伝統を守りながら進化するお茶のかたち。茶通亭の新ブランド「おいしい日本茶研究所」【静岡県・沼津市】

OCHATIMES編集部
伝統を守りながら進化するお茶のかたち。茶通亭の新ブランド「おいしい日本茶研究所」【静岡県・沼津市】

静岡県沼津市に位置する茶通亭は、1909年の創業以来、「日本茶の本当の美味しさを伝え続ける」という理念のもと、長い歴史を持つ製茶会社として知られています。現在、4代目の代表である植松崇宏氏のもと、茶通亭は伝統的な製茶技術と現代のニーズを融合させた新しい商品を展開しています。特に注目すべきは、看板商品の「ソムリエブレンド煎茶」と新ブランド「おいしい日本茶研究所」が提案する独創的な楽しみ方です。お茶の多様な魅力を伝えるため、熟練の茶師たちが丁寧に仕上げた製品や、若者向けの新たなアプローチが、多くのメディアから注目を集めています。

この記事では、茶通亭の伝統的なお茶の魅力や新ブランド「おいしい日本茶研究所」の立ち上げ経緯について、茶通亭の代表取締役、植松崇宏さんのインタビューを交えながらお伝えします。

茶通亭とは

茶通亭は、静岡県沼津市に位置する創業1909年の老舗製茶会社です。「日本茶の本当の美味しさを伝え続ける」という理念のもと、製造卸売や店頭・ネットでの小売販売を行っています。現在は4代目となる植松崇宏さんが代表を務めています。

茶通亭

茶通亭には3名の日本茶インストラクターが常駐しており、いつでもお客様に最適な日本茶を提供できるサポート体制が整っています。

茶通亭のお茶の紹介

茶通亭では、看板商品「ソムリエブレンド煎茶」をはじめ、高級ボトリングティー「LIQUID TEA」など、さまざまな商品を取りそろえています。また、若者がお茶に親しむきっかけとして立ち上げた新ブランド「おいしい日本茶研究所」では、日本茶を使った生餡(なまあん)など、これまでにない新しいお茶の楽しみ方を提案しており、多くのメディアで注目されています。

ここでは、茶通亭の商品をいくつかご紹介します。

ソムリエブレンド煎茶

ソムリエブレンド煎茶は、「こだわりの芽重型(がじゅうがた)仕立て茶葉」(※茶樹につく茶葉の数を少なくして、一芽に旨みを凝縮させた茶葉)を原料に使用し、茶通亭の熟練茶師が最高の技術で仕上げたお茶です。茶通亭が自信をもってお届けする逸品です。

ソムリエブレンド煎茶

ソムリエブレンド煎茶には、ポピュラーな「やぶきた」や、鮮やかな水色と甘みが特徴の「さえみどり」、濃厚なコクと旨みが楽しめる「ゆたかみどり」など、さまざまな品種茶がブレンドされています。単一品種のお茶では味わえない、複雑で深みのある香味が特徴です。


Liquid Tea 献上茶 静岡白葉茶 本山 Limited

「Liquid Tea 献上茶 静岡白葉茶 本山 Limited」は、希少な本山白葉茶のポテンシャルを最大限に活かす方法でお茶を抽出し、ボトル詰めしたボトリングティーです。

Liquid Tea 献上茶 静岡白葉茶 本山 Limited

本山白葉茶とは、一定期間、日光を遮る等の特別な栽培方法で育てアミノ酸量を通常の茶葉の2~3倍以上に増やした茶葉のこと。

▲黄金色に輝く本山白葉茶。生産量が少ない希少なこのお茶を茶通亭はこのボトルティーの原料のためだけに取り扱っています。

ビタミンCなど酸化防止剤が一切含まれておらず、お茶の天然の旨味と香りを、ワインのように優雅に楽しむことができます。「本当のお茶の味と香りを知って欲しい」という想いから、原材料から抽出方法までこだわって作り上げた、新しいおもてなしのお茶の提案です。

日本茶ノ生餡【おいしい日本茶研究所】

原料に、静岡産の高品質な茶葉を贅沢に使用し、酵母とビタミンのみで特殊加工した日本茶のペーストです。茶葉を丸ごと使用して作られており、豊かなお茶の風味が楽しめるだけではなく、栄養分(カテキン、ポリフェノール、ビタミンなど)をあますところなく摂取できます。着色料や着香料は一切入っていません。

日本茶ノ生餡

溶けやすいペーストなので使いやすく、お米に麺類に、ソースやドレッシングに、出汁とともに、またスイーツやデザートに、その用途は自由自在です。

若い人たちに向けたお茶の新しい入口として立ち上げた新ブランド「おいしい日本茶研究所」の一番人気商品です。

インタビュー : 老舗が手掛ける新しいお茶のかたち。「おいしい日本茶研究所」が広げる新食文化を世界へ

茶通亭代表取締役植松崇宏社長

茶通亭代表取締役の植松崇宏社長にお話を伺いました。


「茶通亭」と「おいしい日本茶研究所」- 伝統を守りながら新しさを追求する老舗

–茶通亭について教えていただけますか?

茶通亭の始まりは、1909年に初代・植松与作が前身の会社を創業したことにさかのぼります。当初は海外へのお茶の輸出をメインとしつつ、さまざまな商材を取り扱いながら事業を拡大しました。

2代目・植松與作の時代には、本格的にお茶屋としての事業を開始しました。最新の設備をいち早く導入するなど、常に新しい技術を取り入れてきました。

そして3代目・植松與策が社長に就任し、1992年に株式会社茶通亭が設立されました。


▲茶通亭の前社長3代目の植松與策さん。

その後、いくつかの営業所や工場を開設し、2012年に私が4代目の代表取締役に就任しました。現在、茶通亭は次の2つのブランドを軸に事業を展開しています。

・ソムリエブレンド煎茶など、伝統的な日本茶を届ける「茶通亭」
・若者向けに新しいお茶文化を提案する「おいしい日本茶研究所」

–茶通亭は2つのブランドをもっているのですね。

はい。「茶通亭」では、伝統的な日本茶を守り続け、一方で「おいしい日本茶研究所」では、新しいお茶の楽しみ方を提案しています。


選りすぐりの茶葉と熟練茶師の技術が生み出す。茶通亭のソムリエブレンド煎茶

–茶通亭のソムリエブレンド煎茶について教えていただけますか?

ソムリエブレンド煎茶は、茶通亭が自信を持ってお届けする高品質なリーフ茶です。このお茶の味と香りは、次の3つの柱に支えられています。

1つ目は、全国から選りすぐられた契約茶農家からの仕入れです。茶通亭は、静岡をはじめとする全国の名産地から、選りすぐりの茶農家と契約しています。各茶農家の生産管理記録を保管することで、優れた品質と高い安全性が保証されています。

2つ目は、「芽重型」仕立ての栽培方法です。この方法では、茶樹から生える葉の数を制限し、一芽に旨味を凝縮させます。こうして育てられた茶の芽は、濃厚な旨みを持ち、お茶の風味を引き立てる最高の荒茶(製茶する前の原料としての茶葉のこと)になります。


▲仕入れた荒茶を製茶工場で仕上げます。最終工程の遠赤外線の火入れ加工機では、茶葉や芽の大きさごとに丁寧に仕分けて、それぞれの形状に適した焙煎加工を行い、お茶のコクと旨味、香りを引き出します。

最後は、茶通亭の熟練茶師による「合組(ブレンド)」です。複数の品種を巧みにブレンドし、単一品種では味わえない深みのある香りと味わいを引き出しています。

お茶は農作物であり、毎年の出来栄えは異なりますが、茶通亭の茶師たちはその年の最高の原材料を「その年の最高の味」に仕上げています。

–ソムリエブレンド煎茶はリーフ茶のみの販売ですが、若者には急須を持たない人も多いです。ティーバッグでの展開を考えていますか?

ティーバッグにすると、どうしてもお茶の味が変わってしまいます。茶通亭がこだわり抜いて作った「ソムリエブレンド煎茶」は、ぜひリーフ茶で楽しんでいただきたいですね。

とはいえ、若者の多くが急須を持っていないのも事実です。そこで新たに「おいしい日本茶研究所」というブランドを立ち上げました。

味わうだけじゃない!茶葉を丸ごと楽しむ「日本茶ノ生餡-おいしい日本茶研究所-」の魅力

「おいしい日本茶研究所」は、2018年に立ちあげた新しいお茶ブランドです。日本茶の敷居を低くし、若い世代にも気軽に楽しんでもらえることを目指しています。

–特に若い人たちがお茶に触れる機会を増やすために立ちあげたブランドなのですね。

はい。ラインナップはリーフ茶にとらわれず、様々な形のお茶を揃えています。日本茶ペースト「日本茶ノ生餡」、お茶コーティング米「日本茶ノ米」、葉書型のお茶「日本茶郵便」、ティーバッグ、など、多岐にわたる商品があります。

–特に人気の商品はありますか?

人気なのは日本茶のペースト「日本茶ノ生餡」です。緑茶・焙じ茶・抹茶・和紅茶の4種類があります。

–この「日本茶ノ生餡」は茶葉を丸ごと楽しめるということですか?

そうです。「日本茶ノ生餡」は、まさに「食べるお茶」です。通常、お茶を飲む際、茶葉から抽出される栄養素は全体の3割程度ですが、「日本茶ノ生餡」なら茶葉の成分を余すところなく摂取できるのです。

お茶の風味を楽しめるだけでなく、栄養価も高いので、ぜひ日常の食事に取り入れていただきたいですね。

–ペースト状なら、いろいろな使い方ができそうですね。

スイーツやパンに加えたり、牛乳に溶かしてラテにしたり、アイスクリームにかけてソースとして楽しむのもおすすめです。使い方に迷ったときは、まずお茶ごはんに挑戦してみてください。

お米1合に対して「日本茶ノ生餡」5g(小さじ1杯)を混ぜて炊くだけで、爽やかなほろ苦さと深い味わいのお茶ごはんが完成します。炊いている間から芳ばしいお茶の香りが広がりますよ。


▲通常お茶や抹茶でご飯を炊くと加熱によって茶色がかってしまいますが、特殊技術で製造された「日本茶ノ生餡」を使って炊いたお茶ごはんは、美しいお茶色に仕上がります。

–メディアやユーザーからの反響はありますか?

「日本茶ノ生餡」は、メディアで取り上げられ、多くの方々にご愛用いただいています。特に、緑茶や焙じ茶はお茶ごはんに、紅茶ペーストはお菓子作りやドリンクに活用されることが多いです。

インスタグラムなどのSNSでは、さまざまなアレンジが投稿されており、私たち自身も新たな使い方に気づかされ驚かされることがあります。

細胞レベルで愛される日本茶の可能性を信じて。世界に届けたい伝統と新しいお茶のかたち

–「茶通亭」と「おいしい日本茶研究所」。まったく異なるコンセプトのブランドを2つの軸として展開されていますが、茶通亭のような老舗が「おいしい日本茶研究所」のような新ブランドを立ち上げるのは、難しい挑戦だったのではないでしょうか?

どの分野でも言えることかもしれませんが、新しい試みに挑戦すると、最初は批判の声が上がるものです。「おいしい日本茶研究所」も、スタート時には多くの批判を受けました。特に、日本茶のような伝統産業においては、こうした取り組みは抵抗感が強く、当初の反応は非常に厳しいものでした。

しかし、少しずつメディアからの取材が増え、その反響を通じて徐々に手応えを感じるようになりました。今では、弊社が誇る新しい日本茶の形として、多くの支持をいただいています。

お茶の魅力は、まだまだ伝えきれていない部分が多くあります。私たちがその素晴らしさを伝えきれていないだけです。だって「日本人は細胞レベルでお茶が好き」なのですから。

–「日本人は細胞レベルでお茶が好き」ですか。面白い表現ですね。

はい。茶処静岡で100年以上続く歴史の中で多くの経験を積んできましたが、このことは自信をもって言えます。

日本茶の伝統を守りながら、その魅力を未来へと伝えていきたい。そのためにも日常にお茶を取り入れた文化を根付かせる活動を続けていきます。これからは日本国内にとどまらず、海外にも日本茶の魅力を広めていきたいですね!

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茶通亭の情報・購入方法

住所 〒410-0873 静岡県沼津市大諏訪555
ホームページ http://www.cha2tei.com/
電話番号 055-920-0025
電子マネー・カード決済 非対応
営業時間 午前9時〜午後5時
定休日 日曜・祝日定休
駐車場 あり
アクセス 車の場合

東名高速道路 沼津ICより約15分

電車の場合

JR片浜駅よりタクシーで約5分

 

この記事を書いた人 Norikazu Iwamoto
経歴 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~23年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。

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