清水邸庭園の四季彩を背景に、湧水亭で体験する癒しのお茶会【静岡県・掛川市】

静岡県掛川市の南部に位置する遠州横須賀地区。遠州灘に面した温暖なこの町には、かつて横須賀城の城下町として栄えた歴史ある町並みが今も残っています。風情ある建造物や商店が軒を連ねる中、新横須賀バス停の前に位置するのが「清水邸庭園」です。清水邸庭園は、かつて地元の豪商であった清水家の邸宅であり、その後、美しい公園として整備されました。1991年12月20日に「静岡県みずべ百選」に選ばれています。
四季折々の自然を楽しめる日本庭園では、訪れる人々が日本文化に触れるひとときを過ごせます。その魅力は県内外にとどまらず、海外からも多くの観光客を引き寄せています。この記事では、清水邸庭園の魅力と、園内にある湧水亭での茶道体験についてご紹介します。
目次
清水邸庭園 ― 「みずべ百選」に選ばれた四季の名園を歩く
清水邸庭園は、静岡県掛川市西大渕に位置し、清水邸の南側に広がる美しい庭園です。
▲清水邸庭園表門
清水邸庭園の表門をくぐると、奥には回遊式庭園が広がります。江戸中期に造られたこの庭園は、湧き水を巧みに取り入れて水の豊かさと清らかさを表現しており、その景観の美しさから名園として知られています。1991年12月20日には「静岡県みずべ百選」にも選出されました。
庭園内の四阿(あずまや)からは、季節ごとに変わる景色を楽しめます。1月中旬から2月初旬には梅、春には桜や新緑、そして11月中旬から12月初旬には紅葉が美しく、訪れる人々を魅了します。鳥の姿も見られ、四季折々の自然が調和する庭園となっています。
アクセス面では、無料駐車場が裏門側に用意されています。公共交通機関を利用する場合は、袋井駅からバス(約30分)を利用するのがおすすめです。
▲清水邸庭園裏門
「殿様よりも八十様」と讃えられた旧家。清水邸でたどる江戸から明治への物語
清水邸は、江戸時代の元禄期に回船問屋を営み、藩の御用達を務めるなどして栄えた旧家・清水家の邸宅です。清水家は大名に匹敵するほどの財力を誇っていたと伝えられ、当主は代々「清水八十郎(やそろう)」を名乗りました。その繁栄ぶりは「八十様にはおよばないが、せめてなりたや殿様に」と俗謡で歌われるほど知られていました。
清水邸本宅は横須賀街道に面しており、現在は日曜日に限って一般公開されています。
明治維新後、清水家は廻船問屋を廃業し、六代目八十郎(清水孝一郎)が郵便局長として活躍しました。そのため清水邸は廻船問屋から郵便局舎へと姿を変える歴史を持ち、本宅の瓦には郵便マークが刻まれるなど、その名残を今も見ることができます。
▲六代目八十郎を襲名した孝一郎の像
清水邸本宅は庭園とも繋がっており、裏口からも入ることができます。
数寄屋造り「湧水亭」で体験する、季節ごとの茶会と心癒される庭園美
清水邸庭園に佇む数寄屋造りの「湧水亭」では、四季折々に表情を変える美しい庭園を眺めながら、お茶の先生が振る舞う本格的なお茶を堪能できます。
(季節や曜日によって提供されるメニューは異なる場合があり、参加料は高校生以上510円、中学生以下250円。入館は15時30分までとなっています。)
日本有数のお茶どころ・静岡の中でも、こうして目の前で本格的なお茶を体験できる場所は限られています。
呈茶は正式な茶会ではなく、気軽に楽しめるお茶体験なので、作法にとらわれずカジュアルに楽しめます。凛とした空間に少し緊張するかもしれませんが、お茶の先生は「肩肘張らず、気軽に楽しんでください。決まり事を意識しなくても大丈夫ですよ」と優しく声をかけてくれます。どなたでもリラックスして楽しめる雰囲気は、茶道が初めての方にもおすすめです。
テーブル席も用意されており、足腰に不安のある方でも安心。縁側で庭園を眺めながらお茶をいただくことも可能です。
なお、正式にはお茶を点ててもらっている間にお菓子をいただくのが茶道の通例です。今回は特別にお茶とお菓子をセットで撮影する時間をいただきました。
また、甘酒を注文すると、お好みの器を選べる楽しみもあります。清水家に伝わる江戸時代の輪島塗や津軽塗といった高級漆器から選べ、特別感を味わえます。
甘酒に使用される糀は地元・横須賀地区の糀屋から仕入れたもので、甘すぎず飲みやすい仕上がり。飲み終わった後は煎茶で口の中をさっぱり整えられるのも嬉しいポイントです。
さらに湧水亭では、一年を通して初釜茶会、ひな祭り茶会、ホタル鑑賞会、七夕茶会、お月見茶会、紅葉茶会など、日本の伝統的な催し物が開催されています。四季折々に移ろう自然を感じながら、「侘び寂び」の心に触れるひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
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清水邸庭園 湧水亭の情報
住所 | 〒437-1304 静岡県掛川市西大渕5298-2 |
ホームページ | https://www.city.kakegawa.shizuoka.jp/ |
電話番号 | 0537-48-6456 |
電子マネー・カード決済 | なし |
営業時間 | 10時から16時(催し物があるときを除きます) ※湧水亭への入館は15時30分まで |
定休日 |
毎週木曜日(祝日の場合は翌日) 年末年始(12月29日から1月3日まで) |
駐車場 | あり(15台) |
アクセス | 東名高速掛川インターチェンジより約20分
掛塚さなる台線 西番町バス停下車 徒歩3分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介される。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |