茶菓子屋Conche(コンチェ)が提案する静岡の味覚探訪~チョコレートと日本茶のペアリング~【静岡県・静岡市】
大量生産の商品が市場の大部分を占める中、原材料と手作りにこだわる少量生産の商品が注目を集め、いつしかそうした製品はクラフトの名を冠するようになりました。手間暇をかけて作られるクラフト製品は、量より質を求める消費者に好まれており、その展開はチョコレートの世界にまで広がっています。今回、取材したのは清水エスパルスドリームプラザにある茶菓子屋Conche(コンチェ)。クラフトチョコレート専門店のショコラティエが提案するお茶とチョコレートのペアリングで、お茶の町静岡で注目を集めています。
この記事では、Conche(コンチェ)が提案するお茶とチョコレートのペアリングの魅力や、チョコレートづくりを通して静岡の魅力発信にかける想いなど、Conche(コンチェ)のショコラティエであり代表取締役も務める田中克典さんのインタビューを通じてお伝えします。
目次
茶菓子屋Conche(コンチェ)とは
茶菓子屋Conche(コンチェ)は、2023年10月27日に静岡市清水区のエスパルスドリームプラザ1階にオープンしたカフェです。静岡市人宿町にあるクラフトチョコレート専門店Conche(コンチェ)の2号店となります。
1号店のConche(コンチェ)は、チョコレートの原料であるカカオ豆(ビーン)の仕入れから焙煎、チョコレート(バー)の成形まで、一貫した製造工程を手掛けるクラフトチョコレート専門店です。こうしたスタイルのお店はBean to Bar(ビーントゥーバー)とも呼ばれています。
▲こだわりの専門店が立ち並ぶエリア、“静岡市人宿町人情(ひとやどちょうにんじょう)ストリート”に位置するのが、Conche(コンチェ)の1号店です。
Conche(コンチェ)のチョコレートは高い評価を受けており、2021-2022 International Chocolate Awards ASIA-Pacificで金賞を受賞しました。
さらに、2021年からはサロン・デュ・ショコラで有名な伊勢丹新宿店にも連続出展しており、バレンタイン催事では10数種類に及ぶ静岡食材のチョコレートを展示するなど、品質の高さだけでなく幅広いラインナップでも注目を集めています。
▲2021-22大会の様子。アジア向けに様々なクラフトチョコレートを紹介・販売しているCult de Chocoと代表の田中さん(一番右側)の写真。
店内は、白色を基調としたスタイリッシュな空間。飲食はもちろんのこと、店内のカウンターやテーブル、カフェプレートなど、触れるところにも静岡の豊かな自然が感じられるように、全てオクシズ材を使用した特注品が配置されています。
賑わう街中のカフェの店内に、木々、山々、森林、そして窓の外に広がる海と、豊かな自然が表現されています。
マリンパーク(海)側にもドアがあり、テイクアウトしてデッキに出れば爽やかな海風を浴びながらドリンクを楽しむことができます。
店内にはお洒落なイラストや本が陳列されており、チョコの食べ方や雑学、産地についてなどが紹介されていました。また、チョコになる前の本物のカカオ豆がインテリアとして飾られています。
▲富士山をイメージしたロゴマークは、浅間神社の鳥居の色と同じになっています。実際に浅間神社の改修工事に携わった漆塗り職人さんに塗っていただいたそうです。
商品棚には定番のフレーバーチョコレートはもちろん、カカオ産地ごとに異なる風味のチョコレート、地元静岡の特産品を活かしたオリジナリティ溢れるチョコレート、焼き菓子などが揃っています。プレゼントや手土産に選ぶのにも利用できます。
茶菓子屋コンチェのメニュー紹介
Conche(コンチェ)のチョコレートは、原料のカカオ豆から作られており、焙煎やコンチング、砂糖の種類から配合比率までこだわった手作りのオリジナルチョコレートです。安心安全に配慮し、香料や乳化剤などの添加物は一切使用していません。
ここでは茶菓子屋Conche(コンチェ)のカフェメニューを少しだけご紹介します。一部の店内商品はイートインも可能です。
オチャノトモセット
オチャノトモセットとは、Conche(コンチェ)の手作りカカオスイーツと日本茶のペアリングセットです。カカオの風味に日本茶の芳醇な香りが合わさることで、時にはより香りが引き立ち、時には旨味に重厚さが加わり、また印象が一変することもあります。ペアリングならではの新しい表情を楽しめます。
選べるスイーツは、カウンターにあるケースから1~3種類まで選択します。ペアリングにして飲むお茶は「煎茶、和紅茶、ほうじ茶、品種茶」の4つの中から1つ選択します。
(※今回、カウンターのショーケースには【どら焼き】【カカオモナカ】【カカオマドレーヌ】【ガトーショコラ】【ほうじ茶シフォン】が並んでいました。時期によってラインナップは変更されます。)
オチャノトモセットでは、最初の1杯はスタッフの方が丁寧にお茶を淹れてくださり、おかわりはポットにある4種類の静岡茶を自由に飲むことができます。
▲品質が劣化しないように、ステンレス製ではなくガラス製の魔法瓶が使用されています。夏には冷茶も用意されます。
食材を育んだ地域の風景や人々の手仕事に思いを馳せながら、ぜひお気に入りの飲み物と共に香りをご堪能してみてはいかがでしょうか。
カカオ産地セレクション~8産地のチョコレート食べ比べ~
タンザニア・インド・グレナダ・ハイチ・ブラジル・ガーナ・ベネズエラ・ベリーズ・エクアドルなど、産地の異なるカカオ豆で作られたミニサイズのチョコレートのセットです。チョコレートを口に運ぶたびに、各産地で育まれたカカオの風味を感じることができます。きっとチョコレートの世界の奥深さに驚くでしょう。
Conche(コンチェ)~静岡セレクション食べ比べ~
自然豊かな静岡の食材とカカオを組み合わせた8種類のチョコレート食べ比べセットです。ガーナカカオのチョコレートに駿河湾深層水の大粒塩をトッピングした「ガーナカカオ×あらしおチョコレート」。駿河湾特産の「桜えび」と静岡の老舗醤油蔵元の「再仕込み醤油」を使用した「駿河湾特産桜えび醤油チョコレート」。
その他にも、静岡みかんのドライフルーツチョコレートや焼津マリンアージュチョコレート、いちごチョコレートなどが含まれています。どれも一見斬新な組み合わせですが、繊細で緻密な味わいが楽しめます。
その他にも、カカオドリンクやコーヒーなど、クラフトチョコレート専門店Conche(コンチェ)1号店のメニューからいくつか選ぶことができます。
インタビュー : 茶菓子屋Conche(コンチェ)の世界~日本茶とチョコレートの新たな出会い~
Conche(コンチェ)代表取締役の田中克典さんにお話を伺いました。
静岡の地域性を反映した茶菓子屋Conche(コンチェ)が持つ独自の魅力
–茶菓子屋Conche(コンチェ)について教えていただけますか?
茶菓子屋Conche(コンチェ)は、「静岡で育まれた食材とカカオを融合させたスイーツ」と「日本茶」のペアリング体験を提供するカフェです。静岡市人宿町にあるクラフトチョコレート専門店Conche(コンチェ)の2号店になります。
–人宿町にある1号店と、清水エスパルズドリームプラザの2号店とでは、どのような違いがあるのですか?
1号店のクラフトチョコレート専門店Conche(コンチェ)は、カカオの風味を最大限に引き出したラグジュアリーなチョコレート体験を提供するお店です。様々な産地別カカオ豆を使用した、テリーヌショコラやサブレといったチョコレートや焼き菓子を作っています。
▲人宿町にあるクラフトチョコレート専門店Conche(コンチェ)店内の様子
2号店の茶菓子屋Conche(コンチェ)は、ショコラティエとしてのノウハウをもって作り上げた「チョコレートと日本茶の心地よいペアリング」を提案するお店です。
▲チョコレートと日本茶のペアリング体験だけでなく、静岡の食材を使用したお茶スイーツやドリンク、パフェなど様々なメニューが揃っています。
— Conche(コンチェ)というネーミングはとても可愛らしいですね。
店名であるConche(コンチェ)は、チョコレートの製造工程の一つである「コンチング(材料を混合したチョコレートを精錬し風味を向上させる工程。このときに使用する機械が「コンチェ」と呼ばれている)」に由来します。
自分がショコラティエとして理想とする「誰が食べても美味しいチョコレート」を作る上で、重要な工程であると感じそこから名付けました。
–静岡の特産品である日本茶とチョコレートのペアリングに特化した専門店だから「茶菓子屋Conche(コンチェ)」となるわけですね。
ショコラティエの試行錯誤から生まれたオチャノトモセット
–これまでにも、お茶を使ったスイーツやチョコレートは見てきましたが、「ドリンクとしてのお茶とチョコレートのペアリング」というのは珍しいと思います。
これまで静岡産の食材を取り入れた様々なオリジナル商品を開発してきました。しかし、静岡茶を看板にした商品となると、ほぼ限定販売品のみです。定番商品がない理由は、納得いくものができなかったからです。
お茶の魅力を伝えるにはどうすればよいか。ショコラティエとして、あらゆる試行錯誤を繰り返した結果、辿り着いたのが、「淹れた『お茶』とチョコレートのペアリング【オチャノトモセット】」でした。
ショーケースには、どれもお茶とペアリングが成立しやすいお菓子をご用意しています。どのような組み合わせを選んでも心地よいペアリング体験ができます。
もう少し個性的なペアリングを希望の方は、こちらのペアリングセット「チョコレートと日本茶を」をお勧めしています。どれも、私ショコラティエとして自信をもって決めたペアリングセットです。
–なるほど、確かにチョコレートの風味がお茶の香りと上手く交わる感覚は心地よく感じます。
茶菓子屋Conche(コンチェ)では、こうしたペアリングだけでなく、産業としてお茶業界ともっと深く協力していきたいと考えています。そこで、他にも様々な取り組みに挑戦しています。
チョコレート製造の廃棄物を茶園の堆肥として再利用する取り組み
チョコレートはカカオが原料となっていることは皆さんご存知かと思いますが、カカオがまるごと使用されるわけではありません。未使用部分もあります。それがカカオハスク(シェル)と呼ばれる部位です。
茶菓子屋Conche(コンチェ)では、カカオハスクは全て創業時よりお付き合いのある茶農家さんに引き取っていただいて、有機堆肥として継続的に利用していただいているのです。
▲厳密には産地や大きさによってばらつきはありますが、カカオ豆100kgを処理すると凡そ30kgものハスク等その他未利用部分が発生しているそうです。
–チョコレートを作る上で出た廃棄物を茶園の肥料として使用しているのですか?
はい。カカオハスクは成分分析の結果、優れた飼料になるというデータが出たのです。私としても、廃材が有効利用されるのは嬉しく思いますし、廃棄コストも節約出来て助かっています。
その他に、チョコレート作りの技術面にお茶の技術を取り入れるといったこともしています。
▲カカオハスクを堆肥に混ぜると臭いが抑制され、茶園からは良い香りが漂っているそうです。
茶葉用火入れ機の転用によるカカオ豆焙煎の革新
通常、カカオ豆の焙煎工程は、オーブンや珈琲豆用のロースターで行いますが、Conche(コンチェ)では茶葉用の火入れ機「遠赤外線お茶仕上げ火入れ機」で行っています。
–茶葉の火入れ機をカカオ豆の焙煎に転用しているのですか?
はい。以前はConche(コンチェ)でも、オーブンでカカオ豆を焙煎していました。しかし、どうしても火入れ具合に差が出てしまい、味わいがぼやけてしまうことが課題となっていました。なにか良い方法はないかと模索していたところ、茶葉の火入れ機械であれば、より繊細な焙煎ができるのではないかと可能性を感じました。
そこで、ほうじ茶製造で有名な山梨商店様をはじめ、様々なお茶屋さんに見学に行かせていただき、火入れ機械のこと、お茶のことについて詳しく教えていただきました。
実際に、お茶用の火入れ機である「遠赤外線お茶仕上げ火入れ機」で何度かカカオ豆の火入れを検証してみた結果、非常に繊細で納得のいく焙煎ができました。2017年に機械を導入し稼働しています。
この火入れ機には、私の求めていた焙煎を可能にするだけでなく、まだまだ幾らでも向上できる余地を感じています。
–茶菓子屋Conche(コンチェ)は、ペアリングだけでなく、産業として深い部分でお茶業界と協力しているのですね。
「クラフトチョコレートを気軽に楽しめる場 × 静岡の味覚を楽しむ旅の拠点」茶菓子屋Conche(コンチェ)
–私がクラフトチョコレートを食べたのは、茶菓子屋Conche(コンチェ)が初めてです。とても食べやすいと感じました。
食べやすいと言っていただけるのは嬉しいですね。一般にクラフトチョコレートは量よりも品質を求める消費者に人気が高い傾向にあります。それ故、味わいも玄人好みになる傾向もあり、敷居が高くなりがちなのです。
そんな中でも、Conche(コンチェ)が目指すのは「子どもからお年寄りまで、誰もが美味しいと思えるクラフトチョコレート」です。
–敷居を低くして多くの人に触れてもらうことを大切にする、というのは多くのお茶屋が取り組んでいることでもありますね。
仕事をする上で、お客様と触れ合い向き合うことは大切なことです。同様に、製造の現場に立つことも、経営的な視点を持つことも大切です。私が目指すのは、これらの視点をバランスよく持ち合わせたショコラティエです。
茶菓子屋Conche(コンチェ)のあるエスパルズドリームプラザは、観光バスや豪華客船が立ち寄る静岡の中核施設です。旅行先で飲食をするときに、その地域の美味しいものを、と誰しもが思いますよね。そうした想いに応えることが茶菓子屋Conche(コンチェ)の使命だと思います。
ぜひ、茶菓子屋Conche(コンチェ)で静岡の味覚をご堪能ください!
~茶菓子屋Conche(コンチェ)の情報~
住所 | 〒424-0942 静岡県静岡市清水区入船町13-15 エスパルスドリームプラザSEA side1階 |
ホームページ | https://shop.conche.net/ |
電話番号 | 054-397-2900 |
電子マネー・カード決済 | クレジットカード対応済み QRコード決済対応済み |
営業時間 | 10時00分~20時00分 |
定休日 | なし |
駐車場 | あり(エスパルズドリームプラザ駐車場) |
アクセス | 東名清水I.Cから、しみずマリンロードで約10分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~23年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |
英訳担当 | Calfo Joshua |
経歴 | イギリス生まれ育ち、2016年から日本へ移住。静岡県にてアーボリカルチャーを勉強しながら林業や造園を務めています。カルフォフォレストリーを運営。日本の自然を楽しみながら仕事することが毎日の恵み。自然に重点を置く日本の文化に印象を受けて大事にしたいと思ってます。 |