茶道からカフェまで。ふじのくに茶の都ミュージアムで学び楽しむ日本茶文化の1日【静岡県・島田市】

静岡茶は、鎌倉時代に聖一国師が中国から持ち帰った茶の種を起源としてます。明治維新後には大規模な茶園開墾が進み、静岡県の牧之原台地は日本茶の一大産地へと成長しました。それ以来、茶業の発展に大きく貢献しています。2018年3月には、この牧之原台地に、世界でも珍しいお茶の博物館「ふじのくに茶の都ミュージアム」がオープンしました。
このミュージアムでは、茶摘みや手揉み、抹茶挽き、茶道などのお茶体験が楽しめるほか、日本庭園やカフェレストラン、ショップ、そして茶産業の歴史を学べる常設展もあり、1年を通じてお茶の魅力を堪能できる多彩なコンテンツが揃っています。
この記事では、「ふじのくに茶の都ミュージアム」の魅力についてご紹介します。
目次
ふじのくに茶の都ミュージアムとは
「ふじのくに茶の都ミュージアム」は、静岡県の大茶園・牧之原台地に位置するお茶専門の博物館です。。
元々はは島田市のお茶の郷博物館だった建物が、2018年3月24日にリニューアルオープンしました。常設展、茶室、庭園、商業館など、さまざまなコンテンツで構成された、お茶の魅力を伝える博物館として生まれ変わりました。
毎年4月と5月の新茶時期は、生産者が収穫で多忙になるため、イベントなどに制限がかかることもありますが、ふじのくに茶の都ミュージアムでは年間を通じてお茶のセミナーやイベントが開催されています。詳細については公式ホームページでご確認いただけます。
▲外観は「吹き寄せ」というデザインで囲まれており、シンボルマークと同じモチーフが使われています。使用されているヒノキは静岡県産▼
入口へ向かうと、著名な庭園デザイナー石原和幸氏が手掛けた、現代風の美しい中庭が出迎えてくれます。中庭を正面に見て、右手に茶室と日本庭園、左手に博物館が位置しています。
世界と日本のお茶を巡る博物館──ふじのくに茶の都ミュージアムを歩く
博物館では、茶摘み、手揉み、抹茶挽き、茶道などのお茶体験ができるほか、お茶の産業、歴史、文化に関する展示も行われています。
1階の書庫には、お茶に関する豊富な資料が揃っており、歴史、文化、産業について深く学ぶことができます。
▲これらはすべてお茶に関する資料です。なお、貸し出しは行っていないとのことです。
2階では、各種セミナーやイベントの受付が行われています。そのまま3階に進むと、開放感あふれる富士山展望ホールに到着します。ここでは、静岡茶が振舞われています。
大きな窓の向こうに広がる美しい富士山を眺めながら、ウェルカムティーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
お茶の起源から、世界の喫茶文化へ──ふじのくに茶の都ミュージアム常設展
「お茶」と一口に言っても、その香り、味、水色などは非常に多様で、さまざまな種類があります。ふじのくに茶の都ミュージアムの常設展では、世界各国のお茶について、その知識、技術、伝統、歴史を深く紹介しています。
▲展示場の中央には、お茶の起源とされる中国雲南省の「茶樹王」のレプリカが展示されています。樹齢はおよそ1000年です。
壁面グラフィックでは、世界中の多彩なお茶について、水色、植物としての特徴や製造方法、さらには各国の喫茶文化についても紹介されています。
▲実際に茶葉に触れ、香りや触感を体験することができます。
また、世界各地の喫茶文化を再現したリアルな造形建築は、まるで現地に足を運んだかのような気分にさせてくれます。これらの実物資料に加えて、映像や実演を交えた展示紹介が行われており、子供から大人まで幅広い世代が楽しめます。
撮影可能エリアはここまで。以降のエリアでは、日本茶に関する技術、歴史、産地などが展示されています。
熱と香りを手に感じる。「手揉み保存会」直伝の本格手揉み体験
「ふじのくに茶の都ミュージアム」では、静岡県茶手揉保存会の講師から直接指導を受けながら、お茶の手揉み工程の一部を体験することができます。
▲事前に博物館2階の受付でチケットを購入し、体験が始まります。
現在、製茶には製茶機械が一般的に使用されていますが、かつては茶師と呼ばれる職人が手作業でお茶を揉んで仕上げていました。お茶の需要の高まりに伴い、茶師の手揉み技術を再現するため、機械化が進み、製茶機械へと移行したのです。
お茶の手揉みには多くの流派があります。現在、静岡県には8つの手揉み流派が存在し、これらの技術を後世に伝えるための「手揉み保存会」が各地で活動しています。静岡県には18の支部があります。
この体験では、静岡県手揉み保存会各支部が当番制で茶揉みの講師を務めており、各流派形式ではなく、標準的な手揉み技術の指導を受けることができます。
手揉みに使用される台は、茶葉の水分を飛ばすために下から熱せられており、揉んだ際に伝わってくる熱と、茶葉がプチッと弾ける感触が印象的です。ぜひ一度、実際に体験してその魅力を感じてみてください。
ピクニック気分でお茶を満喫!大茶園を一望できるティーテラス体験
ふじのくに茶の都ミュージアム博物館3階にある「牧之原大茶園展望テラス」では、ティーテラス体験を楽しむことができます。
まず、博物館2階の総合案内でティーテラス体験を申し込み、その後、発券機でチケットを購入します。
体験には、以下の2つのコースからお好きなものをお選びいただけます。
・バスケットタイプ:茶器、お茶、菓子を詰めたバスケットを持ち、ピクニック気分でお茶を楽しむコース。
・ワイングラスタイプ:高級ボトリングティーをワイングラスで楽しむコース。
バスケットタイプは、急須にハートマークがついていたり、お菓子がさすき園の大砂丘だったりと、小さな仕掛けが施されており、ちょっとした嬉しさを感じることができます。このテラスは博物館南側に位置し、約118㎡の広々とした空間です。大茶園を一望できるテラス席で、ゆったりとしたひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
このテラスは博物館南側に位置し、約118㎡の広々とした空間です。大茶園を一望できるテラス席で、ゆったりとしたひとときを過ごしてみてはいかがでしょうか。
静岡茶尽くし!「丸尾原」でしか味わえない贅沢なひととき
「ふじのくに茶の都ミュージアム」の敷地内に併設されているカフェレストラン「丸尾原」では、茶スイーツや茶懐石料理、静岡茶の飲み比べなど、静岡茶の魅力を存分に楽しむことができます。ラストオーダーは13:00、閉店は14:00です。
ざる蕎麦(ミニ角煮丼付き)
丸尾原オリジナルの特製抹茶蕎麦は、たっぷりの抹茶が練り込まれ、風味豊かに仕上げられています。静岡県産の香り高い本わさびを添え、ほうじ茶飯の上にはトロトロの角煮がのった丼がついています。食べ応えも十分で、抹茶蕎麦と一緒に堪能できます。
ふたいろ茶飯とろろ
2種類の茶飯をふんわり包み込むとろろ飯には、静岡県産の豚角煮とお吸い物がセットになっています。とろろ飯にはピリ辛ソースが添えられており、最初はそのままで食べ、後からソースをかけて食べることで、異なる味わいを楽しむことができます。
抹茶白玉
世界一濃い抹茶ジェラートで有名な「ななや」の抹茶ジェラートNO.3に、白玉と密漬け小豆が添えられたお茶スイーツです。濃厚な抹茶の風味を楽しみながら、甘さと苦みが絶妙に調和した一品です。
急須で淹れたお茶の飲み比べ
3種類のお茶を急須で淹れて飲み比べるセットです。お茶の種類は日替わりで、今回提供されたのは「つゆひかり」「花ここち」「玉露」の3種類。同じ緑茶でも、種類によって淹れ方や味が全く異なることに驚きます。詳しい淹れ方については、店員が丁寧に教えてくれるので、お茶に詳しくない方でも安心して注文できます。
甘味と一緒に注文すれば、さまざまなティーペアリングの楽しみ方も可能です。天気が良ければ、真正面に見える富士山を眺めながら、ゆっくりと食事を楽しむことができ、カップルのデートプランにもオススメです。
抹茶パフェから天然アロマ香水まで。静岡茶の魅力が詰まったミュージアムショップ
商業館1階にあるミュージアムショップでは、国内外の多彩な茶葉や茶菓子、茶器などを購入できるほか、特製のカフェメニューも楽しめます。
ショップの中でもひと際目を惹くのが、静岡の茶葉を用いて作り上げた天然アロマ香水「アロマパルファン・グリーンティーワールドシリーズ」です。
調香師・太田奈月氏が静岡の茶葉から抽出した天然緑茶アロマエッセンスに、世界各国の香料をブレンドして作り上げた天然アロマ香水は、世界各国から高い評価を得ている名品。試香しているだけでも楽しめます。
富士市の茶農家・山平園の園主、平柳利博さんが手がける希少な手揉み茶「極芽」も購入できます。
ショップ内にはイートインスペースが設けられており、お買い物の後にはお茶スイーツやボトリングティーの試飲などを楽しむことができます。
▲券売機でチケットを購入し、カウンターで注文します。
抹茶食べくらべパフェ
ななやの最も濃い抹茶ジェラート「NO7」、スタンダードな濃さの抹茶ジェラート「NO3」、ほんのり香る抹茶ジェラート「NO1」の3つが盛り付けられたパフェ。他にもミルクジェラート、生クリーム、スポンジ、クランチ、最中の皮、白玉、小豆、黒蜜と、多彩な甘味で彩られています。内容も量も大満足のスペシャルスイーツです。
抹茶ジェラートモンブラン
「NO3」の抹茶ジェラートとマロンクリームが絶妙に合わさった一品。マロンクリームの下に抹茶ジェラートが見えた瞬間、思わずテンションが上がってしまいます。
ワイングラスでボトリングティー飲み比べ(CRFT BREW TEA)
「いつでもどこでも誰にでも手軽に美味しいお茶を飲んでもらいたい」というコンセプトのもと、丸七製茶が新たに立ち上げたボトリングティーメーカー「CRFT BREW TEA」。
急須で淹れたお茶の美味しさをそのまま詰め込んだボトリングティー3種を、ワイングラスで優雅に嗜むことができます。
提供されるボトリングティーの種類は日替わり。この日は、宮崎産の「きらり31」、鹿児島産の「さきみどり 枕崎」、静岡産の「香駿 富士大淵」がラインナップされています。
小堀遠州の美意識を現代に。音声ガイドで味わう茶室と日本庭園のひととき
ふじのくに茶の都ミュージアムの日本庭園や茶室では、小堀遠州が確立した「綺麗さび(わび・さびの概念に王朝の雅と近世の優美を融合させた美の概念)」の世界が再現されています。
茶室内では、音声ガイドの詳しい案内を聞きながら、吹き寄せの障子や棚の透かし彫りなど、美麗なデザインの成り立ちや歴史を知ることができます。
事前に茶室入口の自販機で申し込むことで、鎖の間「臨水亭」で茶道体験を楽しむことができます。
茶道体験には準備に時間がかかることもあるため、その間に茶室の縦目楼(しょうもくろう)や茶屋尚峯居(こうほうきょ)、または日本庭園を散策するのも良いでしょう。
八橋、州浜、中之島の池、岩山など、風情ある景観が広がり、見ているだけで心が癒されます。
▲筑地堀を隔てた場所に架けられた八橋からは、富士山の美しい姿を見ることができます。
ふじのくに茶の都ミュージアムでは、今回紹介しきれなかったお茶体験がたくさんあります。お茶好きはもちろん、少しだけお茶に興味がある方や、家族連れ、デートにもおすすめできる楽しいお茶の博物館です。静岡に訪れた際には、ぜひ立ち寄ってみてください。
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~ふじのくに茶の都ミュージアムの情報~
住所 | 〒428-0034 静岡県島田市金谷富士見町3053-2 |
ホームページ | https://tea-museum.jp/ |
電話番号 | 0547-46-5588 |
電子マネー・カード決済 | 対応済み |
営業時間 | 午前9時から午後5時まで(入館は、午後4時30分まで)
入館料も300円 カフェレストラン「丸尾原」でのラストオーダーは1時30分です。14時には閉まりますのでお早めに。 |
定休日 | 毎週火曜日(ただし、火曜日が祝日の場合は開館し、翌日休館)、年末年始 |
駐車場 | あり |
アクセス | 東名高速道路「相良牧之原IC」から車で約10分 新東名高速道路「島田金谷IC」から車で約10分 国一バイパス「大代IC」から車で約10分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介される。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |