お茶と人をむすぶ。静岡・御前崎発の日本茶カフェまるよ茶屋の仕掛け【静岡県・御前崎市】

静岡県最南端、御前崎市に位置する日本茶カフェ「まるよ茶屋」は、「人とお茶をむすぶ」をコンセプトに掲げています。創業75年以上の歴史を誇る製茶問屋・赤堀商店が手がける高品質な深蒸し茶を中心に、遠州地域の豊かな食材を活かしたカフェメニューも提供しています。店内には、来店者自身が好みのブレンド茶を作れる呈茶コーナーや、暮らしに寄り添う厳選アイテムが並び、さまざまなお茶の楽しみ方を提案しています。
この記事では、まるよ茶屋が目指す「お茶と人をむすぶ」取り組みと、こだわりのカフェメニューについて、オーナー・赤堀大貴さんへのインタビューを交えてご紹介します。
目次
まるよ茶屋とは
まるよ茶屋は、静岡県最南端の御前崎市にある日本茶カフェです。運営しているのは、創業75年を超える製茶問屋「赤堀商店」の子会社「売茶坊まるよ」です。
まるよ茶屋の外観で目を引くのは、長い軒下です。ここには、ドラム式合組機、坪庭、テイクアウト専用の窓口が並び、入口に向かって続いています。
また、ロードバイクが盛んな御前崎御前崎市ならではの特徴として、ロードバイク用のスタンドも設置されています。これらは、訪れる人々に人気のフォトスポットとなっています。
店内に足を踏み入れると、天窓から柔らかな日差しが差し込みます。店内を通り抜けると、裏口からは芝庭に出ることができ、芝庭のテラス席で、テイクアウトのお茶やおむすびを楽しむことができます。
まるよ茶屋は、小売りコーナー・カフェコーナー・呈茶コーナーの3つのエリアで構成されています。茶器や陶器は、瀬戸焼などの上質なものから、日常使いに便利なお手頃アイテムまで、幅広く取り揃えられています。平台には、スタッフが厳選したお茶に合う茶菓子が美しく並び、目でも楽しめる工夫が施されています。
提供されるお茶は、隣接する赤堀商店の仕上げ工場から直送される高品質な深蒸し茶です。
▲まるよ茶屋のお茶は隣接する赤堀商店で作られています。
また、オープンケースの冷蔵庫には、テリーヌやマカロンといったスイーツが並び、カフェメニューとしても提供されています。カフェコーナーで味わってから購入を検討するのもおすすめです。
店内の掲示板には、毎月の催し物やキャンペーン情報が掲示されています。例えば、毎月4の付く日には、イベントやポイント4倍の特典などが提供されます。
お茶のブレンド体験ができる呈茶コーナー
小さな一段上がったスペースに設けられた呈茶コーナーでは、プロのティーマイスターの監修のもと、お茶の飲み比べやブレンド(合組)体験ができます。(WEBまたは電話での事前予約が必要です。)
お茶はさまざまな品種をブレンド(合組)することによって、奥深く複雑な味わいが生まれます。旨味のあるお茶、香り高いお茶、水色が鮮やかなお茶をブレンドするのも良し、玄米や生姜、柚子などでアクセントを加えるのも良し。アイデア次第で、自由自在に楽しめます。
自分の感覚を信じて、ぜひ自分好みのお茶を作り上げてみてはいかがでしょうか。
袋井にオープン。「まるよ茶屋 可睡の杜」2号店は「健康」がテーマの新拠点
2022年3月、袋井市に「まるよ茶屋 可睡の杜」の2号店がオープンしました。この店舗は、クリニックと調剤薬局が同一敷地内に併設された、小規模な医療モールのような形態が特徴です。
まるよ茶屋では、各店舗ごとに異なるテーマを掲げており、「可睡の杜」では「健康」をキーワードに、地域住民に寄り添ったサービスを展開してく方針だそうです。
周辺には、四季折々の花が楽しめる「可睡ゆりの園」や、歴史ある寺院「可睡斎」などの観光スポットが点在しており、ドライブの途中にふらっと立ち寄るのにもぴったりのロケーションです。
地元愛あふれる味。まるよ茶屋のメニューを紹介
静岡県御前崎市は、海と山に囲まれた豊かな自然に恵まれ、地元の食材が豊富です。そんな御前崎市にある「まるよ茶屋」では、地元食材を活かした料理と高品質な深蒸し茶を組み合わせたカフェメニューを提供しています。ここでは少しだけその人気メニューをご紹介します。
おむすびセット
まるよ茶屋の一番人気メニュー、おむすびセット。お味噌汁、漬物、玉子焼き、日替わり小鉢2品、おむすび2個がセットになっています。食事にぴったりのお茶「茜」と一緒に提供されます。
おむすびの種類は、うめ、おかか、しゃけ、明太子、ツナマヨ、こんぶ、塩むすびから選べます。プラス50円で、夢咲牛しぐれ、クリームチーズ佃煮、または本日のおむすびを追加することもできます。
おむすびに使用される米は、「ミルキークイーン」という品種。粘りが強く、モチモチとした食感が特徴で、おむすびにぴったり。また、お味噌汁には御前崎市の天然水を使用し、塩は御前崎ブランド認定品の「なぶら塩」を使用するなど、地元食材がふんだんに使われています。
お茶漬けセット
まるよ茶屋のお茶と、手火山かつおのお出汁が絶妙に絡み合うお茶漬けは、遠州地域の食文化を存分に味わえる一品です。デザートには、つゆひかりプリンをつけて、まるよのお茶づくしを堪能することもおすすめです。
つゆひかりパフェ
まるよ茶屋のイチオシ品種茶「つゆひかり」を使用したパフェ。テリーヌは、一口食べると鼻から抜けるお茶の風味に思わず「ん~っ♪」と悶える美味しさ。透明なグラスから覗く色鮮やかなフルーツは、季節によって変わります。
まるよ茶屋のきまぐれプレート
まるよ茶屋おすすめのスイーツ3点盛りのプレートです。季節ごとにスイーツの内容が変わり、お店を訪れる時期の旬を感じることができます。
▲夏に時期は、水羊羹が見た目にも涼しげです
インタビュー:お茶と人をむすぶカフェへ。まるよ茶屋が描く、地域と共に歩むこれから
赤堀商店専務取締役であり、まるよ茶屋のオーナーでもある赤堀大貴(写真の一番右)さんにお話を伺いました。
地域密着の老舗茶屋がカフェに転身。「まるよ茶屋」の挑戦と進化
もともと「まるよ茶屋」は、「売茶坊まるよ」というお茶の小売店でした。この店は、創業75年を迎える製茶問屋・赤堀商店の子会社にあたります。カフェ業務は当初一切行っておらず、純粋にお茶を販売する店舗でした。
▲これまでに赤堀商店は、お茶の仕上げ技術で農林水産大臣賞のなど、数々の賞を受賞しています。
近年、急須で淹れて飲むリーフ茶(お茶の葉を使ったお茶)を飲む人が減少しつづけています。私たちはお茶の評価を高めるべく、2017年に「売茶坊まるよ」を日本茶カフェ「まるよ茶屋」へとリニューアルし、より積極的にお茶の魅力を発信することを決意しました。
現在、まるよ茶屋は赤堀商店の子会社である「売茶坊まるよ」が運営しています。
–小売店からカフェへの転換は大きな決断だったと思いますが、いかがでしたか?
幸い、周囲には多くの住宅地があり、長年「売茶坊まるよ」を愛してくださっているお客様もいらっしゃいました。お客様との大切な繋がりを築き上げてきたこれまでの活動を信じて、思い切ってカフェ業への転換を決断しました。
–どのようにお店作りを進めていったのでしょうか?
古くからの付き合いのある大阪のデザイン会社に、私たちのコンセプトに合った設計士を紹介していただきました。「売茶坊まるよ」のレイアウトを最大限に活用し、何度も打ち合わせを重ねながら進めました。改装工事だけでも半年ほどかかりました。
お茶を「眺めて、歩いて、味わう」。まるでウィンドウショッピングな茶屋体験
まるよ茶屋には、お茶と人をむすぶ様々な仕掛けが施されています。まず、お茶の陳列棚は店の入口に沿うように設置しており、これによりお客様が入りやすい雰囲気を作り出しています。
また、店の奥にある裏口の扉は常に開放されており、お客様は店内を通り抜けて庭に出ることで、まるでウィンドウショッピングを楽しんでいるかのような体験ができます。これが非常に好評で、気軽に裏口から入ってこられるお客様も多いです。
事務所兼小売りスペースだった場所は、カフェエリアに改装しました。席は芝庭側と坪庭側に分かれており、芝庭側はご家族連れ、坪庭側は少人数で楽しむ方々に人気です。
お客様に時間を忘れてゆっくりと寛いでいただきたいという想いから、カフェエリアをはじめ、まるよ茶屋には時計を置いていません。また、長時間座っても疲れにくい、上質な椅子をご用意しています。
▲茶箱を活用したディスプレイや、再生紙を使った灯りなど、随所に目を惹く工夫が施されています。▼
カフェエリアで一休みされた方が入口へ向かう際、視線の先にお茶の陳列棚が設置されています。美濃焼のグリーンの壁を背景にしたその棚は、まるでお茶が茶畑に囲まれているように感じられるでしょう。
–なるほど。お茶棚の背景に緑を用いているのは、茶畑をイメージしているからなのですね。
飲んで感じる、まるよ茶屋のこだわり。「つゆひかり」と「みなみさやか」の魅力
–陳列棚を見ると、まるよ茶屋は「つゆひかり」を特に推しているようですが、何か理由があるのですか?
御前崎市は「つゆひかり」の栽培面積が多く、地域としても強く推している品種です。この茶は、水色が鮮やかな緑色で見た目が美しく、香りも爽やかです。
甘味、渋味、苦味のバランスも良く、ビギナーにも受け入れられやすいため、今の時代にぴったりのお茶だと思います。そのため、私たちも早くから「つゆひかり」の製造に着手しました。
まるよ茶屋の「つゆひかり」は、合組、シングルオリジン、スイーツとしてもご用意しています。どれも自信作です。
–もうひとつ、「みなみさやか」という品種茶も推しているようですね。
はい。「みなみさやか」は、以前開催した茶畑の改植体験で、近隣の子どもたちと一緒に植えた品種です。良質に育ちましたので、香り緑茶として仕上げてみたところ、非常に素晴らしい出来になりました。
–香り緑茶というのは、初めて聞きました。
「みなみさやか」は、発酵茶や釜炒り茶として仕上げることで本来の魅力が引き出せるお茶なのですが、今回はあえて香り緑茶に仕立ててみました。すると、天然のジャスミンのような芳しい香りが生まれたんです。
見た目は普通の緑茶ですが、飲んでいただくと、その香りとのギャップに多くの方が驚かれます。
–実際に「みなみさやか」を飲んでみて驚きました。見た目は緑茶でも、香りは全く違うのですね。
はい、おかげさまで大変ご好評をいただいておりまして、まるよ茶屋の特製・香り緑茶として商品化することに決めました。
手におむすび、もう片手にお茶。御前崎発・まるよ茶屋のヒットメニュー戦略
カフェを開くにあたって、重要なのが、お茶に合わせる食べ物です。事前にリサーチを行ったところ、駅地下の売店でおむすびが多く販売されており、そのすぐ近くでペットボトルのお茶も売られていることに気付きました。
その光景を見て、私は「人々がお茶を飲む時はおむすびを食べているのだ」と感じ、まるよ茶屋のメインメニューとしておむすびを選ぶことに決めました。
–確かに、おむすび片手にもう一方の手で持つ飲み物はお茶が多い傾向がありますね。
おむすびの傍にお茶のニーズがあると知ったときは、非常に嬉しかったですね(笑)。おむすびはレパートリーが広げやすく、テイクアウトにも向いています。そして、おむすびが売れることでお茶の認知度も高められる!これで、まるよ茶屋はおむすびで勝負だ!と確信しました。
–人々がおむすびに飽きることはないでしょうから、長く続けられそうですね。それにしても、おむすびのバリエーションが本当に豊富ですね。
ここ御前崎は海と山に囲まれており、食材が非常に豊富に手に入ります。そうした地の利を活かし、多彩なおむすびをまるよ茶屋ならではの価格で提供しています。もし都心であれば、この価格で提供するのは難しいかもしれませんね。
まるよ茶屋ではおむすびはもちろん、他のメニューにも力を入れています。年に2回スタッフでメニュー会議を開き、厨房には専属のシェフもいます。さらに、YouTubeチャンネルでは「つゆひかりグラニータ」や「プリンアラモード」の作り方を配信していますよ。
お茶と人をつなぐ緑の傘。アオダモの樹が育む「結び」のかたち
実は、まるよ茶屋の芝庭には、これからがとても楽しみなお茶と人を結ぶ仕掛けがあります。それが、芝庭に植えたアオダモの樹です。
まだ植えてから約8年ほどですが、この樹は成長を続けると、枝を巨大な傘のように広げ、穏やかな木漏れ日を演出してくれるでしょう。
アオダモの樹の下で、木漏れ日に揺られながらテイクアウトしたお茶とおむすびを味わう――そんなひとときは、きっと楽しいものになるはずです(笑)。
2017年に日本茶カフェを始めて以来、おかげさまでまるよ茶屋は、老若男女問わず、幅広い年代のお客様に親しまれる日本茶カフェとなりました。これからもたくさんのお茶と人を結ぶ取り組みに挑戦していきます。
おすすめ記事 : 静岡のお茶と絶品ランチ!お酒も楽しめるおすすめグルメスポット5選をご紹介
おすすめ記事 : 抹茶好き必見!お茶の名産地・静岡で味わうおすすめ抹茶スイーツ特集
おすすめ記事 : 赤い急須が目印!太田茶店が紡ぐおもてなしの心。和食文化で味わう特別なお茶時間【静岡県・周智郡森町】
おすすめ記事 : GOOD TIMING TEA(グッドタイミングティー)が提案する日本茶愛と心地良さが溢れる空間【静岡県・静岡市】
まるよ茶屋の情報
住所 | 〒437-1615 静岡県御前崎市門屋1950-2 |
ホームページ | https://maruyo-chaya.com/ |
SNS | |
電話番号 | 0120-04-6089 |
電子マネー・カード決済 | 対応済 |
営業時間 | 物販9:00~18:00
カフェ・呈茶10:00~17:00 |
定休日 | 水曜日(4日・14日・24日・祝日は営業) |
駐車場 | あり |
アクセス | JR掛川駅北口よりしずてつバス大坂線御前崎行きで、「蒲池」バス停下車すぐ |
まるよ茶屋 可睡の杜の情報
住所 | 〒437-0127 静岡県袋井市可睡の杜51-9 |
ホームページ | https://maruyo-chaya.com/kasui/ |
SNS | |
電話番号 | 0538-24-8668 |
電子マネー・カード決済 | 対応済 |
営業時間 | OPEN 09:00 / CLOSE 17:00 (※ラストオーダーは16:30まで)9:00~10:00 モーニングメニュー、テイクアウト、物販 ※10時より通常営業メニュー |
定休日 | 水曜日(祝日は営業) |
駐車場 | あり |
アクセス | JR掛川駅北口よりしずてつバス大坂線御前崎行きで、「蒲池」バス停下車すぐ |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介される。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |