茶の芽で辿る静岡茶のルーツ。聖一国師ゆかりのお茶で心安らぐひとときを【静岡県・本山茶】
鎌倉時代から続く静岡茶の歴史。その源流を辿る日本茶カフェの旅は、静岡市葵区大原に位置する「茶の芽」から始まります。創業70年を誇る老舗茶問屋、森田製茶が営むこのカフェでは、聖一国師ゆかりの幻の茶葉を使用したお茶を、お客様自身が淹れる体験を通じて、本格的な静岡茶の奥深さを味わうことができます。また、古民家ならではの落ち着いた雰囲気や水琴窟の音色は訪れる人々を癒すと評判で、多くの人々が訪れています。
この記事では、森田製茶のお茶の品質へのこだわりや、日本茶カフェ「茶の芽」のコンセプトについて、森田製茶代表取締役の森田純平氏へのインタビューを交えてお伝えします。
茶の芽とは
静岡市葵区大原に位置する「茶の芽」は、日本茶の魅力を楽しめるカフェです。運営するのは、創業70年以上の歴史を持つ老舗製茶会社、森田製茶。
▲大原の山々と藁科川に囲まれたのどかな風景に溶け込むように佇む日本茶カフェ「茶の芽」。
ペットボトル茶が広く普及する中、森田製茶は「急須で淹れたお茶の美味しさを伝えたい」という想いから、2016年に体験型の日本茶カフェ「茶の芽」をオープンしました。
店内には水琴窟や茶室が設けられ、古風で趣のある空間が広がっています。茶の芽では、お客さま自身が急須でお茶を淹れて楽しむことができ、こだわりの日本茶と美味しい甘味を堪能しながら、心安らぐひとときを過ごせます。
※水琴窟とは地中約1.5メートル深さに60センチほどの甕(かめ)を逆さまに伏せて設置し、地上の手水鉢からの余り水を地中の甕に落とした時の音を利用した一種の発音装置。甕の内部で反響・共鳴するその音が琴の音に似ていることから水琴窟という名の由来があるそうです。
カフェに隣接されているお茶の販売スペースでは森田製茶のお茶をお値打ち価格で購入できます。
茶の芽のカフェメニュー紹介
茶の芽を運営する森田製茶は、自園自製を中心に、地元静岡産の高品質な茶葉を取り扱っています。安心・安全にこだわり抜いて厳選した茶葉を、森田製茶の高度な製茶技術で仕上げています。
▲森田製茶の製茶技術は、数々の品評会や技術競技会で高く評価されています。
美しく澄んだ水色と、山のお茶ならではの爽やかな香味が楽しめる、森田製茶のお茶を使ったカフェメニューを、ここでは少しご紹介いたします。
福の香
「茶の芽」で人気の高い上級煎茶「福の香」。八十八夜頃に摘み取られるこの旬のお茶は、自然な甘みとふくよかな旨味が特徴です。
その豊かな味わいは、お茶愛好者から初心者まで幅広く支持され、贈り物としても喜ばれる一品。森田製茶でも、多くの注文が寄せられているそうです。
▲お茶の種類に合わせた適切な淹れ方を、スタッフが丁寧に説明してくれるため、誰でも急須で美味しいお茶を楽しむことができます。
茶の芽で提供されているカフェメニューのお茶は、小売りコーナーで購入することもできます。お気に入りのお茶を見つけたら、ぜひ自宅でも茶の芽のお茶を楽しんでみてはいかがでしょうか。
伝説セット~聖一国師ゆかりの幻のお茶 伝説の彩(でんせつのいろどり)~
伝説の彩(でんせつのいろどり)とは、静岡茶の祖と称される聖一国師の生家の前の茶畑で育まれたお茶です。この銘茶は年間の収穫量が50kgにも満たない希少なもので、2014年の世界緑茶コンテストで最高金賞を受賞し、第10回国際銘茶品評会でも金賞を獲得するなど、多くの賞に輝いています。
茶の芽では、森田製茶が誇るこの幻のお茶を贅沢に楽しむカフェメニューとして「伝説セット」を提供しています。
▲伝説の彩・季節の練り切り・選べるおだんご1本のセット。今回は、人気No.1のトロトロの蜜がたっぷりしみ込んだみたらし団子をチョイスしました。
1煎目は、湯冷ましした50℃~60℃のぬるめのお湯で抽出することで、芳醇な香りと濃厚な旨味、そしてコクを堪能できます。
(※茶の芽のスタッフが、お茶の種類ごとに茶葉の量やお湯の温度、急須の扱い方など、美味しい淹れ方を丁寧にレクチャーしてくれます。)
2煎目以降は、ポットのお湯をそのまま急須に淹れることで、1煎目とは異なるさっぱりとした味わいを楽しむことができます。
1煎目、2煎目、3煎目と変わっていくお茶の味わいを、季節の練りきりやお好みのお団子(メニューから好きなものを選択)とともに楽しむことができます。
抹茶チョコレートフォンデュ(期間限定メニュー)
温かく濃厚な抹茶チョコレートソースに、お団子や季節のフルーツ、抹茶のシフォンケーキ、マシュマロをディップして楽しむ、贅沢な抹茶チョコレートフォンデュです。手作りの抹茶チョコレートソースには、森田製茶の自園で栽培された品種茶「おくみどり」が使われています。
▲国産紅茶のティーバッグがセットになっています。
チョコレートの甘さと濃厚な抹茶の風味のバランスが絶妙で、味はもちろん、見た目や食べる楽しさも兼ね備えた人気メニューです。
▲茶の芽には他にも抹茶を用いたカフェメニューが豊富に揃っていますが、それらに使用しているのも、森田製茶の自園で栽培された抹茶です。
最後に、フォンデュの後に残った抹茶チョコレートをアイスにかけていただきます。暖かくて冷たい口当たりがたまらない一品です。
まるごと抹茶かき氷(夏季限定メニュー)
茶の芽では季節に応じて主力メニューを変更しています。夏のおすすめの一つが「抹茶かき氷」です。茶の芽のまるごと抹茶かき氷は、特別製の氷「千利氷(せんりひょう)」をそのまま削り出して作られています。
この氷にはお茶の葉と抹茶が閉じ込められており、本格的なお茶の深い味わいを堪能できます。
この季節限定の抹茶かき氷は、添えられたアイスや餡子、2種類のシロップをかけて楽しむことができます。夏には、このかき氷を求めて行列ができるほどの人気メニューだそうです。
焼き芋パフェ(冬季限定メニュー)
寒い冬にぴったりの主力メニュー「特製焼き芋パフェ」には、九州・熊本のさつまいも農家から直送された熊本産の紅はるかを丸ごと一本使用しています。
下層には、もちもちの焼きだんごと自家製ふわふわシフォンを重ね、あんことクリームをトッピング。店内で焼き上げたほかほかの焼きいもとひんやりアイスが絶妙に絡み合い、ボリューム満点の和風焼き芋パフェに仕上がっています。
その他、一部のカフェメニューはテイクアウトにも対応しています。
▲テイクアウト専用の窓口で注文した後、商品を受け取ります。
インタビュー:聖一国師ゆかりの地で育まれたお茶を受け継ぎ、未来へ届ける「茶の芽」であなたを待つ
森田製茶代表取締役の森田純平さんにお話を伺いました。
「茶の芽」で自分だけの至福の一杯を:お茶の淹れ方を学べる体験型日本茶カフェ
–日本茶カフェ茶の芽について教えていただけますか?
「茶の芽」を開いているこの場所は、もともとは運営会社である森田製茶のお茶の小売り店でした。その建物を日本茶カフェとして再利用し、2016年に日本茶カフェ「茶の芽」をオープンしました。
昨今、お茶といえばペットボトルのお茶が主流になっていますが、私たちはぜひ急須で淹れるお茶の美味しさを知ってほしいと考えています。
–急須で淹れたお茶の美味しさを知ってほしいという想いから、お客様自身が急須でお茶を淹れる形式のカフェにされているのですね。
はい。私たちは美味しいお茶の淹れ方をお伝えし、静岡の山間で育まれるお茶の魅力を知っていただきたいと思っています。そのため、種類ごとに異なるお茶の淹れ方をスタッフが丁寧に説明し、お客様自身にお茶を淹れていただく体験型のカフェにしました。
店内では、森田製茶のお茶を通信販売よりもお得な価格で販売しております。カフェメニューでお気に召されたお茶があれば、そのままご購入いただけます。
茶の聖地で育まれた幻の茶葉「伝説の彩り」で味わう静岡茶の歴史
–茶の芽の看板メニューのお茶「伝説の彩り」について教えていただけますか?
茶の芽から車で約30分の場所、静岡市葵区栃沢(大川地区)に静岡茶の祖とされる聖一国師様の生家と墓があります。その生家の前に広がる茶畑は放置され、荒れ果てていましたが、森田製茶が4年かけてその茶畑を復活させました。
そして甦らせた茶畑から収穫したお茶は「聖一国師~伝説の彩~」と名付けられました。
▲「聖一国師~伝説の彩~」は2014年の世界緑茶コンテストで最高金賞を受賞し、その後も3連覇を達成しました。
–聖一国師といえば、静岡茶を広めた僧侶として有名ですね。その名を冠したお茶なのですね。どのようなこだわりがありますか?
収穫の際には50人以上の人手を集め、1つ1つ手で丁寧に摘み取っています。収穫には大変な手間がかかり、プロの農家が一日かけても、一人あたりわずか5キロしか摘むことができません。
また、製茶する過程で熱が加わることにより茶葉の量は5分の1程度に減少します。そのため年間でご提供できるのはわずか30キロほどの、大変希少なお茶となっています。
▲通常、お茶は「一針二葉」といって、一つの茎から二枚の茶葉を摘み取ります。しかし、伝説の彩は一つの茎から一枚の葉を摘む「一針一葉」で収穫しています。
この希少なお茶を、できるだけ多くの方に楽しんでいただきたいという思いから、茶の芽ではカフェメニューの「伝説セット」と「天空セット」として提供しています。
大変好評でして、遠方からこのお茶を目的に訪れる方も多いです。このお茶を通じて、「静岡茶はどこから始まったのか」や「静岡本山茶が静岡茶の始まりといわれる理由」を知っていただける良い機会にもなっています。
–静岡茶を広めた僧侶と深い関わりをもつお茶となると、お茶好き以外の方々の琴線にも触れそうですね。
静岡茶発祥の地から生まれた銘茶。本山茶の奥深い魅力
–静岡には、多種多様なお茶がありますよね。川根茶、森の茶、掛川茶など。本山茶はどのような特徴をもつお茶なのですか?
本山茶は静岡市の安倍川上流と豪科川上流で栽培されているお茶を指します。山間地の川沿いでは霧が発生しやすく、強い日差しが和らげられるため、茶の葉はやわらかく育ちます。さらに、ミネラルを豊富に含む土壌が、鮮やかな緑色とさわやかな香り、上品な甘さや旨みを生み出します。これが本山茶の特徴です。
–その静岡本山茶が静岡茶の始まりだと聞いています。
はい。今から約800年前、鎌倉時代に京都の東福寺を建立した高僧「聖一国師(しょういちこくし)」が34歳の時、宗の国(現在の中国)に渡りました。彼は6年にわたる厳しい修行の末、最新の知識と仏法の教えを会得しました。帰国の際、彼はお母様へのお土産としてお茶の種を持ち帰り、故郷である本山の地に植えました。
これが静岡のお茶の始まりとされており、静岡で最古の歴史を持つ茶産地が静岡の本山地域といわれる所以です。つまり、本山茶は静岡茶発祥の地のお茶なのです。
▲「栃沢」の聖一国師の生家にある枝垂れ桜は、春に満開を迎えます。大きな枝垂れ桜が風に揺られ、ひらひらと花びらを散らせる様子は、見応えがあります。
急須で淹れるお茶の香りに包まれる憩いのひとときをあなたへ
私は20歳の頃にお茶の業界に入りました。それ以来、20年以上にわたりお茶づくりを続けています。当時とは打って変わって、今では急須を使う方が減少し、リーフ茶葉の生産量がペットボトル用のお茶の生産量を上回っています。
また、茶農家の高齢化が進んでおり、現在の茶農家のほとんどは65歳以上です。静岡には山間部の茶畑が多く、斜面での農作業は体力的に非常に厳しい状況です。そのため、茶葉の収穫量も毎年減少しています。
こうした現状を改善するために、お茶屋同士の横のつながりを活かし、知識や情報を共有すること、さらに急須で淹れるお茶の普及活動を進めています。
▲お茶の美味しさや心安らぐ空間が話題となり、地元テレビの取材も何度も受けています。店内には、多くの著名人のサインが飾られています。
–お茶屋には横のつながりがあるのですか?
静岡県内では、地域を越えたお茶屋同士のつながりがあります。「静岡茶業青年団」という、静岡県内の45歳以下の茶問屋の集まりもあります。他にも、全国をまたいだ組織も存在します。
急須で淹れるお茶の美味しさをぜひ知ってほしいとの思いから、私たちはお茶の体験型カフェ「茶の芽」を開きました。美味しいお茶によく合う焼きだんごや練りきり、ほうじ茶プリンなどもご用意しております。
自分で急須を使ってお茶を入れることで、人と人とのコミュニケーションや話題の広がりにもつながると考えています。
店の前には、藁科都市山村交流センター「わらびこ」があります。炭焼き体験やお風呂を楽しんだ後に「茶の芽」に立ち寄って、ぜひ水琴窟の音色が流れる趣ある店内で、美味しいお茶とお団子を味わいながら、癒しと寛ぎのひとときを過ごしてみてください。
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茶の芽の情報・購入方法
住所 | 〒421-1314静岡市葵区大原1827 |
ホームページ | |
電話番号 | 054-270-1313 |
電子マネー・カード決済 | 電子マネー対応・カード未対応 |
営業時間 | 10:00~17:00 |
定休日 | 月曜日、第4火曜日 |
駐車場 | あり(4台) |
アクセス | 藁科都市山村交流センター わらびこ 目の前しずてつバス 藁科線 「夜打島バス停」下車すぐ静岡市街地より 国道362号線を藁科方面へ走り、約30分 |
この記事を書いた人 | Norikazu Iwamoto |
経歴 | 「静岡茶の情報を世界に届ける」を目的としたお茶メディアOCHATIMES(お茶タイムズ)を運営。2021~23年に静岡県山間100銘茶審査員を務める。静岡県副県知事と面会。お茶タイムズが世界お茶祭りHP、お茶のまち静岡市HP、静岡県立大学茶学総合研究センターHP、農林水産省HPで紹介される。地元ラジオやメディアに出演経験あり。 |