ご褒美茶が若者に人気!焼津の老舗・丸玉園発「SANOWA(茶の輪)」で広がるお茶と人のつながり【静岡県・焼津市】

OCHATIMES編集部
ご褒美茶が若者に人気!焼津の老舗・丸玉園発「SANOWA(茶の輪)」で広がるお茶と人のつながり【静岡県・焼津市】

東京と名古屋の中間に位置する政令指定都市、静岡県静岡市。静岡駅から下り線に3駅目に位置する焼津駅に降りると、そこには3つの港(焼津港、小川港、大井川港)を持つ港町焼津市が広がっています。焼津市は年間の水揚げ金額が7年連続で全国第1位を誇る漁業の町です。

今回は、そんな静岡県焼津市にある老舗製茶問屋「丸玉園」を取材しました。丸玉園は、70年以上の歴史と伝統を受け継ぐ一方で、若い世代に向けた新ブランド「SANOWA(茶の輪)」を立ち上げ、日本茶の魅力を次世代へとつなぐ取り組みに力を注いでいます。
週末には、丸玉園が運営するお茶屋喫茶に若者たちが行列をつくる光景も見られ、そこからは日本茶の歴史と文化を守り続けるお茶屋としての情熱が伝わってきます。

この記事では、地元・焼津に根ざした丸玉園のお茶づくりの姿勢と、新ブランド「SANOWA(茶の輪)」に込められた想いについて、代表取締役・増田啓介さんのインタビューを交えながらお伝えしていきます。

丸玉園とは

丸玉園は、1950年に創業された静岡県焼津市の老舗茶問屋です。現在、3代目の増田啓介さんが代表を務めており、焼津市内に「駅前通り本店」と「登呂田店」の2店舗を展開しています。

丸玉園 駅前本店▲焼津駅前通り丸玉園本店▲ ▼丸玉園登呂田店▼
丸玉園登呂田店

丸玉園では、茶師が厳選して仕入れた荒茶(※製品として仕上げられる前の茶葉。茶問屋は、茶農家から仕入れた荒茶を製茶して販売用のお茶に仕上げます。製茶問屋の役割については山梨商店の記事をご参照ください。)を、自社の製茶工場で丁寧に仕上げ加工しています。

こうして完成したお茶は、自社店舗へ直送され、店頭で販売されます。このような製造から販売までの一貫体制により、品質にこだわり抜いたお茶の提供を実現しています。

メインで取り扱っているお茶は、、静岡県掛川産の甘みとコクが際立つ深蒸し茶。そのほかにも、静岡県内で生産された香り高い高級煎茶や玉露など、豊富なラインナップを取り揃えています。

2018年3月には、新ブランド「SANOWA(茶の輪)」を立ち上げました。若いスタッフを中心に始動したこのブランドには、「若い世代のお茶離れに歯止めをかけ、再び人とお茶を結び付けたい」という想いが込められています。

「SANOWA(茶の輪)」では、忙しい毎日でも気軽に美味しいお茶を楽しめるよう、ティーバッグタイプの商品を多数展開。また、お茶を使ったマドレーヌやお煎餅、羊かんなど、和菓子やお茶請けも豊富に取りそろえられており、贈答品としても人気を集めています。

開発された商品は、特に若い女性を中心に支持を集めており、週末にはカフェメニューを楽しみに、県外から登呂田店の喫茶スペースを訪れる若者の姿も多く見られます。

丸玉園「SANOWA-茶の輪-」のカフェメニュー

丸玉園では、「お茶屋は敷居が高くて入りづらい」と感じる若い世代の印象を払拭するため、喫茶スペースを設け、お茶を気軽に楽しめる場を提供しています。


▲丸玉園登呂田店の店内に足を踏み入れると、ガラス越しに雰囲気の良い坪庭が広がります。席は坪庭をぐるりと囲むように配置されているので、庭を眺めながらイートインが楽しめます。

季節ごとに変わる喫茶メニューでは、夏季にはお茶の味を感じられるかき氷、他の季節にはお茶屋ならではのお茶パフェや抹茶ティラミスが楽しめます。ドリンクメニューにはさまざまな品種のお茶やフレーバーティー、抹茶ラテなどが用意されており、一部メニューはテイクアウトにも対応しています。

ここでは、丸玉園「SANOWA-茶の輪-」の魅力的なカフェメニューを、ほんの少しだけご紹介します。

静岡抹茶パフェ(ドリンクセット)

静岡県朝比奈産の高級抹茶をふんだんに使用した、贅沢な抹茶パフェ。中には抹茶アイス、抹茶ゼリー、抹茶パウンドケーキなどが入り、抹茶の風味を存分に味わえます。甘さは控えめに調整されており、お茶本来の味と香りを堪能できる、お茶屋特製の逸品です。

静岡抹茶パフェ

静岡抹茶生プリン(ドリンクセット)

静岡県朝比奈産の高級抹茶を使用した、濃厚な抹茶プリン。見た目にも美しく、美味しさが伝わるミルクプリンとの2層構造が特徴です。口当たりはとろりとしていて、甘さは控えめ。抹茶の香り・旨味・ほろ苦さを感じられる、大人の味わいに仕上がっています。食べ進めるごとに変化する味わいも楽しめます。


静岡抹茶生プリン

ストロベリー抹茶ティラミス(ドリンクセット) ※期間限定メニュー

静岡県朝比奈産の高級抹茶とマスカルポーネチーズが絶妙に調和した、抹茶ティラミス。苺の爽やかさがアクセントとなったこのスイーツは、休日になると瞬く間に完売してしまうほどの人気商品です。

磯自慢の酒粕ティラミス※期間限定メニュー

静岡で名高い日本酒「磯自慢」の酒粕を豪華に使用した特製ティラミス。口に運べば感じるトロリとした食感、そして鼻から抜けていく磯自慢の吟醸香とマスカルポーネチーズの相性は抜群です。


磯自慢の酒粕ティラミス

抹茶ラテ

静岡県朝比奈産の高級抹茶を贅沢に使用した抹茶ラテ。渋みが少なく、抹茶の香りとコクが際立つ味わいが特徴です。上品な甘さで飲みやすく、カフェメニューのなかでも特に人気の高い看板ドリンクです。テイクアウトにも対応しています。

抹茶ラテ

ほうじ茶かき氷(夏季限定)

1番茶の上質な茶葉のみを使用した、ほうじ茶かき氷。丸玉園の代表取締役・増田さん曰く、「相当な量の茶葉を使用しているため、お茶屋でなければ作れない味」とのこと。食べてみると、ひんやりとした口当たりの中に、ほうじ茶の香ばしさと旨味がしっかりと感じられます。見た目はボリュームがありますが、ふわふわと軽く、口に入れた瞬間に溶けてなくなります。

ほうじ茶かき氷

静岡茶氷三昧(夏季限定)

夏季限定メニューの中でも、五感で楽しめる体験型のかき氷。自分で抹茶を挽いたり、氷を使って抹茶ゼリーを作ったりと、見た目・味・触感・香り・音の変化を味わえる、特別な一品です。

静岡茶氷三昧

インタビュー:焼津の老舗茶問屋・丸玉園が届ける70年の味と新ブランド「SANOWA-茶の輪-」の想い

丸玉園の代表取締役・増田啓介さんにお話を聞かせていただきました。


焼津の風土と共に歩む、老舗茶問屋「丸玉園」。若者の心にまで届く、まろやかで甘いお茶の物語

–丸玉園について教えていただけますか?

丸玉園は、1950年に創業した老舗の茶問屋です。戦後間もない時代に、「できるだけ多くの人に美味しいお茶を届けたい」という初代の思いから始まりました。創業以来70年以上にわたり、地元・焼津の自社工場で技術の研鑽を重ねてまいりました。

丸玉園が目指すのは、甘くまろやかでコクのある美味しいお茶づくりです。理想の味を実現するため、「火入れ(※茶師の伝統技術:茶葉に熱を加えて味や香りを調整し、品質を保つ工程)」では、四季折々の焼津の気候に合わせて火加減を調整するなど、細心の注意を払っています。

長年にわたる試行錯誤の末に確立した、焼津の風土に根ざしたお茶づくりは、地元のお客様をはじめ、多くの方々にご愛顧いただいています。

若い方にも気軽に立ち寄っていただけるよう、店舗では喫茶スペースも併設しています。試飲の提供やカフェメニューを通じて、お茶に親しんでいただき、若い世代への認知や販売促進に繋げられればと考えています。

–丸玉園の喫茶は、若い世代を中心に人気を集めていますね。休日には、登呂田店の前に行列ができているのをよく見かけます。

ありがとうございます。私たちのような老舗のお茶屋にとっても、「お茶の需要減少」、特に「若い世代のお茶離れ」という現実は他人事ではありません。私自身も丸玉園の三代目として、この流れに対して何か手を打たなければという危機感を抱いていました。

お茶のある暮らし、をもう一度。人と再びつながる、新ブランド「SANOWA-茶の輪-」誕生の背景

私たちにとって、お茶は単なる飲み物ではありません。日本人の健康で豊かな暮らしを支えてきた、大切な文化そのものです。そして今、「このままではその文化が失われてしまうのではないか」と、危機感を抱いていないお茶屋はないでしょう。

私たちは、「若い世代のお茶離れに歯止めをかけ、再び人とお茶を結び付けたい」という想いのもと、2018年3月、若手スタッフを中心に丸玉園の新ブランドを立ち上げました。

ブランド名は、人とお茶が輪のように繋がっていくことを願い、「SANOWA-茶の輪-」と名付けました。

新ブランド「SANOWA-茶の輪-」の立ち上げに際しては、何度もミーティングを重ねました。その中で、「若い世代のお茶離れ」という表現をそのまま使ってよいのか、という話題も出ました。

–「若い世代のお茶離れ」はよく耳にするフレーズだと思います。気になる点はありましたか?

実際には、若い人たちも喉が渇けばペットボトルの緑茶を飲みますし、カフェでは抹茶ラテや抹茶スイーツも人気です。

つまり、「若い世代にお茶が売れていない」のではなく、「自宅でゆっくりと美味しいお茶を楽しむ文化」そのものが、若い世代の生活から失われてしまったのではないか。私たちは、そう捉えています。


急須がなくても、お茶は楽しめる。若い世代の暮らしに寄り添う、新しいお茶のカタチ

これまで、茶業界では若い世代に対して「急須が当たり前にある暮らし」を押し付ける傾向があったように思います。しかし、時代の変化とともに、消費者が求めるお茶の在り方も変わってきています。

「SANOWA-茶の輪-」では、そうした業界の視点を見直すことを決断しました。従来の商品中心のプロダクト・アウトの考え方ではなく、消費者のニーズを出発点とするマーケット・インのアプローチへと方針転換したのです。

まず、若い世代が急須を持たない生活を受け入れることが重要だと考えました。「なぜ急須を持たないのか」という背景に焦点を当てて分析することで、潜在的なニーズに応える新しいお茶の形を探ることができるからです。

それこそが、新しいブランドの成功の鍵になると私たちは考えました。

–「多様なお茶の形があることを真摯に受け止める」というのがポイントになりそうですね。

抹茶ティラミス

はい。そして、「若い世代に向けて」という視点からさらに一歩踏み込み、「SANOWA-茶の輪-のお茶を誰に届けたいのか」という問いに対し、私たちはミーティングを重ねました。プロジェクトメンバーが出した答えは、「仕事や子育てに奮闘している女性」でした。

忙しい女性の心に寄り添う。「SANOWA-茶の輪-」が贈る、お洒落でおいしいご褒美茶

最近では、忙しい日常を送る女性たちの生活の中で、ゆっくりとお茶を楽しむ時間が減少しています。そんな彼女たちが抱える悩みに目を向けたとき、茶匠として私たちが提供できるサポートのかたちが見えてきました。

では、多忙な彼女たちの心に届くお茶とはどのようなものなのか。

私たちが導き出したキーワードは、「手軽さ」「おいしさ」「お洒落」の3つ。これらを軸に、スタッフ同士で意見を交わし、時には外部の声にも耳を傾けながら、商品開発を進めていきました。

そして、プロジェクト立ち上げから半年以上の試行錯誤を経て、2018年10月、「SANOWA-茶の輪-」のお茶が誕生しました。

お茶の魅力を発見できるカフェメニュー、手軽に美味しさを楽しめるティーバッグ、本格的な香りと味わいのリーフ茶、新感覚の香りと味を楽しめるフレーバーティー。

洗練された「SANOWA-茶の輪-」のデザインパッケージに包まれたこれらの商品は、忙しい女性たちの心と体をそっと癒す「ご褒美」となっています。


おかげさまで、「SANOWA-茶の輪-」は若い世代を中心に多くの方々にご好評をいただいており、休日には県外からスイーツを楽しみに訪れるお客様で行列ができるほどです。

これからも、地元・焼津から丸玉園のお茶と「SANOWA-茶の輪-」のお茶を届け、人とお茶を結ぶ「輪」をさらに広げていける。
そんなお茶屋でありたいと願っています。

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丸玉園の情報・購入方法

丸玉園登呂田店

住所 〒425-0035 静岡県焼津市東小川5丁目9-17
ホームページ https://sanowa-tea.jp/
SNS SANOWA
電話番号 054-621-5501
電子マネー・カード決済 対応済み
営業時間 9:30 – 18:00
定休日 水曜日(5・8・12月は営業)
駐車場 あり
アクセス いちょう通り・登呂田交差点から約300メートル南に直進。
ガソリンスタンド(エッソ東小川SS)を目印にお越しください。

 

丸玉園駅前本店

住所 〒425-0027 静岡県焼津市栄町4丁目1-4
ホームページ https://www.marutamaen-shop.com/
SNS SANOWAのinstagram
電話番号 054-628-4020
電子マネー・カード決済 対応済み
営業時間 9:00 – 18:00
定休日 日曜日
駐車場 あり
アクセス 焼津駅より徒歩10分

 

この記事を書いた人 Norikazu Iwamoto
経歴 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。

 

英訳担当 Calfo Joshua
経歴 イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。

 

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