世界一長い木造橋「蓬莱橋」と、癒しの「897.4(やくなし)茶屋」へ。自然と歴史にふれる、心ほどける旅【静岡県・島田市】

南アルプスの標高3,000mにそびえる山々を源流とし、静岡県を流れて駿河湾に注ぐ一級河川・大井川。1879年(明治12年)1月13日、大井川に架けられた幅2.4m、長さ897.4mの蓬莱橋は、1997年12月30日に世界一長い木造歩道橋としてギネス世界記録に認定されました。この橋は地元の農道としてだけでなく、観光名所としても広く知られています。
2018年3月20日、蓬莱橋の袂に「蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋」がオープンしました。ここでは、蓬莱橋の歴史や島田のお茶、島田の逸品を楽しむことができます。
この記事では、蓬莱橋の成り立ちや、蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋の魅力について詳しくお伝えします。
目次
蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋とは
「蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋」とは、2018年3月20日に大井川に架かる世界一長い木造歩道橋「蓬莱橋」の袂にオープンしたお茶屋です。施設の整備と維持管理は島田市が担当し、運営は島田市観光協会が行っています
蓬莱橋の長さ879.4メートルが「厄無し」「厄払い」との語呂合わせから縁起の良い橋とされ、その蓬莱橋の袂に建設されたことから「蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋」という名前が付けられました。
▲大井川左岸に建てられた「897.4(やくなし)茶屋」は木造平屋建ての古風な佇まい。近隣にある島田宿大井川川越遺跡を連想させます。
入口から蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋に入ると、巨大な錦絵「頼朝公大井川行列図」(文久3年[1863年]、歌川芳艶作)が視界に飛び込んできます。
▲ステンドグラス風の丸窓は、897.4茶屋の丸い形のロゴマークを思わせます。
お茶の情報が記された黒板を背に設置されたカウンターからは、イートインやテイクアウトのお茶が提供されています。
茶箱を積み上げて作られた棚の上には、さすき園のラスクやお茶ペンなど、島田市のお土産が数多く展示されています。
茶屋の奥にある階段を上った場所からは、蓬莱橋と大井川を一緒に眺望できます。
蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋のカフェメニュー
蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋では、島田茶を活かした緑茶や和紅茶、ソフトクリームなどのカフェメニューを、イートインやテイクアウトで提供しています。ここでは、人気メニューを一部ご紹介します。
お茶(HOT/ICE)・和紅茶(HOT/ICE)・水出し緑茶
お茶は、注文を受けてから店員がサイフォン型の抽出機器を使い、じっくり丁寧に抽出してくれます。
水出し緑茶は、コーヒー抽出にも用いられるスロードリップ式。氷水で時間をかけて一滴ずつ抽出することで、凝縮された旨味と、自然を感じさせる爽やかな香りが楽しめます。希少な氷出し島田茶は、ぜひ味わっていただきたい逸品です。サイズはMサイズとSサイズがあり、取り扱うお茶の種類は時期によって変わります。
▲テイクアウトのお茶は、蓬莱橋を渡りながら楽しむのもおすすめです。
煎茶/ミルクソフトクリーム
煎茶味、ミルク味、そして煎茶とミルクをミックスしたダブルの3種類のソフトクリームをご用意。コーンかカップを選べます。
イートイン緑茶(茶菓子付き)
季節ごとのおすすめ茶葉を急須で淹れ、茶菓子とともに楽しめるイートイン緑茶セットも人気です。抽出時間をタイマーで測りながら、自分で淹れる一杯は格別。世界一長い木造橋「蓬莱橋」を眺めながら、特別なひとときを過ごせます。
事前に店員から淹れ方のレクチャーがあるため、初めての方でも気軽に楽しめます。
▲画像は、煎茶アイスもセットで注文した例です。
セットに添えられる茶菓子は、艶やかな真っ黒い丸形が特徴の「黒大奴」。島田市内で最も長い歴史を持つ老舗和菓子店「清水屋」の看板商品です。外側の羊羹のほのかな塩味と、こし餡の上品な甘さが絶妙に絡み合い、島田茶との相性も抜群。お土産にもおすすめの逸品です。
蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋では、寒い冬には「おしるこ」、暑い夏には「かき氷」や「ジェラート」など、季節に合わせたメニューも提供されています。
通行料を払ってでも歩きたい。ギネス認定のパワースポット「蓬莱橋」
蓬莱橋は、静岡県を流れる一級河川・大井川に架けられた木造歩道橋です。この橋は、南アルプスの標高3,000mの山々を源流に持ち、駿河湾へと注ぐ大井川に位置しています。国内でも数少ない「賃取橋」の一つであり、通行できるのは歩行者と自転車のみです。
通行可能な時間帯は8:30〜17:00で、橋の袂にある番小屋に常駐する橋番に料金を支払ってから渡ることができます。ただし、台風や暴風雨などの悪天候時には通行禁止となる場合があります。
蓬莱橋の名前の由来は、明治3年に当時の静岡藩主・徳川亀之助がこの地を訪れた際の言葉にあります。「農は里の宝 向こうの山は宝の山 みなで力をあわせ 宝の山を切り開けよ」と語り、対岸に架けられた橋が宝へと続く架け橋であることから「蓬莱橋」と名付けられました。
橋の長さは897.4m、通行幅は2.4mです。8974mという数字が「やくなし」という語呂合わせに由来し、縁起の良い橋とされています。また、蓬莱橋は「ふじのくにエンゼルパワースポット」に認定されており、1997年12月30日には世界一長い木造歩道橋としてギネス認定を受けました。
「越すに越されぬ」から「渡れる橋」へ。茶業開拓が生んだ蓬莱橋の歴史
江戸時代、大井川は駿府城の守りとして重要な役割を果たしていました。そのため、架け橋や渡し船が一切禁止されており、大井川を渡るためには、肩車で運んでもらうか、輦台(れんだい:神輿のような乗り物)を利用するしかありませんでした。
こうした川越を手伝う職業に就いた人たちは川越人足(かわごしにんそく)と呼ばれ、最盛期には1000人以上の川越人足で大井川近隣の宿場町は賑わっていたそうです。
江戸幕府14代将軍徳川家光が大井川を越える様子が描かれた錦絵には、「箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川」という民謡があり、大井川が東海屈指の難所であったことが伺えます。
時代が進み、1869年(明治2年)7月には、江戸の旧幕臣たちが大井川右岸にある牧之原を開拓し、茶業を始めました。茶業が盛んになる中で、川越人足に頼った対岸への渡航に不便を感じた開墾人たちは、時の静岡県令(現在の知事)に大井川に橋を架けれるように陳情に行きました。
▲茶畑の開墾には勝海舟の多大な助力があり、蓬莱橋の袂にはその銅像が建てられています。
この陳情が認められ、1879年(明治12年)1月13日に、牧之原台地と東海道の島田宿を結ぶ蓬莱橋が架けられることになりました。
こうして蓬莱橋は農道として重要な役割を果たし、牧之原は全国有数の茶園地帯へと発展します。現在も農道として利用され、観光名所としても親しまれています。
貴重な歴史的建造物でもある木造の蓬莱橋は、大井川の増水や氾濫のたびに損傷を受け、1965年4月に橋脚をコンクリート製に改修しました。それ以降も、台風などによる損傷が続き、数年ごとに復旧作業が行われています。
日本一長い木造歩道橋、蓬莱橋を歩く。吸い込まれる大井川の絶景は贅沢な散策
蓬莱橋は、その長さから視線の先にゴール地点が見えません。橋を渡り、向こう岸に到達してから引き返すまでには、およそ30分ほどかかります。
晴れた日には、大井川を吹き渡る心地よい風と穏やかな日差しが楽しめます。水面の煌めきや清流のせせらぎの音、遠くに見える富士山、反対側には掛川東山の茶文字が広がり、雄大な自然を存分に堪能することができます。また、橋の欄干の高さが50cmと低いため、まるで大井川に吸い込まれていくような錯覚を覚えます。
▲橋の真ん中の位置には橋板にど真ん中と記されています。
2003年3月には蓬莱橋にLEDが設置され、日没後、緑色の灯りが橋の輪郭を幻想的に浮かび上がらせます。週末には、21時までライトアップが楽しめます。
橋を渡った先の対岸には散策路があり、小さな露店や長寿祈願の鐘、七福神像などのご利益スポットが点在しています。
▲対岸の露店では、静岡県民でも滅多にお目にかかれない珍しい飲料を楽しむことができます。
蓬莱橋は映画やドラマのロケ地としても頻繁に使用されており、年間15万人以上が訪れる市内有数の観光地となっています。また、美味しい島田茶が楽しめる「蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋」ができたことは喜ばしいニュースです。広大な無料駐車場も完備されており、交通アクセスも便利です。観光や散策後には、ぜひ「蓬莱橋897.4茶屋」で一服してみてください。
~蓬莱橋897.4(やくなし)茶屋の情報~
住所 | 〒427-0017 静岡県島田市南2丁目地先 |
ホームページ | http://shimadagreenci-tea.jp/drink-buy/8974chaya.html |
電話番号 | 0547-32-9700 |
電子マネー・カード決済 | 対応済 |
営業時間 | 4月~9月/9:00~17:00、10月~3月/9:00~16:00 |
定休日 | 年中無休 |
駐車場 | あり(40台以上) |
アクセス | 東名「吉田IC」から車で15分 新東名「島田金谷IC」から車で20分 JR東海道線「島田駅」から徒歩20分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |