静岡の路地裏で出会う穏やかな抹茶の時間。オーガニック抹茶カフェ 和みのひととき【静岡県・静岡市】
静岡駅から徒歩約15分。再開発が進む中で、古い町並みとモダンな店が共存する静岡市葵区七間町。その青葉通り沿い、別雷(わけいかずち)神社の左隣の小道を少し進むと、すぐに『いかずち横丁』が現れます。今回取材したのは、年季の入った小さな居酒屋が立ち並ぶこの一角に佇む、オーガニック抹茶カフェ「和み」です。
「静岡抹茶の魅力を世界へ」をコンセプトに掲げ、昼から深夜まで営業するこのカフェでは、静岡産の高品質な抹茶を使用した多彩なメニューを提供。抹茶づくしのお茶カフェとしてだけでなく、夜には「ちょい飲みスポット」としても多くの人々に親しまれています。
この記事では、オーガニック抹茶カフェ 和みのメニューの魅力や、6回の移転を経て理想の抹茶カフェを追求し続けるオーナー・吉村高彦さんの物語を、インタビューを交えてご紹介します。
目次
オーガニック抹茶カフェ 和みとは
オーガニック抹茶カフェ 和みとは、2020年8月27日に静岡県静岡市葵区人宿町にオープンした、オーガニック抹茶専門のカフェです。代表を務めるのは吉村高彦さん。
店内は、テーブル4つに椅子8席というコンパクトなレイアウト。大きなガラス戸から差し込む明るい日差しが、店内を優しく照らし、奥の鏡張りの壁が空間に広がりをもたらしています。
一歩足を踏み入れると、どこか懐かしさを感じさせながらも親しみやすいレトロモダンな雰囲気が広がり、ゆったりとした時間が流れます。
入口付近に設置されたカウンターで注文を済ませてから、店内の席へと進むスタイルです。
オーガニック抹茶カフェ 和みのメニュー紹介
オーガニック抹茶カフェ 和みで提供される抹茶は、銘茶の産地として名高い静岡県川根産の高品質なオーガニック抹茶を使用しています。抹茶が苦手な方でも楽しめる定番ドリンクから、抹茶の風味とアルコールが調和したオリジナルの抹茶割りまで、オーナー・吉村さんのセンスが光る多彩なメニューが揃っています。どれも吉村さんが自信を持って提供するこだわりの逸品です。
▲右側のカップに描かれている、愛らしい抹茶色の猫。その名は「なごみねこ」。抹茶好きが高じて、飲みすぎた結果、体が緑色になってしまったオーガニック抹茶カフェ「和み」のオリジナルキャラクターです。
ここでは、「和み」のカフェメニューを一部ご紹介します。なお、一部のメニューを除き、テイクアウトとイートインの両方に対応しています。
抹茶の濃さが4段階で選べるオーガニック抹茶ラテ(Ice / Hot)
「抹茶の濃さが4段階で選べるオーガニック抹茶ラテ」は、抹茶の濃さによって異なる抹茶の味わいを楽しんでほしいという想いから生まれた、オーガニック抹茶カフェ 和みの看板メニューです。
▲抹茶ラテ チョイコイ(テイクアウト用カップ)
濃さの段階には「恋」と「濃い」をかけた可愛らしいネーミングが施されており、以下の4種類に分かれています:
ハツコイ(抹茶の量 3g)、チョイコイ(抹茶の量 5g)、メチャコイ(抹茶の量 7g)、ゾッコン(抹茶の量 12g)。どの濃さを選んでも、抹茶の深い香りとまろやかな味わいが楽しめます。あなたのお気に入りの「濃さ」を見つけて、特別な抹茶体験を味わってみてはいかがでしょう。
▲抹茶の濃さは、1段階目(左端)の「ハツコイ」から、4段階目(右端)の「ゾッコン」まで。鮮やかな緑のグラデーションを見れば、その濃さの違いが一目でわかります。
抹茶アフォガード
濃厚に点てた自慢のオーガニック抹茶を、ニュージーランド産のバニラアイスにかけて楽しむ贅沢な一品。まろやかな甘さとクリーミーな口どけが特徴のバニラアイスに、抹茶のほろ苦さが絶妙にマッチします。一度味わえば忘れられないと、リピーターにも好評です。
温かい抹茶ソースが冷たいバニラアイスにゆっくりと溶けていく様子は、見ているだけで心が惹きつけられます。一口味わえば、抹茶のほろ苦い余韻とバニラの甘さが織りなす味わいのコントラストに魅了されることでしょう。
ちなみに、「アフォガード」という言葉は、イタリア語で「溺れる」という意味。抹茶アフォガードの魅力に浸り、甘くほろ苦いひとときに心から溺れてみてはいかがでしょう。
ふわモコ抹茶ラテ(Ice)
抹茶を注ぐと、ミルクフォームがもこもこと膨らみ、まるでカップからあふれそうなほどに。見て楽しく、飲んで美味しい1杯。このふわふわのミルクフォームと奥深い味わいを実現するために、吉村さんは数十通りの原料を組み合わせ、試行錯誤を重ねたそうです。
▲注文した人は、皆こぞってSNSにアップする人気メニューの1つ。
和みの抹茶テリーヌ
抹茶の香りとほろ苦さ、そしてねっとりとした食感が魅力の「和みの抹茶テリーヌ」。もともとは土日限定メニューとして提供されていましたが、あまりの人気ぶりに毎日提供されるようになり、現在ではリピート率No.1の看板メニューとなっています。
テイクアウト用に個別包装されたものも販売中。お土産や差し入れにもおすすめです。
カルーア抹茶
オーナーの吉村さんいわく、カルーア抹茶はまさに「抹茶のお酒の王道」です。自家製の抹茶シロップを使用することで、抹茶特有の香りや深みのある味わいをさらに引き立てており、抹茶リキュールとの相性も抜群とのことです。
その他、季節限定の特別メニューとして「桜あん抹茶ラテ(春限定)」や「和栗の抹茶ラテ(秋限定)」も用意しています。桜あんを使用することで、桜シロップよりも優しい甘さが特徴となったこのドリンク。抹茶と桜の香りが絶妙に調和し、その相性の良さが好評を博しているそうです。
インタビュー: 静岡抹茶を世界へ。トレーラーからはじまった抹茶カフェの物語
オーガニック抹茶カフェ 和み代表の吉村 高彦さんにお話を伺いました。
アメリカ留学が原点に。「静岡抹茶を世界へ」という夢を叶えるオーガニック抹茶カフェ 和み
–オーガニック抹茶カフェ和みについて教えていただけますか?
オーガニック抹茶カフェ 和みは、「静岡抹茶の魅力を世界へ届ける」を理念に掲げた、静岡産オーガニック抹茶専門のカフェです。地元静岡の方々はもちろん、県外から訪れる観光客にも静岡抹茶の美味しさを知っていただけるよう、特製の抹茶ラテやスイーツを取り揃えています。
–なぜ抹茶カフェを開こうと思われたのですか?
実は、私は以前アメリカ・ネブラスカ州に留学していました。アメリカの大学のキャンパスには、日本とは違いって至る所にカフェがあります。そこで当時流行していた抹茶ラテを飲んでみたところ、その美味しさに感動しました。
アメリカのキャンパスにあるカフェは、生徒同士の繋がりや交流の場としても機能していました。カフェとは、ドリンクと寛げる空間を提供する場所だという考えしか持っていなかった私にとって、その光景はとても印象的でした。
▲ 2019年9月、アメリカへの交換留学中の吉村さん。
日本のキャンパスにもこうしたカフェがあればいいなと思ったことが、オーガニック抹茶カフェ 和みを開こうと思ったきっかけです。また、お茶の産地として有名な静岡で抹茶カフェを立ち上げ、抹茶の魅力を発信することは、静岡の魅力を広めることにも繋がると感じました。
和みの軌跡:トレーラーからはじまり静岡で親しまれる抹茶カフェへ
海外留学から帰国後、私はカフェの開業準備を始めました。しかし、この道は全くの未経験であったため、まずは多くのカフェを訪れ、オーナーに相談をお願いすることからスタートしました。また、郊外の茶産地にも足を運び、抹茶の生産者とのつながりを築くことにも力を入れました。
▲オーガニック川根抹茶の製造会社Matcha Organic Japanにて。茶畑を訪れる吉村さん。
2020年4月、ようやく仮営業ができる環境が整いましたが、ちょうどその頃にコロナ禍が本格化し、緊急事態宣言が発令されました。そのため、開業計画は一時的に頓挫してしまいました。
それでも、抹茶カフェ開業の夢を諦めきれなかった私は、キッチンカーを購入し、トレーラー形式での開業を目指すことにしました。偶然、その時期に以前知り合った方から「トレーラー形式での開業を希望している経営者を探している方がいる」と紹介され、実際にお会いして詳細を聞いたところ、非常に良い条件を提示していただきました。
そして2020年8月27日、トレーラー形式での抹茶カフェ開業を実現しました。これがオーガニック抹茶カフェ 和みの始まりになります。
▲トレーラー時代のカフェの様子。当時は「大学生カフェ 和み」という名前でカフェをスタート。
–オーガニック抹茶カフェ 和みは、トレーラー形式からスタートしたのですね。驚きです。それまでカフェでの経験はあったのでしょうか?
いえ、カフェ業務は全くの未経験でした。そのため、まずは通っていた大学近くで仮営業を始め、オペレーションが整い次第、静岡市の人宿町に移転する予定でした。
–実際に営業してみて周囲の反応はいかがでしたか?
概ね好評で、大学の友人や学生、地域の方々など、多くの方にご来店いただきました。約1ヶ月ほど仮営業を続け、オペレーションにも慣れたので、予定通りトレーラーを人宿町の敷地に移転しました。
–カフェ開業から静岡市中心街への移転まで、非常にスピーディーに進められたのですね。
はい、これが最初の移転でした。その後も何度か移転を繰り返し、現在の店舗に至るまでに計6回の移転を経験しています。
6回の移転を乗り越え、SNSで話題に!カフェオーナーの挑戦
–6回も移転しているのですか?
当時、静岡市の人宿町では都市開発が進んでおり、町の変化に伴い、抹茶カフェ和みのトレーラーも約2ヶ月ごとに移転を繰り返しました。2021年3月の大学卒業までの営業期間中に、2度の移転を経験しています。
移転は3回目までは、同じ敷地内でトレーラーを移動させるだけで済みましたが、2021年6月にはついに敷地内にトレーラーを置けるスペースがなくなってしまいました。
そのため、トレーラー営業から、小さな店舗の一部を間借りして営業する形に変更しました。これが4回目の移転です。この時はかなり悩みました。新たにトレーラー営業を行える場所を探すべきか、それともカフェ営業自体を諦めるべきか。
–カフェ営業を続けることを決めたきっかけは何でしたか?
お店のファンが少しずつ増えてきているのを実感していたことが、決め手となりました。「進んでいる道は間違っていない」と確信し、店舗でのカフェ経営に移行する決断をしました。
そして、2022年11月13日、5回目の移転として、人宿町の裏通りにある古民家の2階部分に移転しました。
ここから2023年6月までの約1年半、営業を続け、その後現在の店舗に移転しました。これが6回目の移転です。
–店舗の移転というのは、それまで通ってくださっていたお客様にとっては驚きだったでしょうね。
はい。抹茶オーガニックカフェ 和みのファンの皆様に向けて、移転の1ヶ月前から毎日Instagramのリールで経過を発信していました。この取り組みが予想以上に反響を呼び、リニューアルオープンを迎えた7月13日には、多くのお客様にご来店いただきました。
–すごい行動力ですね。すべて1人でやられているのですか?
私はオーナー兼店長として、店舗運営全般を担当しています。メニューの仕込みから、ホームページやSNSでの発信、店舗の外装・内装の決定、経営まで、すべてを手掛けていますよ。しかし、今では、一緒に働いてくれる頼もしい仲間も加わり、お店を任せられるようになりました。このおかげで、私はイベント出店にも専念できるようになりました。
静岡抹茶が紡ぐ縁。イベント出店を通して広がる静岡の心
–お店をスタッフに任せて、吉村さんはイベント出店にも出向かれているのですね。
はい、静岡市内を中心にさまざまなイベントに出店しています。私がイベントに出店する際も、常に「抹茶を点てる」というこだわりを大切にしています。手間がかかることもありますが、一人一人に丁寧に点てた抹茶を提供し、「静岡ならではの抹茶の味」を感じていただけるよう心掛けています。
その中で、何度も「静岡のお茶には、人を惹きつける魅力がある」と感じる瞬間に出会っています。
–どのような反応が多いですか?
県外から観光で訪れたお客様が、静岡抹茶に興味を持って立ち寄ることが多いですね。例えば、「神奈川から観光で来た際、イベントを見かけて立ち寄りました」とか、「山口からサッカーの応援で来て、その合間に静岡観光をしていたら見つけて立ち寄りました」というお声をいただくこともあります。
また、「以前静岡に住んでいたので、静岡茶という言葉を聞いて思わず立ち寄ってしまいました」というお客様もいらっしゃいます。こうした声を聞くたびに、「静岡のお茶には人を惹きつける魅力がある」と実感します。
–旅行先や移住先で、自分の故郷の特産品を見かけると、どこか安心感を覚えることがありますよね。
静岡といえば、お茶が名産品として広く知られていますが、そのイメージはどうしても緑茶が強いと感じる方が多いのではないでしょうか。しかし、静岡茶は緑茶だけはなく、抹茶も美味しいのです。オーガニック抹茶カフェ 和みでは、抹茶ドリンクやスイーツの提供しながら、「静岡茶=静岡抹茶」というイメージを定着させていきたいです。
今後も積極的にイベントに出店し、地域の活性化や外部への発信に力を入れていきます。もしかしたら、この記事をご覧の皆さんが住んでいる地域で開催されるイベントにも、「和みの静岡抹茶」が登場するかもしれませんね!
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オーガニック抹茶カフェ 和みの情報
住所 | 〒420-0035 静岡県静岡市葵区七間町14-6 いかずち横丁 10号 |
ホームページ | https://nagomi-matchacafe.com/ |
電話番号 | 054-397-2800 |
電子マネー・カード決済 | 対応済み |
営業時間 | 13時00分~0時00分(LO23:30) |
定休日 | なし |
駐車場 | 近隣に有料駐車場あり |
アクセス | 静岡駅より徒歩15分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~24年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズは世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介されています。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |