chagama(チャガマ)が若い世代にお茶を広める入口に【静岡県・静岡市】

OCHATIMES編集部
chagama(チャガマ)が若い世代にお茶を広める入口に【静岡県・静岡市】

新静岡駅北口に隣接する「鷹匠」エリアは、駅近でありながらも落ち着いた雰囲気が魅力の人気住宅街です。一歩路地に入ると、個性豊かなショップが点在し、ゆったりとした時間を楽しみながら散策することができます。

今回は、そんな鷹匠に店を構える日本茶専門店「chagama(チャガマ)」を取材しました。「お茶をもっと楽しく、身近に感じてほしい」という想いのもと、常時50種類以上のお茶の試飲体験を提供し、日本茶専門店ならではの高品質なカフェメニューを展開するなど、さまざまな角度から日本茶の魅力を発信しています。

本記事では、chagamaのコンセプトや開業の経緯について、店長へのインタビューを交えながらご紹介します。

chagama(チャガマ)とは

Chagama(チャガマ)は、静岡市鷹匠にある日本茶専門店です。運営するのは、1877年創業の老舗製茶問屋「マルモ森商店」。厳選されたお茶や茶器の販売に加え、常時50種類以上のお茶の試飲体験やカフェメニューを提供しています。

chagama(チャガマ)を運営するマルモ森商店とは

マルモ森商店は、1887年創業の老舗製茶問屋です。製茶問屋の主な役割は、茶農家から仕入れた荒茶(消費者の手元に届く前の原材料となる茶葉)を、より美味しく洗練されたお茶に仕上げ、小売店へ卸すことにあります。

お茶の味を決定づける重要な工程が、「合組(ごうぐみ)」と呼ばれるブレンド作業です。

合組では、異なる産地の茶葉を組み合わせることで、それぞれの特徴を活かし、より深みのある味わいを生み出します。使用する茶葉の種類は、7~8種類のときもあれば、14~15種類に及ぶこともあり、目的に応じて異なります。

マルモ森商店のような製茶問屋が複数の茶園の茶葉を合組することで、単一の茶葉では生み出せない豊かな味わいや香りが生まれます。こうしたお茶は「合組茶」または「ブレンド茶」と呼ばれます。

合組によって生まれるお茶の美味しさは、製茶問屋の品質を左右する重要な要素であり、この作業を担当するのは長年の経験を積み、技術を磨き上げたプロの茶匠(ちゃしょう)のみです。

マルモ森商店の合組を手掛けるのは、森宣樹氏。彼は、日本に約30人しかいない日本茶鑑定士であり、茶審査技術九段に認定されています。最高の美味しさを追求し、幾通りもの組み合わせを試したうえで、最適な合組を決定。その結果、丁寧に仕上げられた合組茶が、お客様のもとへ届けられています。

マルモ森商店のこだわりが詰まった合組茶。長年培われた技術と確かな審査眼によって生み出される、奥深い味わいをぜひご堪能してみてはいかがでしょう。(一方、単一の茶園で生産された茶葉のみを使用して仕上げたお茶は、「シングルオリジン(生産者の個性が活きる単一品種茶)」と呼ばれます。一般的に、市場に流通するお茶の多くは、合組によって作られたブレンド茶です。)

chagama(チャガマ)では、茶葉の最小サイズとして50グラムの商品を用意しています。透明なフィルムで可愛らしく包装されており、陳列された茶葉の様子を直接見ることができます。


▲▲透明フィルムのパッケージにはUVカット加工が施されているため、紫外線による茶葉の劣化を防ぎます。

また、茶器やお茶菓子など、お茶にまつわるさまざまな商品も取り揃えています。

茶壷壁一面を埋め尽くす光景が壮観な試飲コーナー

店内に入ると、まず目を引くのが壁一面にずらりと並ぶ茶壷の数々。

これらの茶壷には茶葉が収められており、chagama(チャガマ)では常時50種類以上のお茶が用意されています。試飲コーナーでは、そのすべてを自由に試すことができます。

ホッと心和らぐ煎茶、香ばしいほうじ茶、まるでお出汁のような深い旨味を感じる玉露、華やかな香りが魅力の和紅茶、さらには、まるでイタリアンを思わせるバジル風味のフレーバーティーまで。どれも、お茶の奥深さを存分に感じさせてくれる逸品ばかりです。

▲店員の方にお願いすると、目の前で急須を使い、丁寧にお茶を淹れてくれます。
▲カリスマホスト・ローランドも愛飲する“不老不死のお茶”(バタフライピーのお茶)は、レモン果汁を加えると色が変わり、見た目にも楽しい一杯に。

さらに、お茶を淹れる際に使用するお湯は鉄窯で沸かしています。鉄窯の鉄分が水中の雑味を吸着・除去することで、口当たりが柔らかくなり、お茶本来の魅力が一層引き立ちます。

5感で楽しむ、日本茶の世界をぜひ体験してみてください。

chagama(チャガマ)のカフェメニュー紹介

chagama(チャガマ)では、日本茶専門店ならではの本格的なお茶を使用したカフェメニューを楽しめます。ここでは、その一部をご紹介します。


▲chagama(チャガマ)特製のエスプレッソマシン

左から、エスプレッソマシンで淹れた「煎茶エスプレッソ」、まろやかな「煎茶ラテ」、そして「本格急須出し煎茶」。どれも日本茶の魅力を存分に味わえる一杯です。

スパイスの効いたチャイは、寒い冬にぴったり。体の芯から温まりたいときにおすすめです。

週末の夜はchagama night(チャガマナイト)としてBARに

週末の夜になると、chagama(チャガマ)は「chagama night(チャガマナイト)」としてバー営業を行い、お茶とお酒の新しい楽しみ方を提案しています。お茶専門店ならではの本格的な日本茶とお酒が絶妙にマッチした、ここでしか味わえないドリンクを提供。(chagama nightは現在休業中)


▲幻想的な雰囲気の店内で楽しむ特別な一杯

お茶の香りが立つ「煎茶モヒート」、燻製紅茶をウイスキーで割った「ラフロイグティー」、さらに深蒸し茶やほうじ茶を使ったソフトドリンクなど、多彩なメニューが揃います。

昼と夜で異なる表情を見せるchagama(チャガマ)。ぜひ、一度足を運んでみてはいかがでしょうか?

インタビュー:chagama(チャガマ)とはお茶を広める実験をする場所

chagama(チャガマ)の店長にお話を伺いました。


chagama(チャガマ)を開いた理由とは

–製茶問屋マルモ森商店がchagama(チャガマ)を開いた理由を教えてください。

かつては、お茶は作れば売れる時代でした。しかし、現在ではお茶の消費量が年々減少し、ただ作るだけでは売れなくなっています。

お茶は健康に良いだけでなく、美味しく、料理にも合う素晴らしい嗜好品です。それにもかかわらず、本当に売れなくなってしまったのか。どうすればもっとお茶が広まるのか

私たちは、これまでにない新しい視点からお茶を広める実験に取り組みたいと考えました。そこで、日本茶専門店であり、日本茶カフェでもあり、さらにお茶を広めるための実験の場としてchagama(チャガマ)をオープンしました。


chagama(チャガマ)のコンセプト「お茶を広める実験を行う場所」

— chagama(チャガマ)では、どのような取り組みを行っていますか?

例えば、茶葉のパッケージサイズを最少50グラムから用意しました。また、従来の包装に加え、UVカット加工を施した特殊な透明フィルムのパッケージも採用。これにより、お客様が茶葉の色や形状を確認しながら選べるようになりました。

サイズも手頃で、これまで以上に親しみやすい形でお茶を提供できると考えています。

また、若い方にも気軽にお茶を楽しんでもらうため、明るい色の急須を販売しています。これが非常に好評で、ご自身用やプレゼント用に購入される方も多くいらっしゃいます。

店内の照明も、お茶が美しく映えるよう調整しています。時間帯や天候に合わせて光の加減を変えることで、より心地よい空間を演出しています。

さらに、chagama(チャガマ)には時計も温度計も置いていません。これは、お茶の淹れ方に関する細かなルールや制約から解放され、もっと自由に楽しんでほしいという想いからです。

おもてなしの心を込めて鉄窯のお湯を沸かし続ける

–お店で使われているこの鉄窯には、特別なこだわりがあるようですね。

この鉄窯は、岩手県の南部鉄器メーカー「及富」が製作したもので、40年以上前に作られたものです。私たちが手に入れた時は錆びついていましたが、半年以上かけて丁寧に修復し、使用できる状態に戻しました。

鉄窯で沸かしたお湯はまろやかで、口当たりが柔らかくなります。そのため、お茶の美味しさをより一層引き立ててくれるのです。


東北地方には、「いつ来客があってもすぐにおもてなしできるよう、常にお湯を沸かしておく」という習慣があります。その精神に倣い、chagama(チャガマ)でも営業時間中は絶えずお湯を沸かし続けています。

今、お茶屋には「入りづらい」というイメージがあるかもしれません。しかし、私たちはそんな固定観念をなくし、お茶をもっと身近なものにしたいと考えています。

chagama(チャガマ)が、多くの人々とお茶をつなぐ「お茶の入口」となれるように。どうぞ気軽にお立ち寄りください。いつでも、美味しいお茶でおもてなしいたしますよ!

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chagama(チャガマ)の情報・購入方法

住所 〒420-0839 静岡県静岡市葵区鷹匠2丁目10−7
ホームページ https://www.ochanet.com/chagama/
電話番号 054-260-4775
電子マネー・カード決済 対応済
営業時間

10;00~19;00

chagamanightは20;00~24;00

定休日 月曜日
駐車場 なし
アクセス 新静岡駅より徒歩10分

 

この記事を書いた人 Norikazu Iwamoto
経歴  「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。

 

英訳担当 Calfo Joshua
経歴 イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。

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