とは別に料金がかかります。
以下に、立礼席で楽しめるメニューの一部をご紹介します。
日本平煎茶・和菓子付き
駿河湾と富士山の眺望が広がる名勝地・日本平で栽培された煎茶。山間の茶畑で栽培されたお茶ならではの爽やかな香味と、和菓子の甘味が良く合います。
(詳しくはこちらから>>日本平夢テラスの詳細情報を確認する)
本山抹茶
徳川家康も愛飲したとされる本山抹茶。立礼席で提供されるこの抹茶は、静岡市安倍川沿いの内牧や西ヶ谷、そして藁科川沿いの産女の茶園で育まれた茶葉を原料に使用しています。コクとほろ苦さ、甘さがバランスよく調和しています。
朝比奈玉露
静岡県朝比奈地域は、京都宇治や福岡八女に並ぶ玉露の名産地です。力強い旨味と芳醇な香りが楽しめる高級茶・朝比奈玉露は、きっとお茶の新たな魅力に気付かせてくれることでしょう。
(詳しくはこちらから>>朝比奈玉露についての詳細情報を確認する)
呈茶セットを楽しんだ後には、香り高いほうじ茶のサービスが提供されるのも嬉しいポイントです。
さらに、呈茶メニューで味わえるお茶は、その場でいただくだけでなく小売りでも販売されています。気に入ったお茶があれば、立礼席で味わった余韻のまま購入して持ち帰ることができます。
時間帯によっては、庭園内の茶室「雲海」や「静月庵」も見学可能です。「雲海」に足を踏み入れると、ほんのり木の香り漂う和の空間が広がり、自然光が差し込む開放的な広間や手入れの行き届いた庭園を望むことができます。
ここは茶の湯や俳句、生け花など、伝統文化に親しみ継承する場として多目的に利用されています。
さらに奥へ進むと、五畳半の小間「静月庵」が現れます。玉露の里にある茶室「瓢庵」を思わせる造りで、広さは同じ五畳半ながら、こちらの方がやや広く感じられるでしょう。
山の庭
紅葉山庭園を散策する際の、往復の中継地点となるのが「山の庭」です。先ほどまでの広々とした景色とは対照的に、ここでは木々が生い茂り、蔦が絡む細い小道が続いています。
歩を進めるごとに、清らかなせせらぎの音が耳に心地よく響き、この先が紅葉山庭園の最奥部であることを予感させます。
やがて庭園の最奥にたどり着くと、目の前には美しい滝が姿を現します。木漏れ日が水滴に反射して小さな光を放ち、そよ風に揺れる木々からは葉のざわめきが聞こえます。爽快な滝の水音はリズミカルに広がり、訪れる人々の心を静かに癒してくれます。
滝を背にさらに進むと、築山の裏を通るルートへ。ここから道は玉石の階段に変わり、やがて海の庭の対岸へとつながります。途中には歴史を物語る東海道の道標が立っており、見る角度によっては当時の人々が往来する光景が目に浮かぶようです。
花菖蒲田に架かる八つ橋を渡ると、山の庭の旅は終わりを迎えます。遠くには里の庭に佇む四阿が見え、紅葉山庭園の入口へと戻ってきました。
以上が紅葉山庭園と茶室立礼席のご紹介です。城郭庭園を思わせる趣と遊び心に満ちた紅葉山庭園は、四季折々に異なる表情を見せ、訪れる人々を魅了します。
駿河の名勝を取り入れた四つの庭を巡りながら、ぜひ茶室にも立ち寄ってみてください。ここでいただく本格的な静岡茶は、これまでにない新しいお茶の魅力を気づかせてくれることでしょう。
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~紅葉山庭園立礼席の情報~
住所 | 〒420-0855静岡県静岡市葵区駿府城公園1-1 |
ホームページ | https://sumpu-castlepark.com/momijiyama/ |
電話番号 | 054-251-0016 |
電子マネー・カード決済 | 現金のみ |
営業時間 | 9時から16時30分
入場料150円 ※入園は16時00分まで呈茶は別途料金がかかります |
定休日 | 月曜日(祝日の場合は営業) |
駐車場 | なし |
アクセス | 東名高速静岡インターチェンジより約17分
徒歩の場合はJR静岡駅より15分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介される。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |